早いものであっという間に季節はクラシック第一弾、桜花賞。
土曜日まで自分が気にしていたのは武兄弟の動向で、何といっても兄・武豊騎手は前週の大阪杯、ジャックドールで逃げ切って見事にGⅠ最年長勝利記録を更新したばかり。
そんな今も昔も当代一流の騎手が、弟の厩舎の馬、しかも超レアなディープインパクトのラストクロップに乗って再びGⅠに挑むとなれば注目しない方がおかしい。
シンザン記念から直行、というローテーションは王道からは全く外れているとはいえ、5年前のアーモンドアイの記憶は未だ生々しく残る。
そして何よりも、そのシンザン記念で後方から一気の脚で差し切ったライトクオンタムという3歳牝馬のパフォーマンス自体に注目すべきところは多々あった。
だが、この日曜日は、昼前のレースからどうにもこうにも的中が遠かった。
土曜日、中穴がいくつかヒットして収支が跳ねて気を良くしたのが運の尽き。オッズにつられて”いい線”を狙ったはずの馬券はことごとく外れ、貯金を食いつぶした上に特別戦に入ってもマイナスは膨らむばかり・・・。
そんな状況でメインレースが近づいてきたとき、自分は原点に還ろう、と決めた。
本番に挑むルートがパターン化していて、ステップレースの優劣も明確にデータに現れているのが桜花賞、というレースである。
3着内入線馬の大半を占めるのはチューリップ賞上位組。さらに阪神JFから直行してきた馬の連対率は50%にも達する。
要は、阪神ジュヴェナイルフィリーズ組とチューリップ賞上位組を組み合わせて買っておけば大体当たる~というのがこのレースなのだ。
後がなくなりつつあった自分に取れる選択肢は他になかった。
人気を被っていることは知りつつも、阪神JFで圧倒的なパフォーマンスを見せたリバティアイランドを本線に。そして、チューリップ賞を逃げ切りで勝ったモズメイメイを典型的な「来ないチューリップ賞馬」と決めてかかったうえで、キタサンブラックの血に可能性を感じた同レース2着のコナコーストと、3着・ペリファーニアを組み合わせる。
これで外れていたら自分に絶望する・・・そんな感じの勝負だったのだけれど・・・
道中、今時珍しい「最後方待機」というポジションだったリバティアイランドは、とてつもなく強かった。
最後の直線で外に持ち出して、川田騎手が気合を入れるや否や、まさに鬼のような末脚がさく裂。唯一の上がり32秒台で全ての馬を置き去りにした驚異的な破壊力は、2着以下の攻防を一瞬にしてドングリの背比べに変容させた。
加えて、逃げたモズメイメイが予想通り馬群に沈む中、先行して粘ったのは、コナコーストとペリファーニアの2頭だけ。
かくして、各場メイン最後のレースにして、この日の懐具合は一気に好転したのはあえて説明するまでもあるまい。
この勝ち方からすれば、少なくとも今年の秋まではリバティアイランドが「3歳女王」として君臨することは間違いないと自分は思う。
それ以外の楽しみとしては、まだまだ成長力を残しているこの日の2,3着馬がこれからの歳月の中でどこまで人気、実力ともにリバティアイランドに追いつけるのか、ということくらいだ。
だが、そんな分かり易すぎる決着でも、「いいもの見たなぁ」と思えたのは、単に最後の最後で予想が的中したからだけではない。
憎らしいほど強い馬がいればいるほど、競馬のレベルは上がるし、観客も盛り上がる。
それがこの国のこの先の全てを占うようにも思えるだけに、できることならこのまま行ってほしい、というのが、今の切なる願いである。