お天道様は見ているか?

金曜日の深夜から日曜の早朝にかけての2日間、どの大会でも一番面白いと言われるW杯の準々決勝が行われた。

最大のサプライズといえば、グループリーグでの余裕綽綽の戦いぶりからして、決勝進出は間違いないと思われていたブラジルの敗退だろう。

相手は4日前に日本とPKにもつれ込む死闘を繰り広げたばかりのクロアチアモドリッチ選手を筆頭に、出ずっぱりのベテラン選手も多かったこのチームが相手なら、多少苦しめられても最後は・・・と思いながら眺めていた観衆は多かっただろうし、試合が始まってクロアチアが想像以上のパフォーマンスを発揮していてもなお、延長の前半にネイマールが「これぞ!」といわんばかりの鮮やかなドリブルシュートを決めた時点で、「大勢決した!」と寝落ちした日本人も多かったはず。

だが、そこから延長後半、見事なカウンター一閃からペトコビッチ選手が執念の同点ゴール。そして、2試合続けてのPK戦の結果は、これまでのVTRを見るかのようなクロアチア選手たちの魂のこもった蹴り込みと、リバコビッチ選手の神がかったセービングにより、再びクロアチアに凱歌が上がることとなった。

他の試合を眺めても、1回戦とはうって変わってどの試合も「1点」が勝敗を分ける好ゲームだったし、いわば”紙一重”の展開ではあったのだが、それでも終わってみれば勝ったチームはいずれも「順当」という印象がある。それだけに、ブラジル対クロアチアの試合の結果だけは、唯一のサプライズとして週末の間ずっと余韻を残すものとなった。

これで残ったチームは4か国の代表チームだけ。

大会前の予想や選手たちのネームバリューで言えば、左側の山で勝ち残るのはアルゼンチン、右側の山で勝ち残るのはフランス、と考えるのがもっとも素直な予想だとは思う。

ただ、世界中の選手たちが欧州のビッグクラブで腕を磨くようになった今、国ごとの「格」の差もそこまで大きなものではなくなっている。

グループリーグの最終戦、主力選手を”休ませた”チームが、ことごとく苦杯をなめたように、ちょっとでも隙を見せれば、格下であっても勝敗をひっくり返す力はあるし、どれだけ目の前の試合にベストを尽くそうとしても、その試合に臨むまでのプロセスが悪ければリズムがおかしくなって本来の力を出せずに終わることもある。

クロアチアに敗れたブラジルは、その前の試合で韓国に前半だけで4点の差をつけ、後半は完全にエキシビションモードで流していた。
「対戦相手への敬意を欠く」とまで評されたその対応が、どことなくエンジンのかかりが鈍かった準々決勝に影響していない、と誰が言いきることができるだろう。

そしてそう考えると、準々決勝、必要以上に荒れた試合で、ブラジル以上に対戦相手への敬意を欠く振る舞いが目立ったアルゼンチンを、1回戦、準々決勝とベストを尽くして勝ち抜いてきたクロアチアがすんなり勝たせてくれるとは到底思えない。

また、もう一つの「山」も「フランスで決まり!」と言い切るには、モロッコの力が強すぎる。

体格も、ボール扱いのスキルにも優れた選手たちがド根性で守り、そして隙あらば切れ味鋭いカウンターで相手ゴールを一心不乱に攻め落とす、という彼らのサッカーは、既に今大会の象徴のような存在になりつつあるし、「ホームゲームか!?」と見まがうような熱狂的応援がそれを後押しする。

4年前の大会、モロッコは20年ぶりに出場した本大会で、「台風の目」といわれるような扱いを受けながらも、初戦から後半ロスタイムのオウンゴールでイラン相手に星を落とし、さらにポルトガルにはC・ロナウドの一発で沈められ*1、2連敗でたちまち希望を絶たれた。

それでも、スペインとのグループリーグ最終戦で時計の針が90分を廻るまでは1点リードして戦いを進めていたし、最終的に追いつかれはしたものの、「勝ち点1」をもぎ取っている。

そこから4年の時が過ぎ、当時のメンバーも多く残っているのが今大会のモロッコ代表。
そして、トーナメントに入ってから、スペイン、ポルトガルといった4年前の敵を次々と蹴散らし、より自信を深めて盛り上がっているチームでもある。

だから、決勝戦で順調にアルゼンチン対フランス、という夢の好カードが実現するのか、それとも、どちらかの「山」の一方で歴史を覆すようなサプライズが起きるのか、今単純に予測するのはなかなかできないことだったりもするのだけれど、できることなら「試合前にゴシップ紙の話題になるようなネタを提供」しなかった方が勝つ、というところは、今大会でも変わらずにあってほしいと思うから、これからいろいろと浮いてくる有象無象にも目を受けた上で、戦いまであと数日、凌ぎきっていければ、と思うところである。

*1:あの大会のC・ロナウド選手はまさに円熟期で、初戦のハットトリックから2戦目の決勝点まで、その時までのチームの全得点を叩き出していた。

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