ラテンのリズムが熱すぎて・・・。

4年に一度、世界最高峰のチームが集まって、しかも、その“上澄み”のチームだけでノックアウト方式で戦うわけだから、W杯の決勝トーナメントの試合が面白いのは、ある意味当たり前、と言える。

ただ、いつもの大会であれば、1回戦8カードのうち、1つや2つは、必ず存在する「つまらん。これだったら日本が勝ちあがってた方が良かったんじゃねーか。」という試合が、この大会に関しては皆無。

日頃しのぎを削っている、ブラジル対チリ、コロンビア対ウルグアイ、という初日の南米対決が好ゲームになるのは当然予想されたことだったのだが*1、どちらかというとミスマッチな感があった翌日のオランダ対メキシコの試合も、メキシコの逃げ切り寸前だったところを、終盤に戦術変更したオランダが大元から引っくり返す、という劇的な幕切れになったし、世紀の“サプライズ対決”となり、双方が守備的な戦いに終始すると思われたコスタリカギリシャですら、お互い持ち味を出し切った美しい試合となった。

3日目の欧州勢対アフリカ勢、という対決は、大方の予想通り、地力に勝る欧州勢が順当に勝ち上がる結果になったが、ナイジェリアもアルジェリアも、GKをはじめとする守備陣が大奮闘して、決して相手に楽はさせなかった。特に、アルジェリアは延長戦の最後の最後まで、優勝候補のドイツに一泡吹かせよう、と言わんばかりの凄味を放っていた*2

唯一、“凡戦”になりかけたアルゼンチン対スイス戦ですら、メッシからディマリア、という黄金のホットラインで、劇的な決勝ゴールが演出されたし*3、文句なしに強いベルギーの前にはかなく散った米国でさえ、スピーディな展開を演出し、最後に一矢報いる意地を見せる。

全ての試合を見終わった後、「日本が運良くグループリーグを勝ちあがってなくてよかった」と思った日本人も、決して少なくはなかったことだろう*4

開幕以来、攻撃陣にとって見せ場たっぷりの展開が続いている理由はいろいろ指摘されていて、高温多湿の気象条件の中で、ディフェンス陣が90分間体力と集中力を保ちきれていない、というのが、もっともホントらしい解説なのだが、自分は、サンバのリズムが似合う“ブラジルという国の風土”こそが、日々、欧州の硬く重い空気の中でプレーしている一流選手たちに、“もう一歩前”に出るエネルギーを与えているんじゃないか、と思えてならない。


ベスト8が出そろい、本来なら、ここでその先の予想もしたいところだけど、今大会に関しては、勝ち上がったどのチームも、持ち味を最大限発揮してここまでやってきている、という感があるだけに*5、うかつな予想を残すのは、すごく失礼な気がする。

強いて言うなら、左側のブロックはブラジル対コロンビアの勝者が決勝戦に上がってくるんじゃないか、ということくらい。
右側のブロックなんて、どのチームが決勝に上がってきても(もちろんコスタリカも含め)全く驚かない。

今、残っている8か国のチーム全てが、優勝に値するチームだと思える。
その事実が、このブラジルW杯を、いつになく“祝祭化”している。


この2日ほどは、テレビを付ければサッカー、という日々をここ2週間ほど過ごしてきた観戦者にとっても、ちょうど良い休養だった。

たとえ同じ空気は吸えなくても、テレビを通じて全試合、超ワールドクラスの雰囲気を体感できる今、という時代の素晴らしさを毎日感じながら、残り少なくなったデスマッチを、もう少しだけ堪能したいと思っている。

*1:ただブラジル対チリ戦がPK戦にまでもつれ込んで、しかも最後の最後までハラハラドキドキ・・・という展開になったのは、いくら何でも出来過ぎだった。あれで、決勝トーナメントの“ムード”が出来上がったような気がする。

*2:単に防戦一方ではなく、スリマニ、フェグリといった攻撃陣の選手たちが一瞬の隙を突いてドイツ陣内に駆け上がるカウンターは、今大会のチーム中随一の切れ味だった。ドイツのGKがノイアーでなかったら、1発、2発ズドンと決められて万事休す、になっていても不思議ではなかった。

*3:そもそも、アルゼンチンがあれだけ豊富な攻撃陣のタレントを揃えているのに、“つまらない試合”になりかけたのは、スイスがそれだけパーフェクトなディフェンスと、時折見せる速攻で、相手をほぼ完全に封じ込めていたがゆえである。

*4:今の日本代表が真の力を発揮すれば、決勝トーナメントに行けるくらいの“強さ”は示すことができるだろうが、真夜中に、テレビの前の視聴者さえもわくわくさせてくれるような“面白さ”はなかなか出せないだろうし、仮に出せたとしても、必死で応援する我々日本人が、その“面白さ”をリアルタイムで感じることはできないと思うので。

*5:唯一例外を挙げれば、今一つ不完全燃焼感が残ったまま、ここまで来てしまったブラジルくらいだろうか。この“停滞”が、残り3試合の爆発につながるのか、それとも持ち味を出し切れないまま、このまま散ってしまうのか、神のみぞ知る。

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