文化を守る、ということの重さ。

著作権法の世界で常に引き合いに出される「パロディ」という領域。

だが、この国では、政治風刺画からオマージュ、同人誌の世界に至るまでざっくりと一つにまとめられがちなこの領域について、より深く意識し、この国の著作権法の下でどう位置付けるべきか、ということを本格的に考え始めたのは、↓の報告書がきっかけだった気がする。

「海外における著作物のパロディの取扱いに関する調査研究報告書」(平成24年3月)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hosei/h24_01/pdf/shiryo_4.pdf

折しも、時代はちょうど著作権法の”リフォーム”が唱えられ始めたタイミング。

その年に行われた権利制限規定の改正が不完全な形に終わってしまったことで、”なれのはて”発言をきっかけに「柔軟な権利制限規定」の創設に向けた華々しい言説があちこちで噴き出してきた時期でもあった。

何でもかんでも「米国流フェアユースで!」というムードが強まる中、米国や欧州の判例の分析を通じて、日本人がざっくり「パロディ」と呼ぶものが、「Parody」(狭義のパロディ)と「Satire」(風刺)等のカテゴリーに分けて論じられていること、そして、フェアユースがあるからパロディは何でもOK」という単純な話ではない、という当たり前の事実に気付かされたことは、その後の著作権法改正の議論にかかわる中でも、生きることが多かった。

翌2013年3月、前記報告書も踏まえて、文化審議会著作権分科会法制問題小委員会パロディワーキングチームから出された報告書(↓)は、当時の議論の一つの到達点だったと思う。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hosei/parody/pdf/h25_03_parody_hokokusho.pdf

ただ、先に述べたような議論の複雑さゆえ、「パロディ」はその後の「柔軟な権利制限規定」の議論の中で主役の座を譲ることになり*1、報告書から8年経った今も、「パロディ」に正面から向き合った権利制限規定は未だにこの国の法律に設けられていない。

そんな中、同じく8年越しの世界的スポーツイベントをめぐって飛び出した”パロディ”騒動。

先日亡くなられたエリック・カール氏の『はらぺこあおむし』の主役を今世界中の非難の矢面に立たされているIOC関係者に見立て、「はらぺこIOC」と題して”利権を食い尽くす”さまを表現しようとしたこの風刺画。

そこから伝えようとしているメッセージは、掲載紙の立ち位置等も考慮すると十分理解できる中身ではある。

ただ、そこに借用された素材の版元の社長が、「強い違和感」を表明し、掲載した新聞社に対して「猛省」を求めたことで、俄かに議論は沸騰した。

www.kaiseisha.co.jp

既に多くの方々が高い評価を寄せられているが、自分も、偕成社が社長のお名前で出されたこのリリースを一読して強い感銘を受けたことは言うまでもない。

コンパクトにまとめられていながら、作品への深い愛と、それをあらぬところで借用されたことへの違和感が実にストレートに伝わってくる。
その一方で、一連の表現手法上の問題の問いかけと「表現の中身」への批判との間には明確に一線が引かれており、さらにその中で著作権」という言葉は一言も用いられていない

Twitterでもコメントしたが、この種の「風刺」の本質は、表現自体の攻撃性にあり、それゆえに、攻撃された対象だけでなく、素材を借用された側をも不快にさせるリスクを必然的に伴うことになる。

なので、借用する側は、借用する必要性を慎重に吟味し、説明に耐えうるだけの正当化根拠を準備しなければならないはずなのだが、本件では、そこで付されたのが「エリック・カールさんを偲んで」というとってつけたような理由づけだったことが、作品を愛する人々の怒りに火を付ける結果につながってしまったのだろう、と自分は思っている。

そして、洋の東西を問わず、こういう時に持ち出されるもっとも手っ取り早い武器が「著作権」。

だが、このリリースにはそれが一切出てこないし、だからこそ、「風刺は引用する作品全体の意味を理解したうえでこそ力をもつのだと思います。」という言葉とともに語られる風刺画掲載者への痛烈な批判が、より重みを増して伝わってくる。

もちろんここでは、「出版社」という立場でのコメントゆえに「著作権」を持ち出さなかったという推察もなし得るところではあるのだが、批判の中にも添えられた表現の自由、風刺画の重要さを信じるがゆえに」というフレーズが、今回のアプローチの背景にある、ありきたりな推察とは異なる意図の存在をも想像させてくれるわけで・・・。

*1:代わって主役に躍り出たのは、産業政策的な色彩が濃い著作物の利用形態であった。

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次々と示される「補足説明」の説得力やいかに?

もう目前に迫っている、といっても差し支えない「株主総会2021」最大のヤマ、各社6月総会。

多くの会社では招集通知の発送まで終え、日々送られてくる議決権行使状況のデータを眺めながらカウントダウンに入っているところだろうし、そんな中、役員の思い付きの無茶ぶりに振り回され、予定調和的ルーティンのサイクルに乗れずに苦しんでいる、なんてこともあるかもしれない*1

で、そんな今シーズン、大きな話題を振りまいているのが、既に当ブログでも何度かご紹介した「バーチャルオンリー」である。

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

前回のエントリーでは、先月末、㈱アイ・アールジャパンHDが、優等生的な「見解」を示した、というところまでご紹介していたのだが、その後、同じタイプの定款変更議案を出していた他の会社からも、次々に「議案の補足説明」が出されている。

www.nikkei.com

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当然ながら、立場が変わればここで主張する内容も、最初に見解を発表した会社とは違ってくる。

そして、ここで取り上げる4社(最後のソフトバンクグループとソフトバンクの内容はさすがに共通しているところも多いので「3社」という方が適切なのかもしれないが)だけを見比べても、その中身はいずれも微妙に異なる。

唯一といってよい共通点は、冒頭で、

「本議案は、選択可能な株主総会の開催方式の拡充を目的とするものです。」(三井住友FG・1頁)

という趣旨の説明をしている、ということ。

全面的に「バーチャル」に置き換えるのではなく、あくまでリアル総会やハイブリッド型と並ぶ「選択肢」を増やすものに過ぎない、というのは確かに大事な主張ではある。

さらに、バーチャル総会のメリットとして、

「海外も含む遠隔地の株主さまが株主総会に出席しやすくなる」(三井住友FG・1頁)

ということも、各社共通して挙げていることだったりする。

ただ、共通しているのはそこまで、後は会社ごとの個性がかなり出ているな、というのが自分の印象である。

まず、「バーチャル」を選択肢に加える理由として、”緊急事対応”を強調するのが、三井住友FGと、ソフトバンク2社。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大については、政府・地方自治体及び医療従事者の皆さまのご尽力の下、ワクチン接種も進みつつありますが、変異株の拡大など引き続き予断を許さない状況にあると考えられます。新型コロナウイルス感染症以外にも、今後、新たな感染症パンデミックや、大地震などによる大規模災害の発生も懸念される状況です。」(ソフトバンクグループ・1頁、強調筆者、以下同じ。)

このトーンで入ると、自ずから次のフレーズもついてくることになる。

「当社においては、平時においてバーチャルオンリー株主総会を開催する予定はありません。」ソフトバンクグループ・1頁)


ここで、何の留保もなく上記のように言い切ったソフトバンク系2社と、

「バーチャルオンリー株主総会に関する実務対応が未確立であるなど、わが国における現下の社会情勢に鑑みれば・・・」(三井住友FG・1~2頁)

という留保を付した三井住友FGとではちょっと印象が異なるところもあるが、いずれにせよ、そう簡単にバーチャルオンリーはやらないよ、ということを明言した、という点で大きな意義があるのは間違いない。


一方、これらとは異なり、来年以降の「バーチャル」での開催に含みを持たせているように読めるのが、LIXILの「補足説明」である。

「本定款変更により、当社は、今後の株主総会を全てバーチャルオンリー型株主総会で開催することを予定するものではなく、開催方法については、株主の皆様の権利の保障と安全を最優先に考え、新型コロナウイルス感染症の対策等、社会的要請その時々の当社及び株主の皆様の状況や、株主様から当社に対するご意見等を踏まえ、株主総会の開催の都度、慎重な検討を行い、当社取締役会で決定いたします。」(LIXIL・1頁)

もちろん「慎重に」という留保は付されているものの、昨年は「参加型」、今年は「出席型」と、一歩一歩電子化を進めているこの会社にとって、「バーチャルオンリー」にすることの心理的なハードルはそこまで高くないのかもしれない。

また「バーチャルオンリー」とした場合の総会運営方法については、以下のような記述が実に印象的だった。

「将来的に、バーチャルオンリー株主総会の開催を決定するにあたっては、透明性・客観性の確保、恣意性の排除が重要な課題になると認識しております。とりわけ、株主の皆さまとの対話を充実させるためには、株主総会における質疑応答の在り方が重要であることから、例えば、無作為抽出の方法で質問を採り上げるなど、株主の皆さまの利益を不当に害することのないよう充分に留意し、その時点での法制度やシステムインフラの整備状況等も考慮に入れつつ、最適な方法を選択してまいります。」(三井住友FG・2頁)


む、む、無作為抽出ですと・・・

と思わず叫びそうになってしまったが、この点に関してはソフトバンク2社も、前年のハイブリッド型総会で、株主の質問に関し、

「当日ご回答ができなかったものも含めて、 株主総会終了後、全て当社ウェブサイトにて公開させていただいております。」(ソフトバンクグループ・2頁)

という実績をアピールしていたりもするから、時代を超越した長演説をしたり、細かすぎる話題をくどくどを掘り下げたりする方向に向かう株主ではなく、建設的な対話をすることができる株主に囲まれている会社であれば、これもそこまでハードルは高くないのかもしれない、と思ったりする。

おそらく、この点に関しても、これから様々な議論が繰り広げられるだろうし、議案として出しているかどうかにかかわらず、今年の総会の場での議論を通じて知る肌感覚のようなものもおそらくあるはず。

そして、変化の早い現代、そういった過程を経て、来年、あるいは再来年の今頃には、どこかで「ベスト・プラクティス」なるものが打ち出されることになるのかもしれない。

だが、そんな「夜明け前」に示す答えとして、自分がもっともバランスが良いな、と感じたのは以下の回答だったりもしたわけで、今、もっとも「平時のバーチャルオンリー」総会にポジティブな方向で近付いているのは、こちらの会社なのかな、というのが率直な感想である。

「バーチャルオンリー型株主総会の開催にあたっては、その運営体制の整備も極めて重要であると認識しております。具体的には、ITシステムや株主名簿管理人の体制等にかかるインフラ基盤の整備、行使された議決権にかかる公平な取扱い、通信障害への対策、インターネットに不慣れな株主様へのサポート体制の構築、株主様からのご質問、株主提案、動議にかかる恣意的な運用の排除等について、経済産業省が公表するガイドライン等を遵守することはもちろん、当社においてもさらにこれらに関する株主の皆様の公平な取扱い等多角的に検討・準備し、また基準を明確化した上で、株主の皆様の権利を侵害することのない運営方法を整備し、取締役会の慎重な審議により決定してまいります。」(LIXIL・2頁)

肝心の産業競争力強化法改正案は未だ審議未了。まだまだこの先、山も谷もありそうではあるのだけれど、勇気ある各社の果敢な挑戦に微かな期待を寄せつつ、新しい時代の幕開けとなるか、もう少し見守っていきたいと思っている。

*1:そんな無茶ぶり自体が予定調和だ、という会社も少なからずあるだろうし、そんな会社の中の方々には心の底から共感を示すのみである。

いつまでも発揮されない学習効果。

月が替わっても慌ただしさは変わらず、なかなか思うようにエントリーが書けないまま迎えたいつもの週末。

「いつもの」といっても、あちらの世界では先週ダービーが終わり、今週からはメイクデビューで次々と初陣を飾る2歳馬たちに主役が移る。

そして、3歳馬に目を移せば、1勝クラス以上の馬たちが古馬の中に放り込まれて真価を試される一方、未勝利馬たちは運命の分かれ道に向けたカウントダウンの始まり、壮絶なサバイバルレースに突入していく・・・。

そんな大きな季節の変わり目となったのが今週末だったのだが、自分はこのタイミングがどうも苦手だ。

ここ数年、週末の趣味は、「遊び要素の強い投資」と割り切っているから、毎週比較的堅めの筋で攻めて、回収率80~120%の枠内で収まるのが予定調和なのだが、毎年、この週末に限っていえば、圧倒的に負けている。

馬たちが走っている競馬場は前週までと変わらない。だが、前記のようなクラス替えによって「いつものメンバー」の中に混じった「新世代」の力量を図りかねることで迷いが生じる。大概人気になりやすいのは、3歳限定戦で安定した戦績を残していた3歳馬なのだが、それが人気通りに快勝することもあれば、「世代の壁」に阻まれて大敗することもある。

加えて、この時期に降りやすい雨の影響とか、競馬場は同じでも内枠が開放され、それまで差し・追い込みが決まりやすくなっていた東京コースでさえガラッと行った行ったになりやすい、さらにそれに乗じてガラリと脚質を変えてくる馬がいる・・・等々、とにかく様々な変数が多すぎるから、徹底したデータ分析をベースに勝負している者にとっては、かなり厳しい状況になる。

その結果が、各場24レース終わった時点での散々たる回収率・・・。

「毎年のことなんだから、いい加減学習しろよ」とか、「そもそも傾向掴めるまで控えめにしとけよ」等々の批判は甘んじて受けるしかないが、

「過去に経験したことのあるトラップにハマって読みを外したことに気付き、それを取り返そうと焦ってさらにダメージを増幅させる」

という経験を、誰にも迷惑をかけず、懐もそこまでは傷めずにできる場、というのも、他にはなかなかないわけで、

「人間の弱さを知り、それと向き合う」

貴重な機会として、たぶんここからしばらくは続く*1忍耐の週末を過ごすことにしたい。

ちなみに「学習効果が発揮されていない」といえば、今週のGⅠ・安田記念などもその最たるもの。

さすがに過去2年、「期待以上」あるいはその逆のパターンで牝馬に泣かされていたから(以下参照)、今年は、

「グランアレグリアを頭にしない」

という鉄則だけはしっかり守り、そして実際、結果もその通り(グランアレグリアはアタマ差の2着)だった*2

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ただ、勝ったのは、サリオスでもインディチャンプでもなければ、ケイデンスコールでもなく、「ダノン」。

それも復活を期した「プレミアム」の方ではなく、1800~2000mくらいが守備範囲だと思っていたダノンキングリーが勝者になった、というのは実に大きな誤算だった。

さらに言えば、先に挙げた自分が本命と目した馬たちは、3着以内に食い込むことすらままならず、「馬券圏内」に飛び込んできたのは古馬陣との力量差を図りかねたシュネルマイスター、とくれば、話は今日の最初のところに戻ってしまう・・・。

*1:世代間の力量差とか、2歳馬のそのシーズンの種牡馬ごとの産駒の傾向を掴めるようになるまでには2~3週は必要だな、と思っていて、しかも来週からは季節外れの札幌での1開催が入る、というのが、余計前途を不安にさせる・・・。

*2:何といっても、昨年同じローテーションでアーモンドアイが負けた、という記憶は鮮烈で、マイルの猛者たちを相手に牝馬が勝ちきるにはヴィクトリアマイルからの中2週のローテはきつすぎるのだろう、と自分は思っている。近年は、3歳世代から距離の使い分けもはっきりとするようになってきているのだから、そろそろNHKマイルカップヴィクトリアマイルの順番を入れ替えても良いのではないかな、というのが、一ファンとしての希望だったりもする。

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また巡ってきた、染みる季節。

一部の商業施設の営業が”解禁”されたりして、「緊急」事態っていうのが一体何なのか、もはやよく分からないフェーズに突入してしまった感がある首都圏。

街の中の光景はもはや日常そのもの、されど、ワクチンをめぐる話題があちこちで飛び交っているあたりは、依然として非日常。

そんなカオスの中でも、容赦なくやってくるのが日本の夏・・・ということで、今年もこの季節になった。

この、ひたちなか市が、いや、日本が誇るサザコーヒーの飛びぬけて美味いアイスコーヒーのネタは、ここ数年、夏になるたびに毎年のように取り上げているから*1、もはや説明不要ではないかと思うのだが、いや、これ初めて見た、という方がいらっしゃるのであれば、

まぁ、とにかく飲んでみて。

の一言に尽きる。

この一年、飲食業界に吹き荒れる嵐の中、居酒屋をはじめとして、自分が飲食関係に費やすお金も自ずから減少一途を辿らざるを得なかったのだが、そんな中、突出して伸びたのが「カフェ代」。

少ない時でも最低1日2回、多い時には4回、5回。最近は、「1杯飲むとおかわり半額」なんていうサービスをしてくれる店も多いのだが、それを2回使ってさらにワンモア・・・しかも、どんなに寒い季節でもオーダーするのは必ずキンキンに冷えたアイスコーヒー。

そんなルーティンに染まった”カフェイン中毒者”が、「日本一美味い」と断言するアイスコーヒーが美味しくないはずはないだろう・・・。


ということで、世間が油断し始めた頃が要警戒、とばかりに外への出足も鈍らせたいこの時期、筆者自身も、この「買い始めると止まらない6本セット」を例年よりも前倒しで”解禁”した次第である。

一日でも早く終わってほしいコロナの夏、だが、そんな夏だからこそ”SAZA”ブランドのありがたみが増すわけで、今年も一人でも多くの方々に、うだる暑さと湿気にやられそうな体にとことん染みるこの極上の香りとコクを味わっていただければ、と願う次第である。

*1:昨年のエントリーが今年もこの季節がやってきた。 - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~ そしてここに書かれていたささやかな目標も無事達成。勝田駅から徒歩数分、本店は聞きしに勝る聖地であった。

2021年5月のまとめ

5月がやっとこさ終わった。

改めて見返すと、カレンダー上の今月の「稼働日」は少ないし、実際月序盤の何日かは羽根を伸ばしていた時もあった。

でも、連休なんてものがあったことを今の今まで忘れてしまっていたくらい、まぁまぁ密度の濃い、そんな1か月だったような気がする。

数日前のエントリーでも書いた通り、何かと荒んだ空気が流れていた月でもあったから、世の中で5月がやっとこさ終わった。

改めて見返すと、カレンダー上の今月の「稼働日」は少ないし、実際月序盤の何日かは羽根を伸ばしていた時もあった。

でも、連休なんてものがあったことを今の今まで忘れてしまっていたくらい、まぁまぁ密度の濃い、そんな1か月だったような気がする。

数日前のエントリーでも書いた通り、何かと荒んだ空気が流れていた月でもあったから、世の中で目にしたものを気軽に取り上げる気にもならず、かといって、まとまったエントリーを書くには時間がなさすぎた、ということもあって、更新頻度は相変わらず低調なまま。

せめて連休中に読んだ「Day1」の感想くらいは書き残しておきたかったのだが、それもままならず。

ただ、いつかは書くつもりなので、関係の皆さま(?)は、暫し(がどれくらいの長さになるかは分からないけれど)お待ちいただければ幸いである。

今月のページビューは13,500強、セッション9,000超、ユーザー5,000弱、低調な数字には違いないが、今様々な経験を通じてインプットされていることは、いつか必ずどこかで還元できるはずなので、それも含めて、この先の本気、を気長にお待ちいただければと思っている。

<ユーザー別市区町村(5月)>
1.→ 横浜市 660
2.→ 大阪市 413
3.↑ 新宿区 345
4.→ 千代田区 319
5.↓ 港区 297
6.↑ 世田谷区 200
7.↓ 名古屋市 185
8.→ 渋谷区 115
9.→ 中央区 114
10.→ さいたま市 107

まだちょっと傾向は見えづらいのだが、都市部回帰の動きが再び出てきているような気がして、それが良いことなのかどうなのか、何とも言えない気分になる。

続いて検索ランキング。

<検索アナリティクス(5月分) 合計クリック数 1,670回>
1.→ 企業法務戦士 149
2.→ 匠大塚 業績不振 52
3.→ 企業法務戦士の雑感 35
4.↑ 取扱説明書 著作権 28
5.圏外試験直前 勉強しない 13
6.圏外企業法務 ブログ 12
7.↓ 説明書 著作権 12
8.→ 企業法務 戦士 11
9.圏外知財立国 失敗 10
10.圏外高野義雄 wiki  9

引き続き人気の「匠大塚」に、5月ならではの「試験直前・・・」。

もはや遠い記憶だし、今行われているのは全く別世界のものではあるが、そういえば、そんな季節だったんだ、ということをふと思い出す。

なお、今月の記事絡みのインプレッション最高値を記録したのは、以下の記事(インプレッション数14,268)で、騒動はすでに定時株主総会の舞台にも持ち込まれようとしている。

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そして最後に書籍。今月も売れたのはあの本だった*1

<書籍売上ランキング(5月分)>
1.手にとるようにわかる会社法入門[Kindle版]

ということで、また月が替わり、自分自身新たな節目をまた一つ超えることになる。

思えば、この2年間は、人生の運を全て使い尽くしてしまっているんじゃないか、というくらい恵まれた時間だったし、かつてならそわそわするしかなかったこの時期を何ら憂いなく過ごせる、ということだけでも決断の意味はあったと思うのだけれど、自分だけ良ければそれでいい、という話でもないわけだから、今はどんなに微力でも、暗闇の先、少しでも道を照らせる存在になれるように、一歩一歩、刻んでいければ、と思っている。

*1:川井先生ご本人のコメントによると、既に1万部突破、3刷突入とのこと。何とも素晴らしいことです。

「ほんの数センチ」が創るこれからの未来。

まだまだ「祝祭」を催すには程遠い世相ながら、「第88回」という数字からは微かな縁起のよさが感じられる。

そして、何といっても競馬を愛するものにとっては年に一度の特別な日。それが東京優駿=ダービーデー。

「観客ゼロ」で行われた昨年に比べると、今年は何だかんだ言っても数千人規模の入場者はその場にいたし、自分のように(新型コロナ以前から)常時リモート即PATで楽しんでいる者にとっては、それこそ”何も変わらない”祝祭日だったわけだが、それでも今日になるまで、今年無事この日がやってくるのか心配で仕方なかった、ということは最初に申し上げておきたい*1

馬柱に目を移せば、ダノンザキッドの離脱により「17頭立て」というダービーでは実に珍しい事態になっていて*2、それにもかかわらず人気は昨年同様上位2頭に集中、特に1番人気のエフフォーリアは1.7倍、ということで、「2年連続無敗三冠馬」の登場を待つファンの心理が見事に投影された状況になっていた。

加えて、先行脚質の馬に過去10年で最高勝率を誇る1枠が与えられ、晴れて馬場状態も良い、さらに鞍上の横山武史騎手は若干22歳、未だに健在の父親が騎乗しているレースで、勝てば戦後最年少記録の更新と親子2代制覇を達成できる、ということになれば、ドラマを期待しない方が無理、というべきだっただろう。

先週販売されたNumber誌*3では、堂々の表紙とトップ記事を飾った令和一の新星。


「舞台があまりに整い過ぎていて心配です」というパドック解説の老婆心的コメントもあった中で、スタートも見事に決まり、先行の流れに乗る。そこまではまだ人馬とも完璧なストーリーの中にいた、はずだった。

だが、最初のコーナーを回って向こう正面に差し掛かるあたりから、彼らにとっては実に嫌な展開になる。

前走(NHKマイルカップ)での「スタート直後落馬」の汚名返上とばかりにバスラットレオンが快調に引っ張ってくれたところまでは当然想定の範囲内で、これに続いてタイトルホルダーが2番手に付けるところまでは予定調和的展開だったのだが、そこにグラティアスが、さらにまさかのルメール&サトノレイナスが絡んでいったことで、外からかぶせられた形のエフフォーリアは窮屈なレースを強いられることに・・・。

さらに、前残りのペースを警戒してか、まくり気味にディープモンスター(武豊)、アドマイヤハダル(M・デムーロ)といった名手たちの馬が次々と襲い掛かり、1000mを過ぎたあたりから一気にペースは上がる。

この辺の流れが、「馬の行く気に任せた」がゆえの結果だったのか、それとも若き騎手の本命馬に一泡吹かせるための仕掛けだったのか、それはそれぞれのジョッキーのみが知るところだろうが、閉じ込められる形となった本命馬としては、さぞかしストレスがたまる展開だったことだろう。

それでも我慢して、4コーナーを回ったところで開けた外目のコースに進路を見出し、エピファネイア産駒ならではの長く使える脚を使って抜け出してきた時、自分はそこで物語が完結すると信じて疑わなかった。

早仕掛けが祟った大外のサトノレイナスにはもう脚が残っていない。難敵タイトルホルダーも競り落とした。他の先行馬たちとの力量を比較しても差し返されるリスクはない。あとはゴールに向けて王道を駆け抜ければいい・・・

と思った瞬間のシャフリヤール。

デビュー2戦目の共同通信杯で3着、その次のレースで毎日杯制覇。加えてアルアインの全弟、という血筋に所属は藤原英昭厩舎、となれば怖い存在なのは分かっていたが、本命馬が主役を演じ続けていた直線では、ほぼ視界から消えていた馬*4。それが背後から影のように現れ、まさにカミソリのような切れ味で、”叩き合い”というには短すぎたラスト数十メートル、瞬間の攻防でハナ差の勝利をさらっていった・・・。

高みの見物を決め込んでいた視聴者ですら呆然とするような結末だったのだから、鞍上の若きジョッキーの心境はいかばかりか・・・。

「長く使える脚」は「切れ味勝負での弱さ」の裏返しの表現でもある。

昨年の主役、デアリングタクトが苦しんでいるのと同じで、切れ味勝負になった時の今一歩さは、同じ父を持つ馬の宿命といわざるを得ないのかもしれない。

ただ、最高の舞台で苦しみながらも直線では堂々の主役を演じていた人馬が、最後の最後のその座から突き落とされる、ということほど悲劇的な出来事はない。

ましてや勝った福永騎手は昨年のコントレイルに続く連覇でダービー通算3勝目、藤原英昭師もエイシンフラッシュで既にこのタイトルを取っているとくれば、

「もう少し考えてあげなよ、神様・・・」

と悪態をつきたくもなるものだが・・・。

*1:そして、そんなファンの憂いを「杞憂」に変えてしまうJRAの安定したオペレーションに改めて畏敬の念を表する次第である。

*2:3歳馬最高峰の舞台、ということで、これまでなら大舞台に立つには戦績が伴っていないような馬でも一応登録して抽選に・・・というケースは多かったのだが、今年に関しては最初から登録馬が18頭しかいなかった。それだけ世代内での路線も、力の差もはっきりしていた年だった、ということなのかもしれない。

*3:ちなみに今回の特集号は過去の競馬特集号と比べても”馬愛””騎手愛”にあふれた誌面の充実ぶりが半端ないので、ファンなら是非読むべき一冊だと思う。

*4:後でVTRを見たら、外の方の馬群の中でもがいていた。

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引き上げられたバーチャルオンリー総会のハードル?

季節はめぐり、今年も佳境に差し掛かりつつある株主総会2021」

今月の半ばくらいからは、連日のようにどこかの会社で招集手続の開始を告げる取締役会が行われ、付議される議案がリリースされるようになり、今週に入ってからは「中3週間」を遥かに超えるようなタイミングの会社も含め、怒涛の招集通知開示ラッシュ。さらに週末に差し掛かる頃には発送された招集通知も手元に届くようになってきた*1

ここ数年の傾向として目立つようになった「監査等委員会設置会社への移行」や「ダイバーシティを考慮した(と思われる)社外取締役の選任」さらに「会計監査人の異動」に、一部のファンドからの紋切り型の株主提案は、今年もあちこちで見られていて、各社ご苦労が絶えないところだと思うのだが、そんな中、今年のトピックとして新たに急浮上してきたのが、

「定時株主総会のバーチャルオンリー化を可能とするための定款の一部変更」

である。

既に川井信之弁護士のサイトでまとめられているが*2、自分が把握している限りでも、口火を切ったのは2021年5月11日付の武田薬品工業㈱の↓のリリースだった。

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株主総会の開催の時期を定める定款の規定の標題を「開催の時期および方法と改めた上で、

「当会社は、感染症拡大または天災地変の発生等により、場所の定めのある株主総会を開催することが、株主の利益にも照らして適切でないと取締役会が決定したときには、株主総会を場所の定めのない株主総会とすることができる。」(強調筆者)

という規定を新たに追加するこの変更議案のインパクトは非常に大きかったし、今まさに「バーチャルオンリー株主総会」を認めんとする「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律案」が国会で審議されているさなかに、

「本議案による定款一部変更は、産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律が上述の内容で国会において成立し、公布・施行されること、ならびに、上記の経済産業大臣および法務大臣の確認を当社が得ることを条件として、効力を生じるものとします。」

という留保付きで、一足先に”仕掛けた”感のあるこの議案に対しては、様々な意見が飛び交ったところでもあった。

だが、これは序の口、5月14日には三井住友FGと後述のアイ・アールジャパンHDが、さらにその翌週にはリクルートHD、ZHD、ソフトバンクグループといった、いかにも挑戦するDNAが組み込まれていそうな会社が次々と定款一部変更議案の提出を表明した*3といった会社が続く。

議案での書き方は各社それぞれで、標題を「場所の定めのない株主総会【の開催】」とした上で、

「当会社は、株主総会を場所の定めのない株主総会とすることができる。」

という条文をシンプルに追加するパターンもあれば、招集手続を定める条の中に、新たな項番を付け加えるパターンもある。

また、附則の書き方には、もっと様々な個性が出ていて、代表的なものを挙げるなら、冒頭の武田薬品工業の例と同じく法律との整合性をシンプルに記載した、

「第18条の変更は、産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律(令和三年閣法第二三号法案の再提出等により法案番号が変更された場合には変更後の法案番号による)が成立し、産業競争力強化法第三章第四節が改正及び施行されること、ならびに、当会社が、当該改正後の産業競争力強化法に基づき、経済産業省令・法務省令で定める要件に該当することについて経済産業大臣及び法務大臣の確認を受けることを条件として効力を生ずるものとする。本附則は、第18条の効力の発生日の経過により削除する。」(㈱アイ・アールジャパンホールディングス)

のようなものから、「効力発生日」の特定を意識した、

「第14条(招集)の変更は、国会における産業競争力強化法等の一部を改正する法律の成立及び施行後、経済産業省令・法務省令で定めるところにより、当社が実施する完全電子化による株主総会が、経済産業省令・法務省令で定める要件に該当することについて、経済産業大臣及び法務大臣の確認を受けた日を効力発生日とし、本附則は、効力発生日経過後、これを削除するものとする。」(Zホールディングス㈱)

さらには、法律案の早期成立や「廃案」の可能性まで意識した

「物理的な株主総会の会場を設けることなく、インターネット等により株主が株主総会にオンライン出席するバーチャルオンリー型株主総会を開催することが可能となる「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律」が成立し、同法律におけるバーチャルオンリー型株主総会を可能とする規定が施行され、同法律に基づき、株主総会を場所の定めのない株主総会とすることができる旨を定款で定めるための要件に該当することについて、経済産業大臣および法務大臣の確認を受けることを条件として、当該確認を受けた日を効力発生日として、第14条を変更する。ただし、本附則を含む定款一部変更に係る議案が、株主総会で承認された日において、当会社が、経済産業大臣および法務大臣の確認を受けている場合は、当該日を効力発生日とする。なお、当該変更または同法律の案が廃案となることをもって、本附則を削除する。」(㈱LIXIL)

まで、会社ごとの個性がよく表れているような気がする。

そして、総会周りの関係者の方々の多くは、法案審議と並行してこういった勇気ある10社程度のサンプルが世に提供されたことに感謝しつつ、「(今年の総会が終わったら)来年以降どうするかじっくり考えればいいや」と思ったはずだ。

だが、今週末になって、我々はまた新たな展開を目撃することになった。

”勇社”の一つ、㈱アイ・アールジャパンホールディングスの議案に向けられた泣く子も黙る議決権行使助言会社Institutional Shareholder Services Inc.(ISS)の「反対推奨」、そしてそれに対する会社側の反論が明らかにされた5月28日付のリリースである。

www.nikkei.com

奇しくも日経紙がFTのニューズレターの内容紹介として、「オンライン株主総会の問題点」を指摘する記事を出したタイミング*4

加えて、ここで引用されているISSの意見のうち、「有意義な交流の場が失われる可能性」とか「ベスト・プラクティスに関する株主や企業の間のコンセンサスは得られていない」という指摘は一部の識者の間からも出ていた話だっただけに、ここをどう切り返すか、ということが、俄然今年の総会のメイントピックとして注目されることになりそうな気配である。

で、当然のことながら、会社側の説明は自信に満ちたものとなっている。

冒頭から、

産業競争力強化法改正案が、バーチャルオンリーの株主総会を開催することを認めた趣旨は、バーチャルオンリーの株主総会が、感染症対策に有効であるというだけでなく
①遠隔地の株主など現在株主総会に出席することが困難な多くの株主に対して株主総会に出席する道を開くことにより株主総会における経営陣と株主との交流を促進する
株主総会の会場確保を不要とすることにより、株主総会開催コストを低減するとともに、株主が出席しやすい開催期日を選択する自由度を増すことができる
という点で株主総会の活性化・効率化・円滑化に有効であるからです。株主に株主総会の会場への来訪を求める現在の株主総会の制度では、株主に株主総会出席のための時間とコストを負担させることになるだけでなく、非居住者を含む遠隔地の株主や健康上の理由で出席が困難な株主が株主総会の場で自由に質問し、質疑応答を通じて自らの議決権を行使する機会を事実上制限する結果となっています。バーチャルオンリーの株主総会は、現在のハイブリッド型株主総会とは異なり、質問や動議を含めて全てバーチャルで行うことを前提とする制度であり、株主総会への実出席を望む株主にとって極めて有用な制度です。」(1~2頁)

と、改正法案の「立法趣旨」の堂々たる説明から入っているし、これに続いて「ISSの示す懸念が杞憂にすぎないことについて、当社の見解をご説明いたします。」として、約1ページ半にわたって、ISSが指摘する問題点への反論を展開している。

おそらく他の会社の議案にも反対推奨が出ている中で、いち早くこれを出したことに、「株主総会対応支援会社」としての矜持を示す、という思いがあったのだろうし、「なぜ今やるのか?」という問いに対して、

「(3)当社が他の会社に先駆けてバーチャルオンリーの株主総会の定款変更を行うことにより、ベスト・プラクティスの確立に貢献し、株主総会対応のスペシャリストとしての当社の企業価値を高めることとなる。」(3頁)

という議論を展開したところにも、そういった思いは垣間見える。

だから、これはこれで、このままオープンに応酬を続けていただけると皆助かる、というところではあるのだが・・・

*1:「そんなこと言わないで、うちはいつも通り2週間でやってますよ、東証が勝手に決めた努力義務なんて知りませんよ・・・」という会社もあるかもしれないが、それはそれで「個性」として尊重されるべきだと自分は思っているので、それについてどうこう言うつもりはない。機関投資家の便宜を図ることだけに注力すればよい、というものでもないのだから。

*2:産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律案、衆議院本会議で可決、参議院へ - 弁護士川井信之の企業法務(ビジネス・ロー)ノート参照。

*3:さらに今週に入ってリスクモンスター㈱も「本議案の付議に支障が見込まれると当社が判断する場合、本議案は撤回するものとします。」という留保付きながら、定款変更議案の提出を表明している。

*4:オンライン株主総会 懸念: 日本経済新聞参照。

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