法律

最高裁の本音はどこに?~「共通義務確認の訴え」をめぐる判決の射程を考える上で

2010年代の初頭、「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」の構想が初めて世に出てきたとき、産業界は大いにざわついたし、そこに若干かかわっていた自分にもいろいろと思うところはあった*1。幸いなことに2016年の施…

判決文に現れる個性

何となく注目していた「宮本から君へ」事件。この日、最高裁で高裁判決を破棄して、助成金不交付処分を取り消した、というニュースを見て、おっ、と思うとともに、要約された判決要旨を聞きながらもしかしたら・・・と思っていたら、やっぱり第二小法廷の判…

定番の憲法判例に投じられた一石

ここのところ世の中の動きが何かと慌ただしいのだが、最高裁でも月に二度の大法廷判決、というのはなかなかのインパクトだった。特に話題になっている「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」の違憲判断(最大判令和5年10月25日)*1に関しては、…

変わらない日常。

連休が明け、そしてとうとう「新型コロナ5類移行」の日がやってきた。政府からこの方針が発表されたのは数か月前のことで、それはすなわち、長年世界中を翻弄したCOVID-19を「普通の感染症」とする、という評価がその時点でほぼ固まっていたということに他な…

投下された格好の素材?

まさか憲法記念日に合わせた、ということではないのだろうけど、いろいろと考えさせられるリリースだった。JRAのオフィシャルニュースより。 「2023年4月23日(日曜)第1回福島競馬第6日において、開催日における騎手の不適切な通信機器(以下、スマートフォ…

「震える手」で動かした先にあるもの

今朝の日経紙朝刊、「陸奥宗光」から始まる、ともすれば見逃してしまうくらい地味だがズシリと刺さったコラムがあった。書き手は斉藤徹弥上級論説委員。 「土地は公のもの」震える手で という見出しの記事である*1。何といってもインパクトがあったのは、中…

何度見てもぬぐえない「被害者救済新法」というフレーズへの違和感

本来なら政権与党が盤石の基盤に支えられて悠々と乗り切れるはずだったのに、身内の様々な問題が噴出した結果、会期末ギリギリまで対応を余儀なくされた今年の臨時国会。最後まで「政治」に振り回された結果、最大の目玉法案の参院本会議での採決がまさかの…

断罪された「隣の不幸は蜜の味」思考。

過去の逮捕歴に関するツイッター投稿の削除をめぐり、最高裁が高裁判決を覆して原告(上告人)の削除請求を認めた*1、ということで大きな話題になっている。元々法務界隈でも多くの方が関心を持たれている話題、ということで、既に様々な方がコメントされて…

最高裁が示した矜持。

地裁、高裁で立て続けに違憲判断が出され、大法廷回付までされていた事件だけに、おそらくこういう結論になるのだろう、と思ってはいたが、実際に示された結論は想像以上にインパクトのあるものだった。 「在外邦人の有権者が最高裁裁判官の国民審査に投票で…

重大事にされてしまった「成年年齢引き下げ」に思うこと。

4月の1日、といえば、学校関係は年度替わり、代替わりということでそれなりのイベントがあるところも多いし、会社によっては新たな決算期、ということで「気持ち新たに」ムードを押し付けられがちなタイミングでもある*1。そして、例年なら季節の風物詩的な…

”お墨付き”の背景にあるもの。

所管官庁が消費者庁に変わって以降、事業者側には制度面でも運用面でも決して評判の良い法律ではなくなっているのが景表法(不当景品類及び不当表示防止法)である。特に、不実証広告規制に関しては、課徴金制度が導入された2014年改正(2016年4月施行)に際…

シンプルな利益衡量だけでは救えなかったもの。

17日に行われた北京五輪、フィギュアスケート女子シングルフリーの最終グループの中継で見たもの。それは間違いなく「異様」と形容するしかない光景だった。華やかな団体戦の「表彰式中止」という異例の事態に端を発したリンク外の騒動。振り返れば、「ケリ…

朝、届いたメールを見て思ったこと。

今朝、仕事を始めるその前に、と一瞬目をやったタブレットの画面に表示された1通のメールがあった。 「2022年4月6日よりEEA圏およびイギリスからYahoo! JAPANはご利用いただけなくなります」 というインパクトのある標題に思わず釘付け。続く本文には、標題…

気になるのはオミクロンの次、に来るもの。

そういえば、COVID-19の話題単独での長いエントリーはしばらく立てていなかった*1。一番近い日付のものは、たぶん↓だったりするから、かれこれ3カ月以上も前のことになる。k-houmu-sensi2005.hatenablog.com多少の揺り戻しはあれど、世の中の空気はいつのま…

「民事訴訟」の持つ意味と、これからのこと。

刑事訴訟法の第1条には、 「この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現することを目的とする。」 と書かれている。一方、民事訴訟法に書かれている「…

これが想定外のトリックショットにならないように。

2021年の総選挙も終わった。開票前は野党共闘が功を奏して「与野党拮抗」といった報道も流れてきたが、蓋を開けてみれば自民党が単独で絶対安定多数の議席数を確保する、という結果に。「メディアはああだこうだ言ってるけど、投票するのは優しい日本人。誕…

最高裁判所裁判官・国民審査対象各裁判官の個別意見について(2021年版・その3・完)

既に2回分のエントリーを書いている中で、「今回の国民審査で対象になっている裁判官にはこれまで以上に個性的な方々が多いのかも・・・」と思い始めているところだが*1、第3回は岡村和美裁判官の個別意見のご紹介から再開する。(第1回、第2回は以下参照)k…

最高裁判所裁判官・国民審査対象各裁判官の個別意見について(2021年版・その2)

4年間、という歳月の重さゆえ「連載」となってしまったこのシリーズだが、後編は第二小法廷・草野耕一裁判官から。 (前編は↓のエントリーをご覧ください。) k-houmu-sensi2005.hatenablog.com 第二小法廷 草野耕一(弁護士出身) 2019年2月就任 2025年退官…

最高裁判所裁判官・国民審査対象各裁判官の個別意見について(2021年版・その1)

またこの時期がめぐってきた。衆院選の投票と同時に行われる最高裁判所裁判官の国民審査。ちょっと前までは、「総選挙」の影に隠れて存在自体が地味だったし*1、審査対象裁判官に関する情報も、定型的なものに毛が生えたレベルのものしか出回っていなかった…

いよいよベールを脱ぎ始めた民法・不動産登記法大改正

アップされた当日は疲労困憊で資料まで目を通す余裕もなく、ただただ「キツネが可愛い・・・」という素人以前のコメントしか出てこなかった「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」に関する解説資料*1。「令和3年民法・不動産登記法改正、相…

広すぎる法改正をカバーするための一冊。

目を通してから記事にするまでにだいぶ時間が経ってしまっているが、先月発売のジュリスト2021年9月号の特集で「所有者不明土地と民法・不動産登記法改正」が取り上げられた。ジュリスト2021年9月号有斐閣Amazon縁あって少しこの法改正にかかわっていたこと…

モヤモヤは解けたけど・・・。

先週末まで、記事が出るたびにずっとモヤモヤしながら眺めていた話題があった。昨年の通常国会で改正法が成立した公益通報者保護法の「指針」に関する話題である。 「政府は企業の不正を通報した人の保護を強化する具体策を記した指針をまとめた。通報した人…

最高裁大法廷決定の先にある未来。

2010年代以降、断続的に法廷に持ち込まれている民法750条をめぐる争いだが、この度、約5年半ぶり、2度目の最高裁大法廷での判断が示された。「夫は夫の氏,妻は妻の氏を称する」旨を記載した婚姻届の不受理処分を端緒とした家庭裁判所への不服申立てルート(…

今必要なのは冷静な議論~ジュリスト・個人情報保護法改正特集より

ここのところ法改正特集が続くジュリストだが、今月発売号は「2020年個人情報保護法改正」の特集だった。ジュリスト 2020年 11 月号 [雑誌]発売日: 2020/10/24メディア: 雑誌2015年改正で一息ついたと思ったのもつかの間、海の向こうでGDPRやらCCPAやらその…

それは「ローンの組み方」以前の問題。

海の向こうのかの国のみならず、遠く離れた日本まで大統領の一挙一動に振り回される・・・そんな週の始まりになってしまったが、今日、個人的に凄く引っかかったのは、日経紙の1面に大きく掲げられた以下の記事だった。 「定年退職後も住宅ローンを返済し続…

電子商取引を覆う「定型約款」という深い霧。

経済産業省から「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」という、いわば型破りなガイドラインが最初に出されてから、いったいどれくらいの月日が流れただろうか?思えば、かつて企業の中で著作権法と格闘していた時代から、この準則の”思い切った記述”に…

今問われているのは、「個人情報保護」を言い訳にしない誠実さ。

一連の”コロナ騒動”が始まってから、「社員/従業員の感染が判明した場合のスタンス」が会社によってあまりに違い過ぎることがずっと気になっていた。特に3月の終盤から4月にかけて感染者数が激増し、ある程度の規模の首都圏の会社なら、確率的に1人や2人は…

コロナが去った後に残るのは自由か、それとも・・・?

そういえば昨日は憲法記念日だったな、ということに今日になってから気付き、昨年暮れに衝動買いしていたことを思い出して読んだのが、以下の一冊だった。リベラル・デモクラシーの現在: 「ネオリベラル」と「イリベラル」のはざまで (岩波新書)作者:陽一, …

今日のCOVID-19あれこれ~2020年3月30日版

緊迫度合いが一段と増してきた首都圏。そして、週の始まりは、数日前に「感染」が公表されたばかりの超有名コメディアンの悲報から始まった。他国に比べれば、この日本では一連の新型コロナ禍で亡くなられた方々の数は本日時点で「50名強」と、決して多いと…

今日のCOVID-19あれこれ~2020年3月28日版

今週は平日の終盤でちょっと更新をさぼってしまったこの連載企画だが、そうこうしているうちに、日本国内の感染判明者数は100名超、200名超、と倍々ゲームで増えていき、東京都内の感染判明者数も60名超にまで達した。小池都知事の強めの「外出自粛」パンチ…

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