いつの間にか閣議決定の巻

というわけで罪滅ぼし、というわけではないが、久々に労働関係法マターで一本。


以前から注目してきた労働契約法が、ひっそりと(?)閣議決定されていたようで、厚労省のウェブサイトにも法律案要綱が掲載されている*1


本来目玉になるはずだった、解雇紛争の金銭解決や整理解雇要件の明確化といったマターが労使間の不一致によって盛り込まれていないため、実質的にはこれまでの判例法理を条文化しているだけ、という政策的には“つまらない”法案であるが、(条文化したこと自体が)ことがらとしては画期的、というのもまた事実である。


なお、議論を呼びそうなのは、就業規則の効力及びその変更法理に関する部分だが、法律案要綱によれば、

第4 労働契約の成立及び変更
1 労働契約の成立
(2)使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとすること。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、3(1)に該当する場合を除き、この限りでないものとすること。
2 労働契約の内容の変更
(3)使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとするものとすること。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、3(1)に該当する場合を除き、この限りでないものとすること。

となっているから(二度登場する3(1)とは、就業規則の最低基準効について謳った部分である)、結局は周知要件、合理性要件といったこれまでの判例をベースにした解釈論争がそのまま持ち込まれることになるのだろう。


個人的には、もう少し個別契約重視の観点を打ち出してほしかったところだが、「労働組合」という(労働者にとっての)人権抑圧団体が過剰な存在感を発揮していない分*2、まずは及第点、といったところだろうか。


仮に今国会に提出されたとしても、審議未了で廃案になるか、すったもんだの末、無意味な附帯決議が並ぶか、と到底すんなり成立しそうにはないのだが、まずは労働契約個別化(&労働者の雇用契約当事者としての地位強化)の第一歩として、本法案の早期成立を願うのみである。

*1:http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/03/h0313-5.html

*2:就業規則変更法理にしても、あくまで合理性考慮要素のひとつに挙げられているに過ぎない。

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