憲法

判決文に現れる個性

何となく注目していた「宮本から君へ」事件。この日、最高裁で高裁判決を破棄して、助成金不交付処分を取り消した、というニュースを見て、おっ、と思うとともに、要約された判決要旨を聞きながらもしかしたら・・・と思っていたら、やっぱり第二小法廷の判…

定番の憲法判例に投じられた一石

ここのところ世の中の動きが何かと慌ただしいのだが、最高裁でも月に二度の大法廷判決、というのはなかなかのインパクトだった。特に話題になっている「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」の違憲判断(最大判令和5年10月25日)*1に関しては、…

投下された格好の素材?

まさか憲法記念日に合わせた、ということではないのだろうけど、いろいろと考えさせられるリリースだった。JRAのオフィシャルニュースより。 「2023年4月23日(日曜)第1回福島競馬第6日において、開催日における騎手の不適切な通信機器(以下、スマートフォ…

最高裁が示した矜持。

地裁、高裁で立て続けに違憲判断が出され、大法廷回付までされていた事件だけに、おそらくこういう結論になるのだろう、と思ってはいたが、実際に示された結論は想像以上にインパクトのあるものだった。 「在外邦人の有権者が最高裁裁判官の国民審査に投票で…

コロナが去った後に残るのは自由か、それとも・・・?

そういえば昨日は憲法記念日だったな、ということに今日になってから気付き、昨年暮れに衝動買いしていたことを思い出して読んだのが、以下の一冊だった。リベラル・デモクラシーの現在: 「ネオリベラル」と「イリベラル」のはざまで (岩波新書)作者:陽一, …

今日は「憲法記念日」だから。

ここのところずっと祝日が続いていて、だんだん「今日は何で休みなんだっけ?」ということを考えることすら面倒になってきているのだが、法務系ブログで「憲法記念日」とくれば、やはり反応しないわけにはいかない*1。で、日経紙の特集を読みながら、ここ数…

突然の“解散”の余波。

今週、世の中を揺るがせた野田首相の「解散宣言」。 結局、予定通り、16日にめでたく“解散!”と相成ったわけだが、この急な展開が、違憲訴訟の世界にも予期せぬ事態をもたらしつつある。 「12月16日投開票の衆院選の定数配分を巡り、「1票の格差」の是正を求…

プロ野球の応援をする権利?

1ヶ月遅れで最高裁HPの下級審裁判例集で取り上げられた判決がなかなか面白いので、ここで紹介しておくことにしたい。先日の「ファウルボール負傷事件」*1に続き、最近、“プロ野球の法律問題”づいているところであるが、本件は「観戦する権利」をめぐって争わ…

参院選「一票の格差」訴訟・第1ラウンドの衝撃

ここ1、2年ブームが続いている「一票の格差」訴訟。09年衆院選の方は、最高裁大法廷の判決を待つばかりとなったが、その間に、昨年7月の参院選をめぐる訴訟も各高裁・支部での判断が出そろった。 「昨年7月の参院選(選挙区)で最大5倍の「1票の格差」が生じ…

「14人の大法廷」がもたらすもの

先日大法廷回付が明らかになった「一票の格差」訴訟だが*1、出だしから波乱の兆候を見せている。 「昨年8月の衆院選での1票の格差が違憲かどうかを巡り、最高裁大法廷で審理される9件の訴訟のうち、一審が高松高裁だった1件について、裁判長を務めるはずだっ…

「1票の格差」ついに最終ラウンドへ。

昨年の衆院選以来、各高裁で合憲/違憲の判断が下されるたびにフォローを続けてきた、「一票の格差」訴訟だが*1、ついに最終ラウンドに突入しようとしている。 「「1票の格差」が最大2.30倍だった昨年8月の衆院選は違憲だとして、弁護士らが全国で選挙の無効…

東京高裁の“迷い”?

元社会保険庁職員の機関紙配布に対しては「無罪」の判決を言い渡した東京高裁が*1、元厚生労働省課長補佐の機関紙配布について「有罪」判決を言い渡した。 「2005年9月の衆院選投票日前日に共産党機関紙「しんぶん赤旗」を東京都内の集合住宅で配ったとして…

「1票の格差」訴訟・第1ラウンド総括

日経紙に、2009年8月の衆院選をめぐる選挙無効訴訟について、各高裁での判断を総括する記事が掲載されている。 「1票の格差」が最大2.30倍だった昨年8月の衆院選小選挙区の定数配分の合憲性が争われた訴訟は、先月末で全国9件の訴訟の判決が出そろった。結論…

あっという間に時は過ぎる。

連休が始まって、ささやかな開放感に浸っていたのもつかの間。 早くも休み期間は折り返し地点を過ぎ、今日あたりからは“Uターンラッシュ”のニュースさえ流れてくる始末である。 本当に年々時間の流れが速くなってくるなぁ・・・と思っていたら、今朝の新聞を…

「猿払」大法廷判決は克服されるのか。

憲法学者は概して最高裁判決の規範に対して批判的なものだが、中でも通称「猿払事件」の大法廷判決(最大判昭和49年11月6日)*1に対しては、従来から厳しい批判が向けられてきた。 公務員の政治的行為を広汎かつ包括的に制限する国家公務員法及び人事院規則…

最高裁決定の読み方

東京地裁で無罪判決が出されて以来、当ブログでもフォローしていた「(インターネット上の書き込みによる)名誉棄損被告事件」に対し、最高裁が判断を示した。 「個人利用者によるインターネット上の表現行為と、新聞や雑誌といった従来の媒体での記載とで、…

「1票の格差」訴訟をめぐる2つの流れ。

先の09年8月衆院選における「1票の格差」をめぐっては、既に大阪高裁、広島高裁と立て続けに違憲判決が出されていたところであったが*1、今回、東京高裁でも「格差」が「違憲状態にある」との判断が下されたようである*2。 地方の高裁ならともかく、東京高裁…

止まらない「国民会議」旋風

以前、本ブログでも取り上げていた*1、今年8月の衆院選をめぐる「一票の格差」訴訟の高裁(第一審)判決が早くも出た*2。 そして、そこで示された判断は何とも衝撃的なものになった。 「今年8月に行われた衆院選は国会議員1人当たりの有権者数の格差(1票の…

最高裁の叡智はどこへ?

政党ビラ配布のためにマンションに立ち入ったことが住居侵入罪にあたるかどうかが争われていた事件で、最高裁が高裁判決を維持し、被告人側の上告を棄却した。 平成19年12月の東京高裁における本件の逆転有罪判決(http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20071211…

衝撃の転向。

2007年7月の参議院選挙区の定数配分をめぐる訴訟の上告審判決が、9月30日に出された。 「1票の格差」は依然として存在するものの、以前2004年の選挙に比べれば縮小しており(5.13倍→4.86倍)、しかも「4増4減」の改正を経た直後に行われた選挙、ということも…

これからが本番。

今年8月の衆院選前に、国民審査と絡めた様々な動きを見せた「一人一票実現国民会議」。 選挙終了から1カ月経って、遂に舞台を裁判所に移した戦いが始まったようだ。 「今年8月に行われた衆院選をめぐり、国会議員1人当たりの有権者数の格差(1票の格差)が…

国民審査後の第一関門

今,巷の一部では,今回の総選挙(というか,これと同時に行われる最高裁裁判官の国民審査)の“裏争点”のような位置づけになっている「一票の格差」問題だが,朝刊の片隅に↓のような記事がひっそりと載っていた。 「議員1人当たりの有権者数の格差(1票の格…

異様な意見広告

8月24日付けの日本経済新聞の第36面に、1面を丸々使った「意見広告」が掲載されている。 題して、 「一人一票」の実現のために最高裁裁判官に対する国民審査権を行使しよう! なる広告。 本ブログではもう何度も取り上げているから、読者の方にあらためて説…

続・1960年代の香り

先週、書こうとして尻切れトンボ*1になったネタを一つ。 最近、本屋でふと気になって手に取った本が↓だ。 長沼事件 平賀書簡―35年目の証言 自衛隊違憲判決と司法の危機作者: 福島重雄,水島朝穂,大出良知出版社/メーカー: 日本評論社発売日: 2009/04/01メディ…

「1人1票実現国民会議」への疑問

以前日経紙上で升永英俊弁護士が予告していた“運動”が遂に立ち上がって、活発な活動を始めたようである。 「1人1票実現国民会議」(http://www.ippyo.org/index.html) 上記ホームページに飛んで行くと、 衆議院選挙と同時に行われる「国民審査」という制度…

56年ぶりに憲法54条2項但書、発動なるか?

今の政治家の無責任さには呆れさせられることばかりなのだが、今回の衆議院解散→総選挙に向けたスケジュールの組み方には、怒りさえ感じる。 憲法上の規定ギリギリ限界の40日間をフルに使って、議員生活最後のバカンス or 選挙運動のための時間稼ぎ(与党議…

「一票の格差」訴訟に新風?

日経の法務面で、珍しく、「一票の格差」問題という純粋憲法ネタが取り上げられているのだが、そこに登場されるのは、この種の話題にしてはもっと珍しい、あの升永英俊弁護士だ。 −とはいえ、最高裁の判断が覆るだろうか。 「簡単な方法がある。衆議院選挙時…

表現の自由を“殺す”のは誰か?

最近、雑誌社を相手取った名誉棄損訴訟で、高額の損害賠償請求が認容されるケースをよく見かけるが、そんな傾向にさすがに危機感を抱いたのか、日本雑誌協会がずいぶんと振りかぶった「見解」を発表したようである*1。 残念ながら雑誌協会のHP上には、まだ見…

案の定逆転有罪。

インターネットのホームページにラーメンチェーン店を中傷する文章を掲載したことが、名誉毀損罪にあたるかどうかが問題となった刑事事件の控訴審で、東京高裁(長岡哲次裁判長)が、地裁判決を破棄、罰金30万円の有罪判決を言い渡している*1。 以前、地裁の…

国籍法違憲判決

フィリピン人母と日本人父の間に生まれた子に、届出による日本国籍取得を認めるかどうか、が争われた事件で、最高裁大法廷が国籍法の規定を違憲(憲法14条1項違反)と判断した上で、原告らの請求を認容する判決を下した。 率直な感想を言えば、どんな理由を…

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