幻の東大大学院生ランナー

箱根駅伝の復路は、早稲田大学が山下りの6区で逆転、そのままリードを最後までキープして、実に18年ぶりの総合優勝を果たした*1

有望な高校生をかき集めて、強力布陣を組んだが故の勝利、といってしまえば身も蓋もない話だ。
ただ、今年に関して言えば、佐々木(寛)選手や志方選手、といった28分台の若手ホープを欠きながらも、総合力で何とか逃げ切ったという一面もあり*2、やはり、7年かけてこの域に達した渡辺監督の手腕は称賛されて然るべきだと思われる*3

早大東洋大も3年生以下の学年が実績面で上をリードしていたチームだけに、各選手が順調に成長すれば、緊迫したトップ争いは来年のレースでも再び見られることだろう*4


ところで、今年の箱根駅伝のサイドストーリー的な関心事として、学連選抜のメンバーに選出された東京大学大学院の依田崇弘選手が出場するのかどうか、というのがあった。

東京学芸大から東大大学院、というチームとしては箱根に縁がない環境に身を置きながらも、自ら精進を重ねてフルマラソン2時間20分台の記録をマークするまでの選手に成長。そして、予選会で個人61位という好成績を収め、27歳にして、16人のメンバーに入る・・・。

都大路高校駅伝を走った2ヶ月後に東大文1に現役合格、そのまま翌年の箱根駅伝に学連選抜最年少メンバーとして出場した松本翔選手(2005年出場、8区区間10位)のような華やかさはないものの、もし出場すれば、一つの新しいスタイル、といえるようなケースだっただけに、事前の発表で10区にエントリーされているのを見た時は、ワクワクしていた。

残念ながら、今朝のエントリー変更で、予選会上位の法政大学の選手に“差し替え”されてしまったようで、「東京大学大学院」のユニフォームを着てゴールテープを切る姿を見ることはできなかったのだが、「観戦者」としてではなく、「選手」として正月の駅伝大会に臨んだ、という経験は、実に貴重なものになったことだろう。

箱根駅伝出走当時は、「官僚になる」等々、ありきたりな夢を語っていた松本翔選手も、現在は、東京電力グループ長距離・駅伝チームの現役選手として、立派に陸上を続けているようだ(http://www.team-tepco.jp/ekiden/special/runner/matsumoto.html)し、依田選手も、母校である山梨学院大付属高校に戻って教師としてスタートを切るとのこと*5。いつか指導者としてどこかで名前を拝見することがあるかもしれない、と思うと、それはそれでワクワクする話なんじゃないか、と。

*1:毎年ぼんやりとみていたせいか、「渡辺康幸監督が大学1年生の時」という前回の優勝以後も、もっと早大は優勝を重ねていたような気がしていたのだが、往路優勝だけ、とか、競っても2位、とかいうパターンが多かったのだろう。

*2:特に5区の猪俣選手と10区の中島選手が、東洋大に遅れを取りながらも縮められたタイム差を些少なレベルに抑えたのが、最終的な“貯金”につながったのは間違いない。

*3:去年、あえて三田選手を外すオーダーを組んで奮起を促す、といった“作戦”も、今年の結果につながっていたのではないかと思う。

*4:それを煽るのが、選手本人にとっても、日本の陸上界にとっても、良いことなのかどうかは別として。

*5:http://www.sannichi.co.jp/local/news/2010/12/27/2.html

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