今シーズン、大学駅伝界でずっと強い強いと言われ続け、「三冠」にリーチをかけていた駒澤大学。
出雲駅伝は大会新記録で圧勝。全日本大学駅伝も最後は独走で大会三連覇、とほぼ完璧に近い歩みを続けてきたものの「箱根」だけは別物。
エントリーする全ての選手に20キロ以上フルスピードで走り切る走力が求められ、コース適性が問われる山登り、山下りという特殊区間も存在する。
一区間の距離が長い分、元々力がある選手でも、少しでもアクシデントに見舞われれば他校の普通のコンディションの選手たちに容赦なく引き離される。
それゆえ勝つためには、一定以上の走力を備え、かつ、コンディションも整った選手をむらなく配置することが求められる、ということになるが、これは言うは易し行うは難し。
往路・復路合わせて「10」という区間数の多さが綻びを生じさせる元となって、これまで何度となくアナウンサーを絶叫させる「波乱」が引き起こされたことは、今更説明するまでもないし、現に、駒澤大学自体、リーチをかけた過去2回(1998年度、2013年度)、いずれも箱根で他校に優勝を攫われて「三冠」を逃す、という悲哀を世代を超えて味わい続けた歴史もあった。
だが、終わってみれば、往路で30秒差をつけて19年ぶりの優勝。
そして、復路は6区で1年生の区間賞に始まり、それ以降の区間でも後続に影をも踏まさぬ逃走劇で、最後は2位・中大に1分41秒差、3位以下の学校に至っては実に7分以上の「大佐」を付ける圧勝劇で堂々の完全優勝を飾ることとなった。
個人的なことを言えば、今年は(比較的順位変動要素も多かった)往路の映像をLIVEで全く見ておらず、復路も寝坊した結果、勝敗決した7区以降の映像しか見ることができなかったので、
「これまでに一、二を争うくらいつまらない展開の箱根駅伝」
というのが率直な感想だったりもする。
ただ、この「箱根駅伝」というイベントが、テレビ局が創るエンターテインメントではなく、立派なスポーツ競技会である以上、選手たちの実力が競技結果にストレートに反映されるならそれにこしたことはないわけで、ここ数年の傾向*1に違わず、実力のあるチームがきっちり実力を示して勝った今年の大会は、スポーツイベントとしてはまさに「完成形」だった、ということができるだろうし、「一切の波乱を封じた」という優勝校の「快挙」が、30年近くチームを引っ張ってきた指導者(大八木弘明監督)から自分と同世代の指導者(藤田敦史ヘッドコーチ)に名実ともにバトンタッチするタイミングで成し遂げられた、ということだけでドラマ的要素としては十分だった。
栄光の時代のエースランナーとしての看板を引っ提げ、母校にコーチとして招かれながら、5年前にはまさかのシード落ちという事態を招いてしまった藤田氏の当時の心境は如何ばかりだったか。
ここ数年、青山学院大学を筆頭に、創価大学、東京国際大学、と次々と大学駅伝の地図を塗り替えようとする新興勢力が登場する中で、「過去の学校」になってしまった名門校も決して少なくないし、名門・駒澤大学ですら一歩間違えばそうなる可能性がなかったとは言えない。
だが、そこで踏ん張り返し、2年前の「13年ぶり」の王座奪還、そして、遂に自らが達成できなかった「三冠」の悲願を四半世紀越しに実現させるところにまでチームを引き上げて、恩師を気持ちよく勇退させる・・・。
一見すると、出来すぎたドラマのようなストーリーに見えるが、その裏側に何があったか、ということを想像するだけで、とてつもない震えに襲われる。
今年に関して言えば、2位に入った中央大学も、藤原正和監督が就任1年目(2016年度)に「予選会落ち」というどん底を味わって、そこから再び這い上がってきた名門チームだし、ここ数年、不安定な戦いが続いていた早稲田大学、順天堂大学といった古豪もシード権確保に成功、一時はシード権確保が危ぶまれた東洋大学も何とか終盤の逆転で10位に滑り込んだ*2。
来年は、いよいよ「第100回」という壮絶な節目の年だけに、盛り上げようとする側にとっても「これで役者が揃う」と安堵したところはあるのかもしれないが、一年経つとまたガラリとチームが変わってしまうのが学生スポーツの運命でもある。
今年名を上げた(指導者としては)まだまだこれから、の監督たちが、第99回の成功体験をよりグレードアップさせて記念大会でチームを輝かせることができるのか?
自分も選手以上にマネジメントの方が気になる世代になってしまっていることもあり、これからの一年、また違う角度から見ていければ、と思っているところである。