自分の原点

海の向こうから届いた訃報を見て、懐かしい思い出が一瞬だけ甦った。

「著書「文明の衝突」で知られる米国の政治学者、サミュエル・ハンチントン氏が24日、米マサチューセッツ州マーサズ・ビンヤードで死去したことが27日、明らかになった。同氏が58年勤めたハーバード大学が同日までに発表した。81歳だった。死因は不明。」

http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20081228AT2M2800328122008.html

大学入学後、最初に取り組んだ外国文献が、Foreign Affairs誌に掲載されて間もなかった、ハンティントン教授の「The Clash of Civilizations?」だった。


有志のサークル(というか自主ゼミ)で、“上の人”が持ってきたコピーを増し刷りして輪読、関連する情報は各自で集めて発表・・・というパターンだったか。


元々政治学やりたくて進路を決めた自分の場合はもちろん、「文●に入ってそのまま法学部に行くなんてかっこ悪い」というのが一種のムードとしてキャンパスを覆っていた時代だったから、始まった時点では自分以外にも結構参加者はいた。


だが、長閑な駒場の空気に飲まれたか、あるいは「(フランシス)フクヤマも読まずに来たのか!」「どうせ読むならちゃんと原文で読んで来い!」的な、数ヶ月前まで受験勉強だけしてればよかった我々にとっては厳しい突っ込みにめげたのか、回を追うたびに参加者は減り、秋頃の合宿に合わせて開催された最終回の発表では、OB・OG含めた名うての先輩方に取り囲まれるような状態で(2対10くらいだったか・・・(苦笑))、冷や汗をかきながら何とかやり終えた・・・というのが、おぼろげな記憶として残っている。


インターネットが普及した今では、ウェブサイトにアクセスするだけで簡単に原文を入手することができるのだが*1、今考えると、一般誌向けの論文だけあって読みやすい部類に入るものだし*2、中身の信憑性はともかく、スケールだけは大きい論文だけに、初学者が国際政治の全体像を把握するにはうってつけの教材だったのだろう。


残念ながら、筆者の学生生活自体がその後クラッシュの連続だったこともあって、せっかくの鍛えられた経験をその後積み上げて行くことは叶わなかったわけだが、それでもちょっと前まで良く出てきた「ネオコンがどうのこうの」なんて話題には、思わず反応していた自分がいたのも確か。


この程度の英語でも四苦八苦していた自分が、最初に立てた目標に向かってそのまま突き進んでいたとしても、たいしてモノにはならなかっただろうと思うのであるが、もう一つの人生を演じることができるのであれば、一度くらいはあの頃に還ってリスタートしてもいいかな・・・と思わなくはない。


The Clash Of Civilizations: And The Remaking Of World Order

The Clash Of Civilizations: And The Remaking Of World Order


なお、最初に引用した日経ネットの記事の見出しに「冷戦後予見」とあるが、どちらかというと、「ハンティントン教授が予見していた」という表現よりは、「ハンティントン教授に影響を受けた政権担当者たちが、教授のシナリオどおりに事を進めてしまった」という表現の方がふさわしいのではないだろうか、と、素人考えながら思ったりもする。


いずれにせよ、今はただ、亡き教授のご冥福をお祈りするのみである。

*1:http://www.foreignaffairs.org/19930601faessay5188/samuel-p-huntington/the-clash-of-civilizations.html

*2:最近読む英語のジャンルが変な方向に偏っているがゆえにそう思えるのかもしれないが(笑)。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html