久しぶりに、震えた。

昔々、贔屓球団の勝ち負けが自分の生活の中心を占めていた時代があった。

始まりは、「勝てば嬉しい、負ければ悔しい」という単純な話だったのだが、そのうちあまりに負け続ける姿を見すぎたために、下手に勝ったりするとかえって落ち着かず、夢じゃないかと一晩中全局のスポーツニュースを見まくって寝不足になり、間違って優勝争いに絡もうでもしようものなら、それこそ全てを放り投げて東京ドームやら神宮球場やらに駆け付ける(当然応援するのはアウェーのチームである)、なんて時代もあった。

学生を経て社会人になり、その辺の熱は多少は冷めてきたとはいえ、それでも自分の前で無防備に在京セ・リーグ球団を讃えるのは長らくタブーだったし*1、2003年、星野仙一監督が奇跡のリーグ優勝を遂げたときは、直前まで歓喜の渦に混じる気満々で、道頓堀の近くに一週間ステイしていたくらいだった。

だが、どんな思いもいつかは醒める。

他の強豪球団と同様に運営会社が真面目にチーム編成を考え始め、毎年「そこそこ勝てる」チームになってしまったことは、長年染みついた”判官贔屓”的感情には決して良い方向に作用しなかったし、生粋の虎戦士だった名将・和田監督に代えて指導経験の乏しい金本を監督に据えた結果チームが迷走した、というのも、かなり決定的な出来事ではあった。

そのうち、球場に足を運ぶことはもちろん、リアルタイムの映像で試合を見る機会もなくなり、テレビのスポーツニュースさえ見なくなって、気が向いたときにネットの速報をチェックして淡々と結果を知るだけの日々に。

もちろん、ペナントレースが終盤に差し掛かり、CSシリーズが始まる頃になれば、普段よりは結果を凝視するようになる。

でも、それも毎年の勝った負けたの世界。もともとリーグ優勝が決まった後に、おまけみたいなシリーズをやるのはどうなんだろうな、と思っているところもあって、どこかしらか引いてみていた。

それなのに・・・


今年は敵地でのベイスターズとの初戦が始まる前から、何となくそわそわしてしまっていたのは、今回のCSシリーズが、間違いなく名将だった矢野燿大監督の最後の戦いになることが分かっていたからなのか、それとも、開幕早々の大連敗に始まって大きな好不調の波を繰り返し、それでも読売巨人軍を蹴落として最後の一枠にかろうじて滑り込んだチームに人生に通じる何かを感じたからなのか。

そして、試合の方も、第1戦、第2戦と緊迫した展開が続き、第3戦。

3日続けてほぼ互角の戦いに持ち込まれた熱戦は、9回裏、タイガース1点リードの展開で、イニングを跨いでリリーフした湯浅京己投手が絶体絶命の一死満塁の大ピンチを迎える、という漫画のような世界に。

自分は、第1戦で投打の主役がかみ合って先勝した翌日、第2戦を全く打てずに0-1で落としたのを見て、まさに今シーズンの象徴のような展開だと思ったし、期待させるだけさせといて結局ダメ、な、ここ2年くらいのペナントレースでのチームと同じく、第3戦は「完敗」という展開になるだろうと思っていた。

ラストイニングを1点リードで迎えながら、シーズン終盤、チームを支えていた湯浅投手が自らピンチを招いていく様をラジオでリアルタイムで聞いていた時も、そこで押さえて勝てる気は全くしなかった。

それが、良い意味でこのチーム特有の”筋書き”を覆す大サプライズで、まさかの神宮行き・・・。

大ベテラン、藤田一也選手の打球が一瞬で2つのアウトを重ねるコールを聞きながら、どうしようもないくらい心が震えた。



シーズンを通じて5割も勝てなかったようなチームが万が一日本シリーズに出るようなことになったら、ペナントレースの、ひいてはプロ野球の権威が失墜する、というのは自分が長年思っていることだし、優勝まであと一歩のところまで手が届きながらヤクルトに美味しいところを持っていかれ、CSでのリベンジすら叶わなかった昨シーズンのことを考えると、いかに贔屓のチームが勝ったところで「この制度何とかしろよ」という思いしか出てこない。

ただ、それでも、「最後」という言葉に人は弱い

そして、昨年、一昨年と2位に入りながら、優勝チームと日本シリーズへの挑戦権を争うことすらできなかった分、最後に奇跡のような幸運があってもバチは当たらないんじゃないのかな、という都合の良いエクスキューズを自分に言い聞かせて、水曜日から始まる次のステージを、ダメ元で応援してみようか、と思っているところである*2

*1:特に相手が「巨人ファン」を公言した時は、相手が上司だろうが社長だろうが追従するなんてとんでもない、露骨に不愉快な表情でチクチク嫌味を言いだしかねないので、そういう話題になりかけたときは、とっさにオリンピックからサッカー日本代表の話題に変えてしまうのが自分の得意技だった。

*2:なお、ここまで書いたところで、過去のエントリーを読み返し、3年前、就任1年目の矢野監督のCSシリーズの時も一瞬だけ興奮が蘇っていたことを思い出した(これぞクライマックス。 - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~)。離れていたファンの思いも呼び起こす。それが紛れもない名将の証だと自分は思う。

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