「意匠法等の一部を改正する法律案」なる法案が
閣議決定されたと聞いて、
「何だ意匠法か・・・・」と思わず聞き飛ばすところだった。
見事なまでに、特実意商の全てと不競法が対象になっている(笑)。
(http://www.jpo.go.jp/torikumi/puresu/press_ishou_houreian.htm)
確か、職務発明規定の改正の際も「特許審査迅速化法案」だったし、
商法・会社法関連の改正でも、
タイトルと中身の乖離が激しい傾向にあるから、
気をつけて見なければいけないのは当然のことなのであるが、
それにしても、「意匠法」をタイトルに付けるあたり、
気付かれないうちにひっそりと改正したい、という
経産省サイドの意思の表れなのかと、うがった見方をしてみたくもなる。
さて、今回の改正は、
以前取り上げた「法改正の動き」を受けたものであるが*1、
新旧対照条文を見て一番驚いたのは、
商標法に加えられた以下の条文。
第2条
2 前項第2号の役務には、小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供が含まれるものとする。
今年の制度改正の目玉である小売業商標の導入、
審査基準の見直しだけで対応するのかと思っていたのだが、
条文で規定してくるとは・・・。
まぁ確かに、これまでの裁判例等で「役務」にあたらない、
とされていたものを「役務」とするわけだから、
今後の混乱を防ぐには条文化するのが早道とも言えるわけだが、
条文で定義する、ということは、
時に予想していなかったような解釈論の契機になる、
ということでもある。
「小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」
という定義、特に「便益の提供」というあまり“馴染みのない”言葉を
持ち込んだことが、今後の審査基準の運用解釈にどのような影響を与えるのか、
興味深いところではある*2。
なお、先日のエントリーでも触れた刑事罰の重罰化だが、
特許権、意匠権、商標権の侵害罪と、不競法の営業秘密侵害罪について、
「懲役刑の上限10年」への引き上げが図られている。
(参考:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20060228/1141099659)
ニュースに挙がった時点で予想されていたこととはいえ、
かつて処罰の対象とすることさえはばかられていた
営業秘密侵害の法定刑が、
通常横領罪、背任罪のそれをも上回る時代が来るとは*3、
平成の初め、営業秘密保護法制の導入にかかわった方々ですら、
想像もしえなかった出来事なのではないだろうか。
昨年4月に買った手持ちの法文集には、
当然ながら平成17年度改正は反映されていない。
そんな状況でさらに改正を加える早業ぶりにはつくづく感心させられるが、
「急いてはことを・・・」という諺もあるところだし、
もう少し様子を見てからでも良かったのではないか・・・
と個人的には思う。
*1:法改正の動きについては、http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20060110/1136912459参照のこと。
*2:ちなみに、意匠法の改正でも「画面デザイン」保護のために、新たな定義規定が盛り込まれている。
*3:しかも、すべてはこの2,3年の間の出来事である・・・。