U-23代表に見た希望の光。

自分のような「出来た頃からJリーグ見てる」世代が、トーナメント形式で行われるサッカー五輪予選、と聞くと、どうしても反射的に思い出すのは、アトランタ五輪予選、である。

よくよく振り返ってみると、前々回のリオ五輪予選からU-23AFCの大会と兼ねる形式になっていたから、「8年前もそうだったじゃん」という話なのだが、ある程度の歳になってくると、近くの出来事より遠くの出来事の方がよく思い出せる、ということもあるわけで、なぜか感覚は28年前にタイムスリップ・・・。

あの五輪予選の前まで、サッカーの日本代表は長らく全世界規模の「国際大会(本戦)」から遠ざかっていたわけで、勝ち進んで”切符”が近づけば近づくほど、不安も高まって仕方ない・・・という感じで眺めたものだった。

あの時の準決勝、サウジアラビア戦の歓喜から数えて、五輪への連続出場は実に7大会。W杯のみならず五輪に関しても、こと男子の場合「出られないかも・・・」という不安からはだいぶ縁遠くなっていたのだが、今年初めのアジアカップで、(地元とはいえ)中東勢の高いクオリティに歯が立たなかったフル代表チームを見て、自分の中の楽観論は一瞬にして吹き飛んだ*1。しかもW杯と違って五輪では確実に保証されたアジア枠は「2」つしかない。

フル代表に引き続き、再びの中東はカタールでの開催、しかもグループリーグの最終戦で韓国相手に痛い星を落とし、決勝トーナメント初戦の相手がカタール、と決まった時には、自分の頭の中の恐怖指数もピーク値を記録していた。

だが・・・


開催国相手に苦戦必至と目されたカタール戦は、(実際苦戦はしたものの)延長戦に入ってエース・細谷真大選手の会心のゴールが飛び出して堂々の勝利*2

さらに準決勝では、ほぼ完璧な試合運びでイラクを葬り去り、年初のフル代表の仇を討つ。

そして、8大会連続出場を決めた後の決勝戦、タレント揃いのウズベキスタン相手にアディショナルタイムで貴重な1点を挙げ、その後の絶体絶命のPKすら止めて、延長戦の笛を聞くことなく堂々の優勝を飾ることになろうとは・・・。

この世代にはよくあることとはいえ、大会が進む過程で、これほどまでに選手同士の連携が深まり、才能が輝きだすのが見て取れた代表チーム、というのもなかなかない。加えて、先発選手のローテーションや戦術的交替、といったベンチワークも冴えていたし、何より、ジョエル、ケイン、レオ・・・と、多様なバックグラウンドの選手たちが実に自然に溶け込んでそれぞれの個性を発揮している姿が個人的には実に美しかった、と思っている*3

これまでのU23日本代表の歴史の中には、「トーナメント形式を勝ち抜いて出場した五輪本戦で「結果」を残せていない」という不幸なジンクスがまだ残っている。

今回は、これまで以上に本大会に近いタイミングでの出場決定とはいえ、一度ピークを迎えたチームがそのままの勢いを維持して本大会に臨むのは難しい、ということも容易に想像はつく。

ただ、カタールで新しい歴史を積み重ねたU23戦士の姿を見る限り、今度こそそのジンクスも吹き飛ばせる、と信じたいし、ここで活躍したメンバーがさらに上のカテゴリーで主役を演じられるようになったとき、日本代表が長く突き破れなかった「壁」もきっと超えられるような気がするだけに、まずは「パリ」がその通過点になることを願って、あと数か月、楽しみに待つことにしたい。

*1:かつての日本がそうだったように、自国ないし近隣有力国のプロリーグに一流選手を集められるようになれば、自ずから自国選手のレベルも上がってくるわけで、まさに中東列強国がその過程にある、と感じさせられたのが1月の屈辱まみれの大会だった。

*2:その裏では、首位でグループリーグを抜けて「組み合わせに恵まれた」と思われた韓国がインドネシア相手にまさかのPK戦敗退の憂き目にあう、という波乱もあった。

*3:世界基準で見れば当たり前の話でも、これまでの日本社会の基準では決して当たり前ではなかったことが、ようやく・・・という感じで眺めていた。

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