去るも残るも・・・。

連休の間に、しばらく見られていなかった最近の各社の適時開示資料を眺めていたら、現プライム市場上場会社が「スタンダード市場」選択へ舵を切る事例が相当数出てきていることに気付いた。

今年の初めに東証が「経過措置打ち切り」の方針を示した*1時点で想定されたことではあったし、先月の時点で、宣言していた会社が既に2社出ていた*2のだが、4月以降、さらに7社新たにプライム市場の上場維持基準不適合を理由として、スタンダード市場選択を宣言している。

いずれの会社も引っかかっているのは「流通時価総額」で、その数字が最初の基準時(21年6月時点)で50億円前後だった、という点でも概ね共通している。

経過措置打ち切りまでまだ2年あることを考えれば、この時点で市場を変える選択をするのは早すぎるようにも思えるが、今回スタンダード市場を選択した会社の多くは、各社の事情で業績が伸び悩み、上場維持基準に近づくどころかむしろ時価総額を減らしてしまっている会社が多いので、やむに已まれぬ判断、というところはあるのだろう。

ただ、中には、株価上昇で一度「適合」を宣言したにもかかわらず、その後業績の下方修正を繰り返したために再び上場維持基準割れを起こし、

「5年後を目途に再び「プライム市場」への変更上場を目指してまいります。」

という「決意表明」とともにスタンダード市場選択申請を宣言している会社もあり、関係者の胸中を推しはかると何とも言えない気分になる。

www.nikkei.com


昨年末から今年の初めくらいまで低迷していた東証上場企業の株価が、3月以降世界的なトレンドに合わせて上昇一途となっていることから、先月後半の開示資料の中には、3月末を基準時とする会社が「上場維持基準に適合しました!」と高らかに宣言するケースも多くみられるようになってきたのは、明るい材料と言えばそうなのだろう。

ただ、これまで当ブログでも何度も繰り返して言ってきたように、「株価」というのは実に気紛れで、理論値だけで決まるようなものでも全くない

そして、「流通時価総額」が上場維持基準の一項目となっている限り、当落線上の会社の関係者は、一度や二度の「適合」で枕を高くして寝ることなど到底できず、常にあれやこれやと降って湧く「市場の株価下落リスク」に怯えて日々を過ごさなければいけなくなる。

これが本当に望まれる健全な市場のあるべき姿なのかどうかはもう少し議論されて然るべきだと思うのだけれど、今は、まず、このタイミングで苦渋の、だが勇気ある決断をした「スタンダード市場選択」会社が、余裕をもって移行したはずの市場で再び「上場維持基準」に悩まされるようなことにならないことを願って、率直に温かくエールを送れれば、と思っているところである。

*1:以下のエントリー参照。k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

*2:1社は以下のエントリーでも触れた㈱マイネットで、もう一社は㈱ODKソリューションズである。k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

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