キャリア20年、超えてからが華。

レジェンド・武豊騎手が遂に前人未到の4500勝を達成したこの週末。

記念すべき「70周年」の節目の年ながら、競走中の大きなアクシデントが続いたこともあり、クラシックシーズンのクライマックスを前にもやもやしたムードが漂っていた中央競馬界に、良い方のビッグサプライズが到来した。

春の古馬牝馬マイル路線の国内頂上決戦、第19回ヴィクトリアマイルで、勝ったのはなんと単勝オッズ208.6倍、14番人気の6歳牝馬テンハッピーローズ

そしてこれが、鞍上の津村明秀騎手にとっては、21年目のシーズンにして遂に初のGⅠ制覇だった、ということが、場内をさらにどよめかせた。

38歳、といえば、サラリーマンの世界ではまだ若造の部類に入るが、騎手の世界では既に中堅を超えてベテランに差し掛かる世代である。
ましてや、津村騎手と同期の2004年デビュー組といえば、既に2000勝を超えている川田将雅騎手を筆頭に、吉田隼人騎手、藤岡祐介騎手と1000勝超ジョッキーが3人も並ぶまさに黄金世代。

その中で、競馬学校時代は天才として名を馳せたものの、現時点での通算勝利数では上位3名に大きく水を開けられ、重賞も勝っているのはGⅢだけ、と、比較的地味な存在に留まっていたのが津村騎手だったのだが、それがこんな形で、GⅡ戦の勝利すらないまま、ド派手な勝利を飾ってのけたのだから、人生はやっぱり面白い。

思えば、長らく「壁」として立ちはだかっていたベテラン騎手たちが一人、また一人とターフを去りゆく中、目立たなくても確実に力をつけてきたこの世代の美浦所属の騎手たちが存在感を発揮しだしたのは、ここ数年のこと。

良くて30勝程度しか勝てなかった丹内祐次騎手は、一昨年64勝を挙げ、今年も既に30勝到達。ローカル開催では欠かせない存在になっているし、障害戦を舞台に活躍する上野翔騎手は、障害戦通算40勝ながら、昨年6勝、今年は既に9勝を挙げている。

昨年20年目にして、勝利数、獲得賞金ともに自己ベストを更新した津村騎手も明らかにこの流れに乗っていて、その一つの到達点が今日の初GⅠの栄冠だった、ということになるのだろう。

逆に、栗東を舞台に早い時期から活躍していた吉田隼人騎手、藤岡祐介騎手の勝ち鞍はここ数年伸び悩んでいるし、吉田隼人騎手に至っては不幸にも先日の大きな落馬事故で一命こそ取り留めたものの長期離脱は避けられない状況だから、その辺も含めて神様の悪戯っぷりには当惑するほかないのだけれど、酸いも甘いも経験してからが人生の本番。

様々な試練を潜り抜けてきた20年選手たちに、少しでも良い運命が微笑みかけることを願って、この先のシーズンもひっそりと応援しようと思っている。

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