府中に吹き荒れた春の嵐

連休の最終日、予期せぬ大災厄に見舞われてしまった方々も大勢いらっしゃる中で、「嵐」などという喩えを軽々しく使うべきではないのかもしれないが・・・

少なくとも、この日、夕方に竜巻のニュース映像を見るまでの「一番衝撃を受けた出来事」は、府中の最後の直線で起きたそれ、だった。

* * *

この日のメインは、NHKマイルC
フルゲート18頭で争われたレースは、デビュー以来、マイルで3連勝中だったカレンブラックヒルが、想像以上の強さを見せつけ、堂々のぶっちぎり(3馬身半差)で優勝、鞍上の秋山真一郎騎手に16年目(55戦目)でのG1初勝利をプレゼントした*1

勝ちタイムこそ平凡だったが、スピード自慢が揃うこのレースで、それまで僅か3戦のキャリアながら終始レースをリードし、最後の直線では二の脚を使って突き放す。

無敗でこのレースを制したのは、あの“エルコンドルパサー”以来だということだし、今の古馬陣の力を考えれば、このまま安田記念から秋の短距離G1まで、総なめにしても不思議ではない。
それくらいのインパクトはある勝ちっぷりだったと思う。

・・・だが、このレースが終わったまさにその瞬間、自分の脳裏に焼き付いていたのは、残念ながら「先頭でゴールした馬の強い勝ち方」ではなかった*2

最後の直線、インコース寄りの混戦の中、後方からいい脚で追い込みをかけていたシゲルスダチが転倒、騎乗していた後藤騎手が派手に落馬し、人馬ともにピタリとも動かない、という目を覆いたくなるシーン*3

そして、審議の結果を見るまでもなく、同馬の鼻先をカットインして悲劇の引き金を引いたことは明らかだった人気馬・マウントシャスタが失格、となる事態・・・*4

録画映像も見たが、進路が目の前にいるアルフレード(2着入線)にふさがれている中で、マウントシャスタに騎乗していた岩田騎手が、一瞬の隙間を狙って並走していたマイネルロブスト側に体を寄せた・・・そして、その次の瞬間、真後ろにいたシゲルスダチが転倒・・・という状況は、何度見ても変わらない。

* * *

岩田騎手といえば、高度な騎乗技術に加え、緻密なリスク計算(?)で、普通の騎手だったらそこで勝負しないだろう、というような大胆なコース取りに挑み、大きな結果を出す・・・というのが売りのジョッキーだ。

リスクを犯して勝ちに行くがゆえに、制裁を受けることも多い*5が、ピタッとはまると実に鮮やかな勝ち方になる。

土曜日の京都の最終レースでも、マイユクールという馬を駆って、直線に向いた時点では、どう見ても隙間がなかった最内から一気に差し切る、という見事な腕を見せ、好調ぶりをアピールしていた。


でも、そんなムードも、今日の府中の直線で一気に暗転・・・。

勝った馬と肩を並べるくらいの人気を集めていたマウントシャスタは、完全に勢いをそがれて見せ場なくゴールすることになった上に、追い打ちをかけるような「失格」で、波乱演出の立役者になってしまった*6

加えて、岩田騎手が受けた制裁は、騎乗停止4日(実質2週間)。
ダービーには辛うじて間に合うことになったものの、ジェンティルドンナとのコンビで挑むはずだった牝馬二冠の夢は露と消えた*7

ラフだアンフェアだ、と、とやかく言われながらも、大レースで騎乗停止レベルの制裁までは受けたことがなかった岩田騎手だけに、今回のショッキングな失格劇を経て、持ち前の思い切りの良さに陰りが出やしないか、心配になるところであるが、そこは地方競馬界からここまで叩き上げてのしあがってきた意地で、何とか乗り切って欲しいなぁ、と思うところである。

そして、一日も早く、後藤騎手が無事レースに戻ってきてくれることを、今は願うのみ・・・。

*1:デビュー3連勝、前哨戦でNZトロフィーを制してマイルC、と聞くと、自分のようなそこそこ古い人間は、かつて1番人気を背負って惨敗したファビラスラフィン(よく考えたら、あれが第1回のNHKマイルCだった)のことをどうしても思い出してしまうわけで、その後、G1馬になったファビラス(秋華賞制覇、さらに続くJCで2着の偉業を成し遂げた。)でさえすんなりと乗り越えることはできなかった厳しいレース(距離は「マイル」だが、府中の場合、他場の千八〜二千で勝ち切れるスタミナを兼ね備えていないと、なかなか先頭でゴール板を駆け抜けるのは難しい)に、大一番での実績がない騎手と組んで・・・、となれば、今回のカレンに手を出すのは、躊躇せざるを得なかった。以上、外した言い訳。

*2:もちろん、勝った馬の強さは、後に録画した映像を繰り返し眺めているうちに嫌というほど感じさせられたが・・・。

*3:幸い、人馬ともに命にかかかわるような事態は避けられたようだが、中継で“静止画”が流れた時は、心底ひやっとした。

*4:実況中継にフジテレビスタッフ(?)の「岩田にやられた」という声が入るくらい、分かりやすい斜行だったと思う。

*5:特に園田から中央に移籍して間もないシーズンには、確か、夏場に立て続けに騎乗停止を食らって、かなり手厳しいバッシングも受けていたと記憶している。

*6:1番人気・カレンブラックヒル、3番人気・アルフレードと並んで堅く上位をキープするはずだったこの馬が消えたこともあり、3着に入ったのは15番人気のクラレント。ゆえに、ワイドでも万馬券が飛び出す大荒れの展開となった。

*7:あの酷い状況を見たら、4日でも甘い、という声はあがるかもしれないが・・・。

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