主役の座はまだまだ遠い。

競馬の世界では「世代間の比較」というのが、どうしてもついて回る。

クラシックシーズンにどれだけ盛り上がっても、夏を越えて秋になり迎えた古馬たちとの対戦で結果を出せなければ激闘の価値さえ割り引かれてしまう、そんなシビアな世界でこの一年割を食い続けているのが、現4歳世代。

イクイノックスに勝てなかったのは仕方ないとしても、年末の有馬記念でタイトル持ちの牡馬たちが枕を並べて討ち死にしたのはいかにも印象が悪かった。

そして、年を越した今年の春になっても、遅れてきたべラジオオペラが大阪杯を勝ったものの、クラシックのタイトルホルダーたちは苦戦続きで、天皇賞・春宝塚記念と上の世代にタイトルを持っていかれてしまう。

捲土重来、とばかりに夏を越して迎えた古馬中長距離戦線でも、毎日王冠では3歳馬のシックスペンスに出し抜かれ、京都大賞典でもシュヴァリエローズ、ディープボンドといったベテラン勢に上位を占められる・・・といった状況で、なんとも厳しい状況は続いていた。

だが、そんな中迎えた天皇賞・秋は、出てくれば人気を集めたであろう宝塚記念馬、毎日王冠馬の回避もあって、ジャパンカップ2着の実績を持つリバティアイランド牝馬路線から参戦して1番人気に推され、さらに古馬になって本格化したレーベンスティール、べラジオオペラが3番人気、4番人気。その後ろにはこの世代の皐月賞馬・ダービー馬まで控える、という贅沢な布陣で15頭中過半数の8頭が4歳馬となり、数だけ見ればようやく”主役”になったかな、という状況だったから、いよいよ汚名返上なるか、という思いで見守っていたのだが・・・。


レースを先導したのはマインドユアビスケッツ産駒の4歳馬・ホウオウビスケッツ。同世代のシルトホルン、タスティエーラ、べラジオオペラらも続き、先頭集団を形成。そして、反応よくリバティアイランドまで前に上がってきた時点で、「今度こそ4歳世代に凱歌か!」と思った人も少なくなかっただろう。

にもかかわらず・・・である。

リバティアイランドは最後の直線で伸びを欠き、後方から飛んでくるはずだったソールオリエンスやレーベンスティールも伸び悩む中、きれいに弾けた唯一の馬は、今回も「4歳世代」ではなかった・・・。

大舞台で武豊騎手と組むことで、再び次元の違う末脚が引き出されたドウデュースの優勝。

「4歳世代」にとっては、これまで不振を極めていた昨年のダービー馬・タスティエーラが先行の利を生かし、直線で馬群に飲み込まれそうになっても二の脚を使って2着に食い込んだ、ということはこの先の微かな希望となりそうだし、逃げてもなお後続のジャスティンパレスを封じ込めたホウオウビスケッツ(3着)のような馬が出てきたことも誇って差し支えないはずだ。

ただ、いかに”役者”がそれぞれの演技をしてみせたとしても、勝った馬はあくまで「5歳馬」だから名誉挽回にはまだまだ遠い。

個人的には、ここで真価発揮、と確信していたソールオリエンスにほとんど見せ場がなかったこともショックだったし、崩れる要素を感じていなかったべラジオオペラにまで裏切られてしまったことで、どうにもこうにも掴みどころがないな…とため息を付くことになってしまったのだが、それでも競馬は続く。

今年が終わる最後の瞬間まで”開花”を信じて、もう少しの間は、確率の低い馬券に賭けてみたいと思っているところである。

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