泳いだのは選手だ。

だが、主役はやっぱり水着だった。


ミズノの看板、北島康介選手が、スピード社の水着で世界新


数ヶ月前には想像だにしなかった悪夢に、ミズノ社の担当者が今どんな思いで眠れぬ夜を過ごしているだろうか、と思うと胸が痛くなる。


はるか遠い昔の記憶を辿るなら、シンプルな潜水をしている時間が長い背泳や、とにかく早く泳げればいい自由形と違って、平泳ぎやバタフライといった種目はちょっとしたリズムやタイミング次第でタイムがだいぶ変わってきてしまうもので、この時期になってフォームすら変えかねないような水着に手を出すのは相当リスクが高いようにも思えるのだが、この3日間でこれだけ明白な結果を突きつけられれば、選手にしても水連にしても、悠長なことは言っていられなくなるのではないだろうか*1


日本勢が何を着用しようが、スピード社の見本市と課すのは間違いない北京五輪競泳会場。


他のスポーツ用品メーカーに戦略ミスがあったとすれば、英スピード社の水着が調査にかけられていた段階で手を回して潰せなかったこと、に尽きるだろう。


4年に一度の世界的な大行事のこと。これだけ世界中のあちこちで「大幅な世界新記録更新も夢ではない」状況が生まれてくると、たとえルールを曲げてでも主催者側はそれを使わせたいと思うだろうし、各国の協会や選手達が契約を破ってでも使いたい、と思ったとしても全く不思議ではない。


いまさら焦って新素材に手を出したところで、「技術開発は一日にして成らず」。


仮にあと数ヶ月の間に画期的な新素材を実用化できたとしても、今度は、果たしてそれがチェックをくぐりぬけて本番で使えるのか・・・という新たな不安が生まれてくる。



こうなったら、日本のスポンサー3社としては、潔く負けを認めて、契約にかかわらず選手に水着を使わせた方が後々のためにはプラスなんじゃないか、とさえ思えてくる今日この頃。


契約で縛ったところで、本番での日本勢の低迷を全て水着の責任にされて、ブランドイメージを失墜させるのは目に見えているのだから・・・、と野暮な心配もしたくなる*2


いずれにせよ、答えはもうすぐ出る。

*1:悠長なのは、フジヤマのトビウオ氏(御年79歳)のコメント(「昔はふんどしをして泳いでいたんだよ。水着のことで騒ぎすぎじゃないか。水着くらいでそんなに変わるかな」(日本経済新聞2008年6月7日付朝刊・第32面より))くらいだろう(笑)。ふんどしで世界新を出した(?)この人の偉大さは認めるし、メンタル面等、金メダルを取るために重要なものはいくらでもあるのは確かなのだが、今突きつけられている現実に対するコメントとしては、いかにも悠長すぎる。

*2:そもそも今回のような酷い話になったのは、ミズノが昨年スピード社との提携関係を打ち切ってしまったことに原因があるのも事実で、少なくともこの会社に限って言えば、水連側の契約違反を声高に非難できるような立場にはないんじゃないか、と思えてならない。

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