著作権はどっちに来ている?

職務著作物、ないし請負制作型著作物の著作権の帰属、といえば、実務的に悩ましいことこの上ない問題なのだが、日経紙に興味深い記事が掲載されている。

「「月はどっちに出ている」などの脚本で知られる劇作家の鄭義信(チョン・ウィシン)さんは6日、劇団「新宿梁山泊」(金守珍代表)に自らが著作権を持つ作品を無断で上演される恐れがあるとして、上演中止を求める仮処分を東京地裁に申し立てた。」(日本経済新聞2007年7月7日付朝刊・第38面)

問題になっている作品は、1993年に鄭氏が書いた「それからの夏」。


鄭氏は自らに脚本の著作権が帰属する、ということを当然の前提として、無断上演の差止めを求めているのだろうが、劇団の代表が呈しているような「作品の著作権は作家だけの権利なのか」という疑問は当然に出てくる。


新宿梁山泊」のHPを見ると、過去の演目が掲載されているのだが(http://www5a.biglobe.ne.jp/~s-ryo/past/kiseki.html)、鄭氏は1987年から1995年まで座付作家として活躍している。


鄭氏の代表作、「月はどっちに出ている」が1993年に大ブレイクしたこともあって、後に劇団を離れることになったのだろうが、それまでの鄭氏と劇団との関係を考えると、著作権が劇団に帰属する、あるいは分属する、という解釈は十分成り立ちうるわけで、このあたり、裁判所がどのような判断を下すのかは興味深いところである。


契約書が交わされるとは考えにくい世界で、「疑わしきは著作者の利益に」のテーゼに従うなら「劇作家側の勝ち」となるのかもしれないが、演劇なんて実際の舞台上で新たな脚本が作りあげられていくこともありうるわけで(言い換えれば、役者やその他のスタッフも含めた劇団全体の共同作業によって、演劇というのは出来上がっているものといえる)、劇作家一人が上演の可否をコントロールできる、という発想も、また不健全であるような気もするのだが、そのあたりは如何に・・・。

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