必然の頂上対決

先ほど、ベルギーとイングランドの3位決定戦が順当にベルギーの勝利、という結果で終わり*1、約1カ月にわたったロシアW杯も残すは決勝戦、フランス対クロアチアのカードのみ、ということになった。

グループリーグでドイツが韓国に敗れて大会を去ったことに象徴されるように、世界各地域の実力が拮抗した結果、日本を筆頭にアジア、アフリカ、北中米のチームも決して“安牌”にはならず、ささやか以上の存在感を示した。

どんなビッグネームを擁するチームでも、当のエースがコンディション不良だったり、チームとしてちょっとでも隙があれば、前評判とは無関係に消えていく、という厳しさは、第1回のW杯から88年経って、フットボールが世界の隅々まで行き渡ったという証でもある。

そして、そんな中、今大会の価値を高めているのは、大会の中で大きなインパクトを残したチームがトーナメントを順当に勝ち上がってきた、ということ。

4年に一度、世界の頂点を決める舞台では、どうしても冷酷なリアリズムが先に立つから、グループリーグ、ラウンド16で魅力的な試合をしたチームも、準々決勝、準決勝と駒を進める中で力尽きる、というパターンがこれまでは多かったし、観る側も「それがW杯だ」と半ばあきらめていたところがあったのだけど、今大会に関して言えば「もう一つ先を見たいチーム」が順当に勝ち上がってくれて*2、大きなフラストレーションを感じずに済んでいるところはある。

試合後の主力選手の発言が話題になった準決勝、フランス対ベルギーの試合にしても、言われるほどフランスが守備的だったわけではないし、最後の10数分の見苦しさを除けば、「アンチ・フットボール」とまで言われてしまうのはちょっと気の毒なくらい、フランスの試合運びが洗練されていたのも事実だから、どちらが勝ちあがっても良かった、と個人的には思っているところ。

そういう意味で、フランス対クロアチア、という決勝戦は、「攻守一体」という今大会最大のテーマをここまで実践してきたチーム同士が、それぞれ「スピード&守備の堅牢さ」と「技術&多彩な攻撃」という、それぞれが磨き上げた突出した個性を武器にぶつかり合う、という、実に見どころの多いカードだと言えるだろう。

そして、以下では、明日の試合を控え、これまでの決勝トーナメントでの戦いぶりを数字で見ながら*3、ちょっとだけ“未来予想図”を書いてみることにしたい。

フランス〜鉄壁の守備と切り替えの速さ、試合運びのしたたかさ

1回戦 対アルゼンチン 4-3
ボール支配率40%、シュート8本(うち枠内4本)/相手シュート11本(うち枠内4本)
シュート者上位:エムバペ2、グリーズマン2、パバール1 ほか
パス成功者上位:カンテ47、ウムティティ42、ヴァラン34

準々決勝 対ウルグアイ 2-0
ボール支配率59%、シュート10本(うち枠内2本)/相手シュート12本(うち枠内4本)
シュート者上位:グリーズマン2、ヴァラン2、トリソ1
パス成功者上位:パバール73、ポグパ60、エルナンデス51

準決勝 対ベルギー1-0
ボール支配率39%、シュート18本(うち枠内5本)/相手シュート9本(うち枠内3本)
シュート者上位:ジル―7、グリーズマン5、マティイディ2
パス成功者上位:パバール45、カンテ39、ヴァラン35

カバーニ選手の負傷欠場でワンサイド気味の試合になったウルグアイ戦を除けば、決勝ラウンドに入ってから専ら相手チームを「受けて」いる印象が強いのだが、それでいて、今回のフランス代表は、(シュート数では相手を圧倒したベルギー戦に象徴されるように)ひとたびボールを奪えば一瞬で決定機に持ち込める力を持っているから見ていて飽きない。

攻守の役割分担も明確で迷いがなく、特に守備能力の高いカンテ、ポグバの両選手が奪ったボールをグリーズマンが運ぶ、あるいは、一段飛ばして飛び道具のエムパベで一気に決めに行く、という必殺パターンが確立されている上に、セットプレーからも点を奪える、というのは相当な脅威。

今大会、グループリーグから一度も先制点を許していない、というのも特筆すべき事柄で、先制してからの試合運びにも心憎いばかりのしたたかさがある。

一方で、ジル―選手が未だにゴールを決められていないこと。そして、役割分担の明確さは、裏返せば流れの中での得点パターンが固定化している、ということでもあり、抑え込むターゲットを絞られやすい、というのが難点はある*4

クロアチア〜高い技術と多彩な攻撃パターン、そして魂の守り。

1回戦 対デンマーク 1-1
ボール支配率53%、シュート21本(うち枠内6本)/相手シュート15本(うち枠内3本)
シュート者上位:ペリシッチ7、ラキティッチ3、モドリッチ3 ほか
パス成功者上位:ラキティッチ70、モドリッチ67、ビダ62

準々決勝 対ロシア 2-2
ボール支配率65%、シュート17本(うち枠内3本)/相手シュート11本(うち枠内3本)
シュート者上位:クラマリッチ3、モドリッチ3、マンジュキッチ3
パス成功者上位:モドリッチ93、ロブレン81、ラキティッチ76

準決勝 対イングランド 2-1
ボール支配率54%、シュート21本(うち枠内7本)/相手シュート10本(うち枠内1本)
シュート者上位:ペリシッチ7、マンジュキッチ3、レビッチ3
パス成功者上位:ブロゾビッチ76、ラキティッチ69、モドリッチ63

数字だけ見ると、クロアチアが決勝トーナメントに入って以降の全ての試合で、ボール支配率、シュート数ともに相手チームを圧倒していることが良く分かる。
チームのスタイルとしてはフランスとは対極で、各人の高い個人技をベースに手数をかけて攻める、スペインや近年のドイツのような戦い方をするのだが、そこに“緩”を“急”に変えられるモドリッチ、というスーパースターが絡むことで、敗退したチーム達とは大きな違いを生み出すことができたのだろう。

相手に合わせてシステムも微妙に変えてくるし、攻撃パターンもマンジュキッチペリシッチ、クラマリッチといった選手たちがフレキシブルに動き回り、レビッチのドリブル突破等によりアクセントを付けるオプションもある等、実に多彩。
パスの出しどころすら、モドリッチラキティッチ、ブロゾビッチ、と、相手やコンディションによりいろいろと変えてくるから、明日の試合も、実際に始まるまでは、誰がどこで仕事をするのか、相手が捕捉するのは難しい。

一方で、内容的に圧倒しているにもかかわらず、3試合とも120分戦わないといけなくなったことからも分かるように、クロアチアの試合運びはフランスやベルギーほど洗練されたものではない。いずれの試合も、相手チームに先制点を許し、それを追いかける展開になっていたために、余計にハラハラさせられることも多かった*5

勝戦も、ひとたび相手に先制を許せば、攻めても攻めてもゴールが遠い、という蟻地獄に嵌る可能性は否定できない。
逆に、点が取れなくても膠着した状況に持ち込めば、あとはGK・スバシッチ選手を中心に、気持ちの入った激しい守備で耐え抜くこともできる。とにかく先に点をやってしまって追いかけるような展開にしないことが一番である。

                                                           なお、最後に、各メディアでは圧倒的に「フランス有利」という前評判になっているが、今大会での両チームの共通の対戦相手、アルゼンチンとの試合を基準に考えると、自分は各選手万全ならクロアチアの方が一枚上だと見ている。、

だからこそ、変なところで足元をすくわれないように、と今はただ願うのみ。
最後の最後に、最高峰の舞台での、最高峰の戦いを目撃できると信じて、それまでゆっくり鋭気を養うことにしたい。

*1:最後の最後までベルギーのカウンターは速く、鋭く、そして美しかった。アザール選手のドリブルとデブライネ選手の糸を引くようなスルーパスを決勝の舞台で見ることができなかったのがつくづく悔やまれる。

*2:日本対ベルギーに関しては、まぁ日本にも勝ち上がってほしかったところはあるが、その次の試合、よりグレードを上げた高速カウンターでブラジルを葬り去った赤い悪魔たちの姿を見たら、やっぱりあの結果で良かった、と思わずにはいられなかったところはある。尻上がりに調子を上げていたウルグアイ、コロンビアは、主力選手が万全な状態で見たかったところもあるが、仮に万全だったとしても「トップ3」に入るのは難しかっただろう、と思う。

*3:データは「スポーツナビ」で毎試合公表されているスタッツからの引用。

*4:流れの中で意表をついて得点を生み出せる選手はパバール選手くらいかな、というのがこれまで見た中での印象である。

*5:その分、ドラマティカルな試合が続き、視聴者の支持、共感を集めることになったのも、また事実なのだが・・・

夢から醒めた後に残るもの。

午前3時前からテレビにかじりつき、防戦一方の展開に「1点取られたら寝るぞ」と心に決めていたのに、後半早々、立て続けに決まったゴールに酔いしれ、ひとしきりあり得ない妄想すら抱いた後に本物の欧州サッカーのクオリティを見せつけられ、それでも体を張って守り続ける青いサムライ達を涙ながらに応援し、「こうなったら延長戦、最後の最後まで見届けるぞ」という覚悟を決めたところで襲ってきた一瞬の歓喜と深い落胆。

そのまま仕事に行き、とめどなく語りたい気持ちを抑えつつ、時々いくつかのシーンを思い返しながら余韻に浸る。
でもその日の夜くらいから、あちこちで繰り返される“称賛の嵐”にだんだん辟易するようになってセルジオ越後の辛口コメントを見てほっとした気分になったり、その一方で、数日経って始まった準々決勝の試合を眺めながら、この舞台に立ち続けていてほしい、という願いが今回も叶わなかったことに空しさを感じていたりする。

そんな日々を過ごすと、自分も普通の日本人なんだな、ということを改めて感じるわけで・・・。

もちろん、元来ひねくれ者の自分としては、あちこちで言われているような「ラウンド16のベストゲーム」という評価には、どうしても首を傾げたくなる。

ベルギーの攻撃のレベルは、フランスの速さやクロアチアの美しさ、ブラジルの狡猾さに比べると一レベル低かったし、守る側の日本にも、スペインを葬り去ったロシアのような安定感も打たれ強さはなかった。世界最高レベルのスピードと技巧がぶつかり合ったフランス×アルゼンチン戦や、最強の矛盾対決だったスペイン×ロシア戦、そして、最後の最後まで決着が見えなかったクロアチア×デンマーク戦やコロンビア×イングランド戦の方が、試合のレベルとしては遥かに高かった・・・等々。

それでも世界の観戦者がこの試合に価値を認めるのだとしたら、余計な笛がほとんど鳴らなかったクリーンさと、両極端の状況が90分、というか後半の45分間+αの間にギュッと凝縮された密度の濃さゆえだろうが、それは裏返せば、序盤から攻められ続けていたにもかかわらず、ハーフタイムを挟んで2点先行する、というこれ以上ない展開、優位性をその後の僅か40分で覆されてしまった日本代表のナイーブさが試合を魅力的なものにしてしまった、ということでもある。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

青いユニフォームを着て先発した11人、特にフィールドの10人が、今大会グループリーグからこの試合まで一貫して素晴らしかったことは疑いようもない。

吉田選手、昌子選手の両CBは、安定した守備力を発揮するにとどまらず、積極的に攻撃の起点となって中盤の負担軽減に大いに貢献。両サイドの長友選手、酒井宏樹選手は豊富な運動量で、何度となく敵陣を切り裂いたし、守勢に回ったときの戻るスピード、体の張り方ともに申し分ない安定感だった。
長谷部選手はベテランならではの味で柴崎選手の仕事の場を作ったし、原口選手の体を張ったディフェンスと献身的な上下動は、サッカーの神様から決勝トーナメントでの先制点、というプレゼントを受け取るにふさわしいだけのものだった。
前線の大迫選手へのマークは、試合を経るごとにキツイものになっていったが、それでも「ザ・ポストプレー」と言えるだけのパフォーマンスは最後まで維持されていた。

そして、中盤を構成した柴崎選手、乾選手、香川選手の働きには、陳腐な言葉では到底語りつくせないくらいの価値があった。
ベルギーを一転して地獄に追い込んだ柴崎選手のスルーパスは、彼の一世一代の偉業として語り継がれるだろうし、4試合すべてに先発して細やかな攻撃を組み立て続ける彼の存在がなければ、ラウンド16の舞台すら遠い夢のまま終わったはず。また、乾選手と香川選手の組み合わせは、「得点力不足」を長年批判されてきた日本代表が出した最良の回答だった。

だが、残念ながら、「最初の10人」が素晴らしすぎたことが、後半リードした後の試合の流れをキープする上で致命的な、選手交代の遅れを招くことになってしまった。

試合の結果だけを見れば、勝敗を分けたのは、2点のビハインドを負って窮地に追い込まれたロベルト・マルティネス監督が後半20分に切ったフェライニ選手、シャドリ選手という交代カードであり、受け身に回った日本代表が後半36分まで決定的な手を打てずに時間を浪費したことが、カードの効果を決定的なものにしてしまったことも全く否定できない事実である。

誰が監督でも、あのフィールドの10人をゲームの途中で替える、という選択をする勇気はなかなか持てなかっただろうし*1、グループリーグの最終戦で先発組とベンチ組の「格差」を嫌というほど味合わされた後では、切れるカードもあの2枚(本田選手と原口選手の交代と、山口蛍選手と柴崎選手の交代*2)くらいしか思いつかなかったはず*3

ただ「切り札」として、ベンチに久保裕也選手や中島翔哉選手がいてくれれば、せめて浅野拓磨選手くらいはいてくれれば・・・という思いも、「解任」前の時代から代表を見つめていたサポーターなら当然抱くわけで、フィールドで即興でゲームをコントロールできる“大人な選手たち”を揃えた代償が、あの「美しい敗戦」だというのは、何と言う皮肉か、と思わずにはいられない。

*1:交代で入った本田選手が、近年の代表の試合では見たことがないくらいキレキレの良いデキだっただけに、もう少し早く投入していれば、ベルギーの怒涛の反撃の流れを少しは止められたのではないか・・・という思いはあるが、あくまで結果論。フィールドに出るまでパフォーマンスの優劣を予測できないタイプの選手を投入できるような試合展開ではなかった、ということは記憶にとどめておく必要があるように思う。

*2:個人的には替えるなら長谷部選手の方ではなかったか、と思うが、あれだけ押される展開の中ではやむを得ない選択だったというほかない。

*3:結果的に、交代カードを1枚残す形で試合を終えることになってしまったが、宇佐美選手も武藤選手も世界レベルの戦いでフィールドに出すのは厳しい(岡崎選手も負傷で長い時間使うのは無理)、という現実があった以上、仮に延長戦に入ったとしてもオプションはほとんどなかった、と言わざるを得ない。自分は一点返されたシーンを見て、「真っ先にGKを替えろ」と心の中で叫んでしまったが、それはもう交代カード以前の問題だから、いずれにしてもどうしようもなかった。

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称えられるべき結果と、顧みられるべき伏線と。

日本代表のW杯グループH最終戦ポーランド戦での“負け逃げ”を見て、このモヤモヤした気分をどう表現しようか・・・と悩んでいる間に、あっという間に日は流れ、とうとうノックアウトステージ突入。しかも最初の試合からW杯の歴史を塗り替えるような壮絶なゲームを見せられた余韻に浸っていたこともあり後手後手に。

その間、世論は大いに盛り上がったが、何となく「決勝トーナメント進出、という結果を出したんだから西野監督の勝ち」、「一歩間違えたら大恥をかく状況でも肝を据えて作戦を遂行した西野監督はすごい!」といった論調で収束しつつある*1

サッカーのこの種の大会においては、グループリーグの最終戦で、同時に行われる他会場の結果を見ながら「リスクを冒さない」戦い方をすることは決して珍しいことではない。今大会でも、負けるとオーストラリアの結果次第で敗退の可能性も残っていたデンマークが、勝ち抜けが決まっていたフランス相手に繰り広げたゆるい試合などは、あくびが出るくらい退屈な試合だった*2し、遡れば日韓W杯の時にポルトガルの「和平提案」を一方的に打ち砕いた隣の国は、むしろ“ならず者”としてサッカーメディアのバッシングを浴びたくらいだ。

ただ、今回の日本代表の「最後の10分」が異質だったのは、「負けている状況」での選択だったこと。

先述した「取引」の多くは、試合が拮抗して、「双方が勝ち点1でいいや」と思った時に成立するものだし、ネットでネタとして拡散されていた修哲FCの“鳥かご”は勝ち越した後の「逃げ切り策」として繰り出されるものである。
そういった「勝者の策」を、「このまま試合が終われば勝ち点を積み増せない」という状況で遂行する、というケースは、自分は他の大会でもあまり見たことはないし、それこそが海外メディアが想像以上に厳しい論調になっている一因でもあると思われる。

西野監督自身も認めているように、他会場の展開が変われば“策に溺れる”結果となってしまう状況で策を遂行するのは、合理的なリスク管理の範疇を超えた“ギャンブル”でしかない*3

ましてや、最後の試合で、本田選手、香川選手をベンチに温存したまま敗退する、ということになればまさに大恥。

だからこそ、攻撃のカードを捨ててでも「ギャンブル」を遂行し、決勝トーナメント進出を勝ち取った西野監督の胆力が今称えられているわけだし、自分も「一大会おきのラウンド16進出」という日本サッカー界の歴史を絶やさなかった、という“結果”そのものを否定するつもりは全くないのだが・・・。

*1:元代表監督の岡田武史氏など、関係者がいち早くこの線でコメントした影響も大きかったと思われる。https://www.nikkansports.com/soccer/russia2018/news/201806300000133.html

*2:今大会中、最大の凡戦と言っても良いだろう。

*3:例えば今大会のデンマークはオーストラリアとの勝ち点差が「3」あったから、ドローで1つでも勝ち点を取れば相手の試合展開に関わらず決勝トーナメントに進むことが可能だった。そういう状況で「引き分け狙い」の緩い試合をするのはリスク管理の範疇。一方、勝ち点差が1つ、2つしかない状況で同じことをして、競り合っているチームが大差で勝ち点3を獲れば当然プランは狂う。そしてポーランド戦開始時点の日本代表の勝ち点はセネガルと全く同じ。セネガルが1点でもとれば敗退の危機を迎える状況だったのだから、そこで同点すら狙わずに試合を終わらせる、というのは、博打以外の何ものでもない。

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流れゆく時と一瞬の歓喜と。

始まってすぐの頃は、一試合一試合をダイジェストでじっくり振り返れるくらいの余裕があるのに、2カード目に入ったあたりから急に試合消化のペースが速くなったような気がして、あっという間にグループリーグ最後のカードを迎えてしまう、というのが、ワールドカップあるある、である。

そして今回も例外ではなく、日曜日の夜に歓喜に湧いたのもつかの間、いつの間にか既に5つのグループが最後のカードを終えた。

今は、過去2大会で繰り返されたのと同じ悲劇を、まさか堅実一途なドイツが味わうのか(しかも、よりによって韓国に2点差も付けられて負ける、という展開で・・・)、という衝撃からさめきれていない状況だったりするのだが、これもまた勝負の世界。
そして、明日にはビッグサプライズから始まったグループHの戦いにも一つの区切りがつく、という状況にある。

なので、もう古新聞的ネタになりつつあるが、日曜日のセネガル戦をちょっとだけ振り返ってみることにしたい。

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本命なき混戦の末に。

ファン投票では堂々の1位、当日のオッズでも1番人気に押し上げられたものの、長らく輝きを失ったままのサトノダイヤモンドでは、到底G1の舞台の主役にはなれない。

それ以外の投票上位馬が軒並み出走を回避、数少ない出走馬も近走では実績を残していないサトノクラウンやキセキ、という顔ぶれだったこともあって、今年の宝塚記念はいつになく大混戦、という予想になっていた。

牝馬代表のヴィブロス*1に乗ってみようか、とか、厩舎の勢いに乗って、藤原英昭厩舎のパフォーマプロミス&ステファノスのコンビに手を出してみようか、いろいろと頭を悩ませた結果、サトノダイヤモンドの復活に微かな期待を込めつつ、決してこのレースの主流ではない目黒記念組を狙ってみる、という賭けに出たのだが・・・。

ふたを開けてみたら、ルメール騎手のマクリ気味の追い上げ空しく散ったサトノダイヤモンドを横目に、勝ったのは伏兵・ミッキーロケット。

どちらかと言えば阪神競馬場より京都競馬場(2勝を挙げている)の方がよさそうな馬だったし、同じ音無厩舎ならダンビュライトの方が・・・ということで、どちらかと言えば人気の盲点だったのだが、後から見返すと、春の天皇賞で4着に入った実績を侮るべきではなかったなぁ・・・ということになってしまう。

そして、鞍上の和田竜二騎手が、あのテイエムオペラオー以来のG1勝利となるおまけも付いた。

自分の記憶ではついこの前のこと、のあの時代からもはや17年も経ってしまっている、ということだけで考えさせられることも多かったのだけど、同期の福永騎手が念願のダービーを制し、自らの相棒だったテイエムオペラオーが逝去した年に、こうやって歴史の扉を再びこじ開けたのだから、大したものだと思う。

なお、2着に香港馬のワーザーが入り、3着には前走とうってかわって”控えた”目黒記念2着馬・ノーブルマーズが入ったことで、馬券としては大荒れの展開だったのだけど、特にノーブルマーズの最後の直線でのしぶとさは、他のレースでも十分戦えるレベルのように見受けられただけに、後で振り返ったら「あの時、何であんなに配当が付いたんだろう・・・?」と言われるような出世を遂げることを願うのみである。

*1:今年もドバイで2着、という良績を残しているだけに・・・。

”サランスクの奇跡”と22年前のデジャブーと。

ロシアW杯、サランスクのモルドヴィア・アレーナで行われたグループHの初戦、日本対コロンビア戦で起きた歴史的なジャイアント・キリング。

4月の監督交代を支持して声援を送っていた人々はもちろん、自分も含め、"新生西野ジャパン”にシニカルな目を向けていた者にとっても、興奮せずにはいられない、衝撃的な結果だった。

前半3分、故意といえば故意だが、どちらかといえば「反射的に手が出た」という類のこの世界では決して悪質とは言えない相手選手のハンドに一発レッドが出た、という幸運。そして、万全な状態であれば、日本の守備陣を翻弄したであろう4年前の輝けるスター、ハメス・ロドリゲス選手が、前半ベンチを温めることを余儀なくされる状態だった、という重ねての幸運。

もちろん、どん底の時期の代表チームだったら、11人対10人、の戦いだったとしても、相手のFKで同点にされた時点で、ズルズルと“良くてドロー”の展開に嵌っていただろうから、後半立て直して、大迫選手の勝ち越しゴールまで持って行った雰囲気作りは、素直に称賛するほかない。

スタッツを見ても、ボール支配率60%、枠内シュート14本(相手は9本)、ほとんどすべての項目でコロンビアを上回る数値を叩き出しているのだから、この試合の結果を「ラッキー」だとか「フロック」というのは、選手たちにも監督にも失礼、というものだろう。

凄腕の外国人監督だったら、前半の時点で攻撃の選手を一枚増やして、早々と試合を決めにいったかもしれない展開の中、慎重に慎重に相手の動きを見て、相手の運動量が落ちてきたタイミングで本田圭佑選手を香川選手に代えて投入した結果が、コーナーキックからの大迫選手の決勝ゴールにつながったわけだし、最後の選手交代も大迫選手に代えて岡崎選手を突っ込む、という極めて攻撃的なスタイルのもの。最後まで守りに入ることなく、終始優位なポジションを保って戦い続けることができたのは、まさに西野監督の采配ゆえ、といっても過言ではない。

なので、ここまでの動きを冷やかに見ていた専門メディアの手のひらを返したような絶賛ぶりも、決して大げさとは言えないのだけれど・・・。

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再びやってきた蹴球熱とともに。

数日前のエントリーでも書いたように、始まるまでは何となく引き気味で見ていたロシアW杯だが、始まってみたらまぁ面白いのなんの。

この4年間の間だけでも世界中でフットボールは進化している、それは頭の中では分かっていたことだけど、実際、各グループの試合が始まってみると、どの国の代表も高いレベルのテクニックと、定石にオリジナリティを加味した独自の戦術できちんと見せ場を作ってくる。

ワンサイドゲームだった開幕戦を除けば、2日目以降は、どの試合をとってもスコア、内容ともに拮抗したものばかり。

強豪国であるウルグアイ、フランスは順調に勝ち点3を取ったが、相手のエジプト、オーストラリアにはかなり手を焼いての結果だし、アルゼンチンに至ってはアイスランドの鉄壁の守備に最後まで苦しめられて(挙句の果てにメッシのPKまで止められ)痛いドロー。

ポルトガルやスペイン、といった欧州の強豪たちが華やかなテクニックを見せてくれたのは当然想定の範囲内だったが、不運にも初戦は星を落としたエジプト、モロッコ、ペルーといったチームまで、鮮やかな個人技と組織戦術を備えていた、というのは、自分にとっては新しい発見で、次の試合以降に大きな期待を持たせてくれた。

そして、日曜の夜、この時間まで眠れていない最大の原因は、ここ数大会、グループリーグでは微動だにしなかった常勝軍団ドイツが試合巧者メキシコの前にジャイアント・キリングを食らった瞬間を目撃してしまったから・・・。

若きストライカー、ロサーノ選手が前半に貴重な1点をもぎ取った後は、早めの選手交代であっという間に自陣に「緑の壁」を築き上げ、ゴールポストの助けも借りつつ、次々と襲いかかるドイツ攻撃陣のシュートの嵐を見事に止めて見せた。

クラブチームの試合だったらブーイングを浴びるような極端な守備的戦術でも、1つの勝ち点に命を賭ける戦いの中では許容され、むしろ称賛の対象になってしまうわけで、こういう戦いを見られることにこそ、W杯の醍醐味がある。

ということで、4年に一度の寝不足な日々*1がまためぐってくることに嬉しい悲鳴を挙げつつ、日本代表以外の試合を楽しもうか・・・というのが、今の素直な感情である。

なお、ここに来てようやくNumber誌の大会プレビュー号を読むことができたのだけど、個人的には、選手のコメント、選手に向けられたコメントよりも、「監督」の立場からの、そして「監督」を評するあれやこれやのコメントに惹き付けられるところが多かった*2

自分もそんな歳、そして、そんな立場になった、ということなのだろう。きっと。

*1:まぁ、元々寝不足なので、そんなに変わらないだろう、と言われればそれまでなのだが。

*2:ドイツ×メキシコ戦を見た直後に思い浮かべたことも、「ノイアーミュラーが今何を考えているか?」という視点ではなく、「レーヴ監督はどう動くのかな?」という視点からの想像だった。

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