季節外れのアンセムに。

怒涛のカタールW杯が終わった。

大会終盤、準決勝、3位決定戦まで来ても、依然しびれるような戦いは続き、そしていつもなら退屈な試合になることも多い「決勝戦」が大会のハイライトのような試合になる、という贅沢さ。

もう散々、様々なメディアで書かれているから、くどくどとは繰り返さないが、スピードとフィジカルがフィールドを支配し続けている現代のフットボールの世界で、「テクニックはすべてを凌駕する」とばかりに美しすぎるパスワークを展開したアルゼンチン代表の80分間。

だが、それが一瞬のペナルティエリア内での攻防&エムバペ選手の起死回生のPKですっかり逆回転し、あれよあれよという間に試合は振り出しに戻る。

それでも延長前半、メッシ選手が「神の子」の名のとおり、奇跡的な幸運の重なりで勝ち越しゴールを奪い、いよいよエンディングへ・・・と思ったところで、延長後半、再びエムバペ選手がPKを決めて振り出しに戻る。

それまで温存してきたディ・マリア選手を最前線で起用して見事に2得点に絡ませたスカローニ監督の布陣があっぱれなら、前半途中で攻撃陣2枚替えという劇薬を投じ、その後の交代と合わせて後半最後の15分で流れを完全にひっくり返したデシャン監督の采配もお見事の一言。

そして、そんな指揮官も役者も、さらには稀代の名解説者たる本田圭佑氏まで揃った最高のバトルは、120分+アディショナルタイムが過ぎたのち、メッシ&延長戦で出場した交代選手たちがゴールを決め続けたPK戦でアルゼンチンが「圧勝劇」を飾ることで幕を閉じた。

フランス人を除けば、おそらく世界中の観戦者が一番見たかったであろう結末。それがこんなドラマティックな展開で実現するとは・・・。

どんなに白熱した好ゲームでも一定の時間が経てば自ずから終焉を迎える。

そうでなくても慌ただしい霜月から師走にかけての1カ月弱、多くの試合を見つめながら感じたのは、そんなサッカーという競技の単純な特徴で、それがこんなに有り難く思えたことはなかった。

加えて、普段の仕事と同じスタイルで机に向かいながら、画面を切り替えれば即、画面の向こうの「中東」に没入できたのはABEMAさまさま。やむに已まれずパスした試合でも、簡単にタイムシフトして丸ごとみられる、という開放的な世界観は、これまで4年に一度、何度も繰り返してきた「後悔」を歴史の遺物へと追いやった。

繰り返し聞き続けてすっかり染みついた2022のW杯アンセム、場内の狂信的なまでの熱唱に鮮烈なインパクトを受けたモロッコ国歌。

いつもとは真逆の季節のど真ん中での体験。でも、それが今年の最後にやってきた、ということには、なんか特別な意味があったような気がする。

この「熱」を日本にまで届けてくれた名もなき多くの人々、SNSで一緒に盛り上がってくれた方々、ありとあらゆるものに心から感謝しつつ、この後はもう一瞬でやってくる「最高だった2022年」の終幕に向けて、これからしっかりと歩みを進めなければ、と思うところである。

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