「排除型独占」新指針(案)

独占禁止法改正(「排除型私的独占」類型を課徴金対象とする云々)を受けて、公正取引委員会が新たな指針案を公表した。名付けて「排除型私的独占に係る独占禁止法上の指針」(http://www.jftc.go.jp/pressrelease/09.june/09061902.pdf)。


ご多分にもれず、どこで線が引かれるのかが分かりにくい指針案ではあるのだが、一応参考審決・判決等も適宜挙げられているので、これまでの(審判決への評価等をベースに積み上げられてきた)議論との整合性についても検討しやすいのではないかと思う。


以下、一応手控え的に、指針が掲げている類型を挙げておくことにしたい。

1)コスト割れ供給
<参考例>
・ゼンリン事件(平成12年3月24日警告)
2)排他的取引
<参考例>
・ノーディオン事件(平成10年9月3日勧告審決)
・ニプロ事件(平成18年6月5日審判審決)
インテル事件(平成17年4月13日勧告審決)
3)抱き合わせ
<参考例>
・日本マイクロソフト事件(平成10年12月14日勧告審決)
東芝エレベーターサービス事件(大阪高判平成5年7月30日)
4)供給拒絶・差別的取扱い
<参考例>
・ぱちんこ機製造特許プール事件(平成9年8月6日勧告審決)
東日本電信電話事件(東京高判平成21年5月29日)
5)その他
<参考例>
有線ブロードネットワークス事件(平成16年10月13日勧告審決)
東洋製罐事件(昭和47年9月18日勧告審決
・日本医療食協会事件(平成8年5月8日勧告審決)
北海道新聞社事件(平成12年2月28日同意審決)

最終的な判断としては、上記のような行為類型に該当することに加え、「当該行為が一定の取引分野における競争に与える影響がどのようなものであるか」という観点からの吟味が加えられることになるから*1、表面的な行為類型だけ捉えてペナルティを課すような愚を当局が犯すことはないだろう、と期待したいところであるが・・・。


こればっかりは、始まってみないと何とも言えないのかもしれない。

*1:なお、公取委は上記指針において「商品シェアがおおむね2分の1超、かつ、広く国民生活に影響が及ぶ事案」を優先的に審査する旨を表明しているが、シェアが2分の1を超えていなくても、特定の行為が競争を阻害していることが明らかであれば、それを制裁対象とすることを躊躇する理由は(少なくとも公取委の側には)ないはずだから、自社の製品シェアが2分の1を超えていないとしても、それは単なる“気休め”程度のエクスキューズにしかならないと思われる。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html