「女性騎手フィーバー」と名手の輝きと。

何が起きたのか、49歳の武豊騎手が開幕週から絶好調で、リーディングトップをひた走っている今年の中央競馬
その武豊騎手が目下6連勝中のお手馬・インティに騎乗して1番人気で参戦し、ゴールドドリームノンコノユメ、モーニン、といった歴代の覇者たちや、東京ダート重賞常連のサンライズノヴァ、東京大賞典馬・オメガパフュームといった面々と対決する、というだけでも見どころは十分だったのに、さらにDr.コパこと小林祥晃オーナーが大一番で鞍上に藤田菜七子騎手を指名した4連勝中の根岸S馬・コパノキッキングまで加わったことで、フェブラリーSはいつになく燃え上がった。

いくら自分が一度とったことのあるタイトルだからといって、G1の舞台、それも既に重賞2勝の期待馬に〝僅か通算50勝”の若手騎手を乗せるなんてことは、そう簡単にできることではない。にもかかわらず、それをやってのけ、スポーツメディアに「女性騎手初のG1騎乗」という格好のネタを提供した小林オーナーの英断(ファンサービス)は大いに称えられるべきだろう。

そして、その抜擢に応えて、距離適性が疑問視されたコパノキッキングを、"溜める”レース運びで最後5着にまで連れてきた藤田騎手の騎乗っぷりにも一定の評価は与えられるべきだと思っている*1

レース前、1番人気、2番人気馬を差し置いてひたすらコパノキッキング(に乗る藤田騎手)にスポットライトを浴びせ続けた地上波メディアには、さすがにやり過ぎ感もあったし、レースが始まってからの映像も、何となく外から追い上げるコパノキッキングを追う絵になっているような気がして(これは見ていた自分自身の心理のせいもあるのだろうが、1.2着はともかく、3着に何が入ったのかは確定した掲示板を見るまで分からなかった)、ちょっともったいない印象を受けたのだけれど、それはあくまで現地に行かなかった怠惰な人間の話。

藤田騎手の話題に誘われて競馬場に足を運び、目の前で起きていることを素直に見ていたライトなファンには、名手に操られたインティがいつものように逃げを打ち、最後はゴールドドリームの猛追を受けながらも辛うじて「クビ」の差で叩き合いを制する、という好勝負がきっと目に入っていたはずだし、レジェンド・武豊騎手が競馬のお手本のような心憎い騎乗をしてくれたおかげで、「女性騎手G1初騎乗初勝利」という一過性の見出しよりもずっと価値のある勝利が歴史に刻まれた、と思えば、何らDisるところはないな、というのが今日のレースへの率直な感想である。

個人的には、この先、藤田騎手のG1チャレンジが続くのか、ということ以上に、武豊騎手の勢いがどこまで続くのか(持つのか)の方に関心が強いところではあるが、何よりも、どんな切り口から見ても競馬は楽しい、そう思えるような話題豊富な一年になることを今は願うばかりである。

*1:もちろん、位置取りを下げた分、最後の直線に入るところのロスは大きかったと思うし、コース取りが命のダート戦で「大外」まで出して追わざるを得なかった"上品さ”の克服が今後の彼女の課題になるとは思うのだが、それでも、である。

冬のちょっとした異常事態。

かつて、寒いところでの生活を腹いっぱい味わったはずの自分でも、今年の冬は「寒い」の一言である。

シカゴの体感温度には及ばないものの*1陸別町で観測された「氷点下31.8度」なんて、数字を見ただけで全身の血流が凍りつきそうだし*2、そこまで行かない東京も連日氷点下の洗礼。

雪が降って路面が凍結しない限り、都市生活には影響しないのが救いだが、心が冷え切った今の状況で、身まで冷えてしまうと何ともやりきれない気分になる。

・・・で、そんな状況に直面していることもあって、月が替わっても月締めのエントリーが1週間以上アップできない、というブログ開設以来の惨事に陥ってしまった。
ブログも仕事も、何とか騙し騙しやってはいるのだけれど、このまま行くと奈落の底に落ちてしまいそうだから、連休の3日間は極力予定を入れずに休養に努めたいと思っているのだけど、さてどうなるか・・・。

2019年1月のまとめ

「明けた」と思ってふわふわしている間に、あっという間に様々なものが押し寄せ、気が付くと終わっている。
1月はそんな月である。そして今年も例外なく、一瞬で過ぎ去ってしまった。

スタートした時はブログの装いも新しくなって、それなりの意気込みがあったつもりなのだが、容赦なく押し寄せてきた仕事の波と、年々早まる時のスピードが思考を鈍らせ、気が付いたらブランクの日々が続いていたことに忸怩たる思いはあるのだが、いずれそう遠くないうちにこんな日々も懐かしく思える時が来るのだろう。

今月のページビューは14,000件強、セッション8,000弱、ユーザー数は約4,600。
まぁ、しょうがない・・・とあきらめがちな自分は好きではないけど、365日過ぎ去った時に、激動の一年を象徴するような結果になればな、と思っている。

<ユーザー市区町村(1月)>
1.→ 港区  532
2.↑ 大阪市 508
3.↓ 新宿区 505
4.→ 横浜市 338
5.→ 千代田区 254
6.↑ 名古屋市 178
7.→ 中央区 176
8.→ 渋谷区 124
9.→ 世田谷区 120
10.→ 京都市 101

<検索アナリティクス(1月分)合計クリック数 1,714回>
1.→ 企業法務戦士 139
2.→ 東京スタイル 高野 30
3.→ 読売オンライン事件 18
4.→ 企業法務 9
5.圏外広島市暴走族追放条例事件 反対意見 9
6.↑ プログラム 著作権 判例 9
7.圏外北朝鮮映画事件 9
8.圏外東京永和法律事務所 8
9.圏外オリンピック 言葉狩り 7
10.↓ 矢井田瞳 椎名林檎 7

あれ、もう改正?

日経新聞の夕刊に、こんな記事が出た。

文化庁有識者会議は25日、著作権を侵害する海賊版サイトへの対策の最終報告を取りまとめた。インターネット上で海賊版が投稿されているサイトへ誘導する「リーチサイト」を規制するための刑事罰の新設や、無断投稿された漫画や小説などのダウンロードの違法化を求める内容。海賊版サイトが海外のサーバーを経由するなど摘発が困難ななか、入り口となるリーチサイトの規制により海賊版の拡散を防ぐ狙いがある。最終報告を踏まえ、政府は28日召集予定の通常国会著作権法改正案を提出する。」(日本経済新聞2019年1月25日付夕刊・第1面)

25日は、文化審議会著作権分科会の法制・基本問題小委の開催日。
www.bunka.go.jp

ということは、ここでの「最終報告」は、つい先日まで行われていた「中間まとめ(案)」に関する意見募集の結果を踏まえてのものだと思われるし、記事になっているテーマも確かにそれに整合しているのだが、「中間とりまとめ」からいきなり立法(法改正)というのは、なかなかアグレッシブだなぁ、というのが率直な印象である。

25日の審議内容はもちろん、当日の資料すらまだアップされていないので、意見募集の結果がどうだったのか、とか、それに対してどういう意見集約が行われたのか、といったことは推測するしかないのだけれど、あの「中間まとめ(案)」に書かれていた程度の内容で、次期通常国会に提出する法案まで作る、というのはなかなか骨が折れる話のような気がして、個人的にはハラハラドキドキしながら見守ることになりそうである・・・。

ようやく出た。

昨年から「出る出る詐欺」みたいな状況がずっと続いていたので、22日の夜にちらほらと報道が出たのを見ても、個人情報保護委員会のプレスリリース*1を見てもなお、あまり信用していなかったのであるが、European Commissionのプレスリリースとして出たのを見て、ようやく「本当だったんだ」と。

europa.eu

europa.eu

実のところ、昨年から十分性認定が出ることを前提に対策を立てている会社がほとんどだろうし、実務サイドとしてはこれで大きく負担が減る、という実感は全くないのだけれど、フランス監督当局が華々しく第1号案件の花火を打ち上げたのに続いて、タイミング良くこの話が出てくれたおかげで、年が明けて既に過去のものになりつつあった「GDPR祭」が瞬間的に再び盛り上がった、ということだけは、一応評価しておくことにしたい。

被疑者の叫びと、この後に待ち構えていそうなドラマ。

今日、東京地裁で行われたカルロス・ゴーン氏の特別背任事件に係る勾留理由開示期日。
報道によると、大方の予想(というか、関係者による事前予告?)のとおり、終始innocent*1であることを主張する、という展開となったようである。

依然としてゴシップも含めた様々な報道は飛び交ってはいるし、一方で、自分は一連の事件の証拠に接したこともなければ、そもそも逮捕状、起訴状の内容すら報道以上のことは知らない。

ただ、彼が本当に「イノセント」かどうかはともかく、被疑事実、起訴事実との関係で「無罪」となる可能性は十分にあるのでは?というのが自分の「直感」である。
そして、昨年末の時点で地に堕ちたと思われたカルロス・ゴーン氏が、起死回生の逆転劇の主役となる日も着実に近づいているように思えてならない。

後から振り返った時に、本件が「何かが変わった事件」の一つに数えられるのかどうかは神のみぞ知る、だが、過剰な報道に接すれば接するほど、この被疑者に喝采を送りたくなる・・・。そんな気持ちで見守っている。

*1:これが"not guilty”ではなくこういう表現なのは、単に「起訴前だから・・・」ではないのだろう。

一冊の新書に込められた思い。

昨年の今頃世に出た、著作権を解説する一冊の新書がある。

はじめての著作権法 (日経文庫)

はじめての著作権法 (日経文庫)

自分は、最初この本を店頭で見かけた時、カバーに「企業の法務・知財担当者だけでなく・・・」と書かれている割には、テンションが全く法務・知財担当者向きじゃないな、というただそれだけの理由で買うのをやめてしまったのだが、昨年末に公刊されたビジネス・ロー・ジャーナルのブックガイド批評会で話題になっていたこともあり、取り寄せてみることに。

Business Law Journal 2019年 02 月号 [雑誌]

Business Law Journal 2019年 02 月号 [雑誌]

結論として、第一印象(企業で法務なり知財なりを実際に担当している人にとってはマストな書籍ではない。理由は後述)に関して大きく変わったところはないのだが、一方で、日頃、仕事で著作権に触っていない一般の方(学生から大人まで)向けの"啓発”書籍としては案外良いのかもしれないな、という印象も受けたし、何より、読んだ自分自身が端々に織り込まれたエピソードの懐かしさと、著者の池村弁護士の熱い思いに心打たれるところがあったので、(今さらではあるが)以下、本書の特徴的なポイントを項目ごとに挙げつつ、簡単にご紹介させていただくことにしたい。

「一般の人向け」目線の徹底ぶり

本来、「新書」というのは、専門的な事柄を万人に理解されるように解説することを目的として出されるものだと思うのだが、専門家が書かれたものの中には、必ずしもそうでないものも多々見受けられる。

そんな中、本書は冒頭の「はじめに」にも書かれているように、「マニアックで玄人な方々を対象とするもの」ではなく、「著作権法に初めて興味を持った方、著作権法のことを勉強する必要に迫られた方、そういった著作権法の初学者の方々を対象に、著作権法の基本的な内容を、適宜最新情報等も交えつつ、とにかくできるだけ分かりやすく説明することに徹し」*1ようとするスタンスで貫かれている。

元々業界の専門誌である「コピライト」に連載されていたものをベースとしているとのことだし、池村弁護士ほどの専門家が「初学者」を含む一般人の目線に合わせて本を書く、というのはそう簡単なことではない*2

だが、本書では、例えば、著作権法の中でもっとも説明がややこしいトピックの一つである「著作者人格権」について、

「言ってみれば、作品(著作物)を創作した著作者本人の作品に対する種々の"こだわり”を保護する権利です。それゆえ、著作者人格権は、著作権(著作財産権)のように第三者に売ったりあげたりすることはできず、著作者のみが保有できる権利です」(本書77頁)

と、徹底的に割り切った表現をするなど、随所に「分かりやすく」「口語的に」説明できるようにするための知恵が施されている。

また『おふくろさん』事件(85頁)、『森のくまさん』騒動(86頁)に始まり、佐村河内守氏のゴーストライター事件(92頁)、音楽教室事件(101頁)、銀河鉄道999事件(119頁)*3、五輪エンブレム問題(131頁)と、最近、著作権絡みで話題になったトピックに一通り言及されており、かつ、それらのトピックの著作権の世界での位置付けと、著者自身の考え方についても多少踏みこんで示されている点も個人的にはポイントが高く、一般読者にとって有益だな、という印象を抱いた最大の理由もそこにある。

もちろん、上記のような「時事ネタ」に関しては、その時々で然るべき人が、ネットメディア等を通じて然るべきタイミングでコメントを出していることも多いのだが、それを全部まとめたものとなるとなかなか存在しないし、最近では、得体のしれない法律事務所系のサイトが乱立して決して正確とは言えないコピペ的なコメント垂れ流しをしていたりもするから、然るべきバックグラウンドをお持ちの方が、きちんと「活字」で書かれた本を出すことには、やはり相応の意義はある。

そして、冒頭の「はじめに」に出てくる以下の記述から、著者自身がまさにそこに重きを置いておられたのだろう、ということは重々見て取れるのである。

’(五輪エンブレム騒動について)「筆者は、非常に違和感をもって、そしてある腫冷めた目で一連の報道や炎上騒動を見ていました。とりわけネット上では、五輪エンブレムをはじめ、佐野氏の作品はあれもこれも著作権侵害であるといった論調であったように感じましたが、こうした論調は筆者の感覚とは大きく乖離しています」
「筆者としては、こうした乖離が生じる背景には、『著作権』が多くの国民にとって身近なキーワードになった一方で、著作権法の基本的な知識はまだまだ浸透していないことがあると考えています。分からないことがあれば書籍で調べたり、恥を忍んで先輩などに教えを請うたりといったことをした時代と異なり、今ではネット上でさくっと検索し、それで分かった気になってしまうというケースが非常に多く、著作権法についても同様です。もちろん、ネット上にも正確で良質な記事が沢山ありますが、良くも悪くも玉石混交であり、残念ながら不正確な記事も少なくありません(念のため言えば、弁護士等の専門家によるものだからといって正確な記事とは限らないのが実情ですのでご注意ください)。そうした記事を少し読んだだけで、著作権法のことを知ったつもりになっている人が多く存在しているように感じています。」(本書5~6頁、強調は本ブログ主。)

自分の主観では、本書の折々で引用される〝喩え話”の中には、マニアック過ぎてようわからん、と突っ込みたくなるようなものや、若干強引なこじつけ(?)に見えるようなものもないではないのだが*4、こと、「著作権法の解説と事例へのあてはめ」に関しては、本書は極めてスタンダードで正確な解説を貫いているわけで、それはすごく価値のあることだな、と思った次第である*5

ウィットの蔭から鋭く伝わってくる熱い思い。

本書は、ほぼ全ての章で著者独特のユーモアで笑いを取りに来ている(?)という点でもなかなか特徴的で、そこを評価する声も多いのだが(Amazonの書評や、BLJ座談会でのコメント等)、自分はむしろその裏に秘められた著者のコメントの鋭さの方に心を魅かれた。

先ほど紹介した「はじめに」の長文にもそれは現れているのだが、本文中でそれが特に際立っているのが、第8章「権利制限規定」のなかで1頁半にもわたって記された「私の思い」だろう。

「柔軟な権利制限規定」に関して、以下のように述べるくだり・・・。

(権利者団体側が頑なに反対する背景は)「一部の導入推進論者が、あたかも著作権法イノベーションを妨げる諸悪の根源であり、柔軟な権利制限規定を導入することによって、イノベーション推進のためであれば本来権利者からの許諾が必要な領域も含め、広く権利制限規定の対象となるかのような主張をしていることにあると考えています」
「しかしこうした主張は誤りです。フェアユース規定を含め、柔軟な権利制限規定は決して打ち出の小槌ではないのであって、権利者の利益を不当に害するような領域についてまで、イノベーション推進の名の下に権利制限の対象とするようなものであってはならないはずです。(179頁、強調は著者。)」

これは、もう少し筆が滑れば、特定の団体ないし個人名が出てくるんじゃないか、というくらいピンポイントな指摘で、最後は「おっと、思い入れが強い問題だけに、ついつい熱く語ってしまいました」と冗談めかして締めているものの、相当な熱量を感じる記述であり、直近の平成30年著作権法改正がああいう形で収まった理由も、ここを読めば非常に良く理解できるところである*6

他にも、「法律改正の裏側」というコラム(188~192頁)で、立法担当者として平成24年改正に携わったときの内閣法制局審査や各省協議のご苦労を縷々述べられたうえで、

「法改正の結果だけ見て色々と難癖をつけるのは簡単なことなのですが、その裏には関係者の血のにじむ苦労や様々な大人の事情があるということを少しでも知っていただけると嬉しいです。」(192頁)

と締められている箇所などがあって、「難癖」を付けた側の人間としては、なかなか刺さるところがある*7

いずれにしても、ウィットに富んだ書きぶりで読者を和ませながらも折々でストレートに熱く持論を吐き出す、という点に本書の最大の魅力がある、ということを、自分はここで強調しておきたいのである。

微妙な立ち位置

ということで、ここまでなら絶賛して終わり、ということになるのだが、惜しい点を挙げるとしたら、冒頭でも述べたように、全体を通じて本書の「立ち位置」が若干分かりにくくなっているところだろうか。

「一般読者」向けなのか、「初学者」向けなのか、あるいは「実務家」向けなのか・・・。

これまで称賛させていただいたとおり、一般読者向けの〝啓発書”としては、本書は非常に優れていると思うのだが、ところどころにマニアックな記述*8が登場するのは少々蛇足のようにも思える。
一方で、「実務家」に向けたものだとするならば、著作物性、類似性の判断に関して取り上げられている素材の選び方*9や、実務上一番重要な「権利処理」に関する記述の薄さ等、いろいろ気になるところは出てきてしまう。

また、著者自身の立ち位置(実務家として、どういうスタンスで著作権法に向き合っておられるのか?)にも見えにくいところはある。

例えば、「著作物性」に関して、一見、狭義(厳格)に解するスタンスをとっているように読める記述がある一方で、まとめの部分では「『著作物』のハードル自体はそう高いものではなく・・・」(本書55頁)という形で記載されていて、どちらに力点を置いて説明しようとされているのかが今一つ見えにくくなっているくだりなどは象徴的である。
また、「権利制限規定」に関するスタンスについても、ある程度、ここ数年の議論に付き合ってきた読者であればともかく、一見の読者にどこまで伝わるかはちょっと疑わしい。

いずれも、個々の箇所の記述が誤っているとか不明瞭、ということではないし、むしろ、真に著作権法を理解され、様々な利害関係者に配慮したバランスの良い言説を意識しておられる方だからこそ、そうなってしまうのだと思うが、「読み物」として通して読んだ時に、きちんと全体を読めば読むほど違和感が生じることにならないのかな?ということは、老婆心ながら感じている*10


とはいえ、自分で買って読んでみて、最後の一点だけで本書を敬遠するのはあまりにもったいない、ということに気付いてしまったので、未読・未購入の方には、「自分ならどう読むか?」という隠れた楽しみを味わうためにも、本書に一度は目を通していただくことを強くお勧めしたい*11

*1:以上、本書4頁。

*2:自分も、ちょうど10年くらい前に、技術評論社さんの依頼で、ネットだから気をつけたい! 著作権の基礎知識:連載|gihyo.jp … 技術評論社という連載を書いていたことがあったのだが、本書を読んでいるうちに、当時ちょっとでも分かりやすくするために、表現の一つひとつにすごく神経を使ったことが懐かしく思い出された。

*3:この事件に関しては、池村弁護士自身が松本零士氏側の代理人として訴訟に関与したことにもさらりと言及されている。

*4:あと、「編集著作物」に関して「著作権判例百選」を紹介しておきながら「例の件」について一切触れられていないのは、他の箇所の流れと比較すると、かなり不自然に思える。もちろん、あえて触れたくない著者のご心情は十二分に理解できるところではあるが。

*5:ちなみに自分は、五輪エンブレムに関しては、法律論以外の要素の方をむしろ重視して、「さっさと撤回しろ」というスタンスだったから、結論においては本書の著者とは異なるのかもしれないが、こと著作権侵害の成否に限って言えば、当然「シロ」、という点で意見を共通にしている後味の悪い結末〜遅すぎた五輪エンブレムの“撤回” - 企業法務戦士の雑感

*6:他にも、権利制限規定に関しは、「パロディOK」を権利制限規定化することに関して強い反対の意向を示されている箇所などが印象的である(226~228頁)。

*7:もっとも、この点については当時から激しい応酬がなされていた。今では懐かしい新しい権利制限規定は著作権法の未来を変えるのか? - 企業法務戦士の雑感を参照されたい。

*8:例えば、著作者人格権に関して金子敏哉准教授の説を紹介している88~90頁のコラムなどは、一般読者に紹介するにしてはいささか先端的すぎないか?という気はする。

*9:こういうことを言うと、「これだからマニアは・・・」という突っ込みが入ることは避けられないのだが、著作物性にしても類似性にしても、事案ごとの事情で裁判所が半ば「政策的」に判断を下したケースはそれなりにあるわけだし、そもそも全ての事例について(現職の裁判官を含む)専門家が過去の裁判所の判断を全面肯定しているわけでもないので、これだけで「分かった気」にさせてしまうと、ミスリードとなる可能性はある。

*10:この点、本ブログでも過去に絶賛させていただいた福井健策弁護士の新書のスタンスの一貫性には、敬服するほかない。これを読まずして「著作権」は語れない。 - 企業法務戦士の雑感“TPP時代”の幕開けを前に読むべき一冊。 - 企業法務戦士の雑感など。

*11:なお、Amazonのランキングでは、依然として本書が「ビジネス法入門」部門の1位を争っている。さすが、である。

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