ソラマチの未来。

先日、開業したばかりの東京スカイツリーを見に行く機会に恵まれた。

スカイツリーを見に行った」といっても、そうでなくても混むことが分かっているこの時期に、プラチナチケットの争奪戦をしてまで高いところに登る趣味は自分にはないので、とりあえず押上まで行ってツリーを下から見上げ、“ソラマチ”の中をぷらぷら*1したくらい。

・・・で、そんな中、自分が気になったのは、“ソラマチ”のテナント構成だ。

マクドナルド、プロントから讃岐うどん盛岡冷麺・・・と、地域、ジャンルを問わない飲食店街に、国内で定番といえるファッションブランドを徹底的にかき集めた感のあるショッピングフロア。

ここはどこなんだ、と思わず突っ込みを入れたくなるような光景が広がる。

これまで“田舎鉄道”の名を欲しいままにしてきた東武鉄道にとっては願ってもない一大商機、ということで、張り切りたい気持ちは十分に理解できるし、同じ埼玉を拠点とする某私鉄系の今は亡き商業グループが、華やかなテナントを集めて一世を風靡していた記憶も、まだ幹部の頭の中には残っていたのかもしれない。

だが、そこは墨田区
銀座でも渋谷でもなければ、エアポートターミナルでもない。

本来であれば、古き良き下町文化との調和を打ち出せる立地であるにもかかわらず、一見さん的観光客向けの“舶来もの”しかショーウインドウに並べられない・・・というのは、何とも勿体ない話である。

もちろん、開業してからの半年、1年の間に効率よく収益を上げようと思うのであれば、名の通った人気ブランド店で固める方が、明らかにテナント全体の売り上げは稼げるし、一流観光スポットにふさわしい賃料を負担してもらおうと思ったら、それなりのブランドのあるテナントでないと・・・という事情もおそらくあるのだろう。

でも、開業効果はいつかは薄れる。

そして、何度も足を運びたい、と思わせるような何かがなければ、“2順目”のお客さんをつなぎとめることはできない。

奇しくも、6日付けの日経紙の地域面には、「ツリー効果」に沸く押上駅や浅草地区、はては東京タワーとの対比で、苦戦気味の地元商店街の状況が報じられているが*2、いろいろと真新しい観光スポットが登場する中で、2度、3度足を運びたい、と思わせるものがあるとすれば、それは“タワーの足元にあるもの”に他ならないわけで*3、地元を取り込めない、というのは、将来的には致命傷にもなりかねないと思う*4

ちなみに、自分がソラマチの中で一番興味を魅かれたのは、地元企業の産品(石鹸とか消しゴムとか・・・)を揃えていた5階の産業観光プラザだった。

個性的な商品を多数生みだしている墨田区の中小企業も多いだけに、目立たないフロアの一角に置いておくのは惜しいのでは・・・という気もしたのであるが、果たしてこの先、ツリーそのものの集客効果が衰えてきた時に、どういう展開になるか。

ソラマチ”がこの先五年、十年と生き残っていくために何をすべきか、テナント構成の変更をどのように進めていくか、といった点にこれから注目しつつ、、この先のソラマチの行方を、眺めていきたい、と思うところである。

*1:といっても、あちこちから押し寄せる物見遊山客の多さゆえ、のんびり買い物や飲食を楽しめるほど平和ではなかったのだが・・・。

*2:日本経済新聞2012年6月6日付け朝刊・第35面。

*3:例えば、通天閣と“新世界”の組み合わせなんかは、まさに典型的なものだろう。自分は高校の修学旅行の時にあの雰囲気に魅せられて以来、未だに大阪に行くときは2、3回に1度は通天閣に立ち寄るのが常である。また、福岡や札幌のような地方色が強いタワーはもちろん、東京タワーですら、御成門芝大門といった周囲の街の雰囲気に溶け込むことによって、その価値を高めている、と自分は思っている。

*4:浅草が賑わっているとはいえ、ツリーから浅草まではそれなりに距離があるから、そのエリアの回遊性に過度に期待するのは微妙なところだと思う

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html