今年8月の衆院選前に、国民審査と絡めた様々な動きを見せた「一人一票実現国民会議」。
選挙終了から1カ月経って、遂に舞台を裁判所に移した戦いが始まったようだ。
「今年8月に行われた衆院選をめぐり、国会議員1人当たりの有権者数の格差(1票の格差)が約2.3倍だったのは違憲として、東京や福岡、名古屋などの有権者が28日、全国6高裁・支部に選挙無効を求める訴訟を起こした。」
(日本経済新聞2009年9月29日付朝刊・第42面)
記事には、原告の総大将(?)升永英俊弁護士の「全国で提訴を進め、幅広く司法の判断を求めたい」というコメントも掲載されている。
で、個人的に興味深いのは、最後に書かれた以下のくだり。
「原告は違憲無効訴訟のほか、1票の格差が解消されないことに対する国家賠償を求める訴えなども近く提起する予定。」
具体的な損害論をどう組み立てるかはともかく*1、05年の選挙からほとんど手を加えることなく行われた今回の選挙の区割りに、立法不作為の違法を認めることはそう難しいことではないだろう。
そして、再三にわたって、最高裁の“警鐘”が鳴らされている状況下で、国会が制度に何ら手を加えなかったことに「過失」を認めることのハードルも、(従来のこの手の訴訟に比べれば)低いと言わざるを得ないように思われる。
選挙前後の勢力図が大きく変動した「09年衆議院総選挙」を「違憲」と判断することのハレーションは極めて大きいのであって、それゆえ、賢明な最高裁が、本筋の訴訟の方では、選挙無効のみならず、違法宣言を行うことすら躊躇せざるを得なくなる事態も十分に考えられるだけに、最後にこの“国賠訴訟”が、ガス抜き手段として使われる可能性は十分にあるのではないだろうか・・・?*2
様々な主張の組み立て方が考えられる場面だけに、ここは今後のエキサイティングな展開に期待したい。