華は消え、本当の勝負だけが残った。

決勝トーナメント1回戦は、派手な攻撃の応酬に、ゴールキーパーの再三の美技、と、「個」の輝きがいつになく際立っていたブラジルW杯だったが、準々決勝に入って、さすがに「優勝まであと何歩かの潰しあい」の色が一気に濃くなってきた。

そして、4試合終わってみれば、今大会で躍進を遂げた新興勢力はすべて姿を消し、ブラジル、ドイツ、オランダ、アルゼンチン、と、W杯の優勝あるいは決勝戦の舞台に立った経験のある国ばかりがきっちり勝ち残っている。

4試合のうち3試合は、W杯の舞台での経験が豊富な国が、前半の早い時間帯に先制ゴールを挙げ、そのまま影を踏ませることなく、残りの時間帯で、相手の良さを消すことに全力を注いで逃げ切る、というトーナメントのお手本のような戦い。

ブラジル、ドイツがあまりに堅い試合をし過ぎたせいか、さすがに準々決勝2日目になると、ドイツと同じような展開で逃げ切ろうとしたアルゼンチンが、後半残り30分くらいで、ルカクメルテンスの2枚投入で一気に流れを掴みに行った闘将ウィルモッツ率いるベルギーの前に、あわや、の場面を何度か作られるシーンもあったし*1、最後のオランダ対コスタリカ戦では、オランダがコスタリカの粘りの前にPK戦にまで持ち込まれる、という苦戦を強いられた*2。大会のそこまでの流れに一切乗らずに、ハラハラドキドキな試合を演出するあたりはいかにもオランダらしかった。

それでも、結局残ったのは、伝統ある4チームだった、というのは紛れもない事実である。

“短期決戦”とはいえ、決して短くない戦いの中で、傷を負った選手たちは多く、特にブラジルにとってはネイマール選手、アルゼンチンにとってもディマリア選手が、残りの試合を棒に振るリスクを正面から負うことになってしまった。

フィールドに立つことはできても、高温多湿の中で、3試合+2試合戦って、体力的に限界に達しつつある選手も決して少なくないはずで、そうなると、準々決勝で垣間見られたような守備的な香りが、準決勝ではより強くなることだろう。

特に、文字通り“華”となる選手が消えてしまい、チアゴ・シウバ主将まで累積警告で出場できないブラジルなどは、次の試合でドイツの層の厚い攻撃陣を迎え撃つに際し、“専守防衛”に徹するしか生き残る途がないのではないか、とさえ思えてくる*3

しかし、そのことによって、一見、華やかなサッカーの魅力が消えたとしても、「ここまで来たら勝つしかない」という意地と意地のぶつかり合いが、4年に一度の本気勝負でしか見られない何かを、観戦する我々に届けてくれるような気がしてならない。


ブラジル対アルゼンチン、という南米の地の大会で約束されていたかのような歴史的対決で終わるのか。それとも、その予定調和に、生まれ変わった欧州勢が一石を投じるのか。

あと1週間、見る方も真剣勝負で、残り4試合を見届けることにしたい。

*1:とはいえ、結果的には、弱い弱い、と言われていたアルゼンチンDF陣が、スイス戦に続いて2試合連続完封の結果を残したのは大したもの。相手をオフサイドの罠に沈める冷静なライン制御とか、相手のちょっとしたミスを見逃さない一枚上のテクニックなど、見るべきものは多かった。

*2:残念ながら、最後のこの試合を見る前に体力が尽き果てたため、ダイジェストしか見ていないのだが・・・。

*3:その上で、カウンター一発か、PK合戦での会場を包む空気に後押しされることに賭けるしかないようにも思える。

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