再びの祭り

1年前に↓の記事を書いたときは、その後1年ちょっとで、再び同じような祭りを見ることになるなんて夢にも思わなかった。
k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

もちろん、当時から怪しい風は吹いていたから、その後の総選挙と翌年夏の参院選で、自民党が下野して政権交代、というストーリーは十分あり得るだろうと思っていたのだが、まだ与党の地位にあるにもかかわらず、「自ら選んだ総裁を自分たちの手で引きずりおろす」惨劇を目撃しなければならなくなったのが、まさか、だったのだ。

優れた識見を持つ人物が権力の座に長くいられるわけではない、というのは、永田町に限らずどんな世界でもよくあることとはいえ、あんな”自爆テロ”の後に、出がらしの候補者たちによってデジャブのような総裁選が演じられるのを見せつけられた党員、関係者は正直たまったものではないだろうと思う。

とはいえ、総裁が辞任意向を表明するまでに追い込まれてしまった以上、「次の人」が選ばれなければならない、ということで、傍から見ていても全く盛り上がりが感じられない中で演じられた5人のバトル。

この1年で”成長の跡”を見せた候補者もいれば、期待のメッキが剝がれた候補者もいたが、蓋を開けてみれば、前年の1位が抜けた後の2位、3位だった候補がそのまま決選投票に進む、という展開。そして、最後は、実に順当に高市早苗候補が勝ち、気が付けば自民党史上初の女性総裁、というおまけつきで新総裁が誕生した。

戦前の予想では、「小泉進次郎優勢」が伝えられていたが、それは、かつて”高市総務大臣”に煮え湯を飲まされたオールドメディアの単なる”願望”に過ぎなかったのであって、今も昔も自民党エスタブリッシュな利益団体に支えられている(そして党員の多くも、そういった利益団体の影響下にある人々である)ことを考えると、全国の党員票が高市氏側に集まったのは想定通り。

加えて、一回目の投票では小泉氏が大きくリードしていた国会議員票も、決戦投票になれば、他陣営から一気に高市候補側に流れ込んでくる展開は予想できたところだったから、最終的に出た結果に違和感は全くない。

ただ、本来ならもう少しきわどい差になるべきところで、30票近い票差が付き、さらには国会議員票ですら一回目からの大逆転が起きてしまったのは、聞いていた多くの人々が指摘したとおり、最後の演説の落差があまりに大きかったから、ということに尽きるだろう。

高市氏の演説にしても、決してベストなものだったとは思わない。その中で描かれていた天下国家像は10数年前の第2次安倍政権誕生時のそれと大差ないなぁ、と思うくらいアップデートされていなかったし、何よりも途中嚙みまくっていたのは美しくなかった。でも、進次郎のそれは、もっと格段に酷かった*1

かくして、誕生した新総裁。

アンチ組が多いオールドメディアも、野党の先生方も、さっそく揚げ足取りの言葉狩りを始めているし、SNSでは熱狂的な支持派と、”これでこの世の終わり”と言わんばかりに狂乱して罵声を浴びせる人々に二極化してるんじゃないか、という感すらあるのだが、冷静に新総裁の経歴を振り返ってみれば、そこまで極端な支持・不支持を受けるような政治家なのか?という疑問は当然湧いてくる*2

まだ支持基盤に旧安倍派の残滓が残っていた1年前とは異なり、今年の総裁選で新総裁を支えたのが宏池会の流れをくむ麻生派だった、ということも、頭の片隅に入れておく必要はあるだろう。

タカ派”のイメージで、よくわからん右巻き政党に流れた支持を取り戻しつつ、実際の政策は堅実に、というパターンは十分考えられるところではあるし、この複雑怪奇な国際情勢の下では、御しやすい、と思われるより、警戒してかかられるくらいの方が結果的にうまく行く、というのも、これまでのこの国の歴史が証明している。

経済政策に関しては、日頃から”アベノミクス”の悪夢再来を予感させるような言動もあるところで、”日本のサッチャー”になるはずが、”日本のトラス”として世界から嘲笑されることになる危険性もまだまだ拭い去ることはできないが、その辺は閣僚人事を見てから考えよう・・・というのが、今日の時点での率直な感想。

ということで、泣いても笑っても、おそらく、この日選ばれた自民党新総裁がそのまま内閣総理大臣になる未来は目の前にある。

そして、誕生直後の修辞的な報道はともかく、総裁選が行われている間に注目されていたのはその言動と思想信条だけで、彼女が「女性」である、ということが、争点にも話題にもほとんどならなかった、ということに*3、個人的にはこの国の進歩と未来への希望を感じて、この先のこの国のドタバタをひっそりと眺めることにしたい。

*1:衆院選参院選の投票日前日に、街頭の大衆に訴えかけるならあれで良いが、自民党本部に集まっていたのはド素人の有権者ではなく、政権与党所属のプライド高き政治家たちなのだから、自分語りとありふれた感謝の挨拶だけで心を動かされるはずがないのである。

*2:一部のイシューに対するパフォーマンス的言動を取り除いた高市早苗という政治家の本質は、むしろ”リベラル”に近いんじゃないかとすら個人的には思っている。

*3:これはここ何回かの自民党総裁選で、複数の女性候補が当たり前のように総裁の座を争っていた、ということが大きいと思っているし、なんだかんだ言っても、それができるのは(社民党等の一部少数政党を除けば)自民党だけである、ということに、そろそろ皆気付くべきではないかと思えてならない。

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