いくら深夜残業しても、“おつまみ”どころかタクシー券すらもらえない一民間人としては、メディアに便乗してバッシングしても不思議ではないところなのだが、質の悪い報道や社説を見ていると、そんな気にはとてもなれない。
朝日や読売なんぞはもっと酷いのだろうが、わが日経にしても・・・である。
「役人の余計な仕事こそ問題」と題する社説*1。
「綱紀粛正を徹底してほしいが、この際、不適切な行為の温床となった連夜のタクシー帰宅そのものを見直したらどうだろうか。」
「そもそも中央官庁では世間一般の勤め人に比べて夜型の人が多い。職位にもよるが、深夜二時ごろ役所を出て、翌朝は十時ごろ席につく人が結構多い。この夜型の勤務を何とかできないものか。」
「一つは明るいうちにさっさと仕事を片付ける習慣を身に付けてもらうことだ。」
確かに役所の人の仕事は夜型にシフトしている。
・・・が、朝早く出勤したら仕事が早く片付くか、といえばそういうものでもないだろう。
「もう一つ、役人を夜型にしている原因に、翌日の国会で質問する議員から事前に質問内容を聞き、翌朝までに答えを用意する慣習がある。」
「この答弁の下書きのほか、様々な役所間調整や議員への根回しなどで時間を取られ、夜が遅くなる人も多い。役人がいまだに政治の中枢にいる証しだろう。」
国会答弁の準備がしたくて役人やってる人間はいないと思うし、できることならそんな無駄な仕事はやりたくない、と思っている人は少なくないはずだ。
「閣僚はどんな質問にも役人に頼らず対応できるよう準備しておくべきだ。政策立案も役人任せでは困る。」
「閣僚」を「取締役」に、「役人」を「担当者」に、そして「政策立案」を「総会対応」と置き換えてみよう(総会対応に限らず、単なるプレスリリースでも良い)。
(新聞社も含め)どんな民間会社にも、同じような批判を受ける状況は存在するはずだ。
要は、組織のトップにいる人間(大臣)が、その組織の担当している仕事の中身を全て把握することなど不可能だし*2、もしそれを要求するとすれば、国会の各委員会での質疑応答も、観念論ばかりが飛び交う、空虚なものになってしまうに違いない。
おそらくこの社説を書いた記者は、組織を運営したこともなければ、会社のラインの中で企画立案業務にかかわったこともないのだろう。
生粋の記者であれば、それがむしろ普通なのだろうし、物事にはいろんな見方があって良いと思うのであるが、「接待」問題はともかく*3、「タクシーチケット」や「官僚の働き方」の問題については、“何でそうなってしまうのか”というところにもっと想像力を働かせて記事を書かないと、そう遠くないうちに読者に見放されてしまうよ・・・、と老婆心ながら心配してしまう。
天下の朝日の読者様ならまだしも、日経紙の若手読者の多くは、“エグゼクティブ”を夢見る人々なわけだし、そんな人々の多くは、霞が関の若手官僚と同じく、ラインの理不尽な仕事に日々鬱憤を溜め込んでいるわけだから・・・ねぇ(笑)。