民主党政権ができた当初は、法改正も時間の問題か、と思われていた選択的夫婦別姓制度。
しかし、政局絡みでモタモタしているうちに、そんな気運もすっかりどこかに消し飛んでしまったようなムードになっていたところで、遂にしびれを切らして声を上げた人々がいる。
「夫婦別姓を望む男女5人が「結婚に際し夫と妻のどちらかが改姓しなければならない民法の規定は、個人の尊重を定めた憲法13条や、両性の平等を定めた24条などに違反する」として、1人当たり100万円の国家賠償を求め、近く東京地裁に提訴することを決めた。訴訟関係者が6日、明らかにした。」(日本経済新聞2010年1月7日付朝刊・第34面)
別の新聞社の記事などを見ると、原告は30〜70代、事実婚カップルもいれば、通称使用で働いている方もいる、そうである*1。
立法論的解決に多くを期待できない以上、今回の動きに期待したいのはヤマヤマなのであるが・・・。
法制審議会が改正要綱をまとめて以来、長らく放置されている・・・という事実があるとは言っても、国賠訴訟となると、まずは具体的な損害発生の有無を立証できないとどうしようもないのであって、単に「精神的苦痛」云々、といったところで、なかなか裁判所を動かすのは難しいだろうと思う。
そもそも、この国には、結婚して「名字が変わる」ことに歓びを感じる人も多数いるわけだし(苦笑)、それを望まない人には“通称使用”が広く認められるようになっている、という最近の動きも踏まえると、ハードルは低くはない(というか、物凄く高い)。
個人的には、手続上戸籍姓の使用を強制される場面*2で争うか、職業柄、通称使用の自由が認められていない人々が争う*3、といった戦術の方がまだ勝算は高いと思っていて*4、そういった訴訟を通じて、「社会生活上の氏名表記」と「戸籍上の氏名表記」を完全に分離できるようにすれば、夫婦別姓論者の目的は8割方達成されるのではないか、と思っているのだけれど、それだと“甘い”と言われてしまうのだろうか・・・。