奇跡のCS突破と胸をよぎる複雑な感情。

“まさか”の出来事は、概して期待していない時に起きるものだが、それにしてもこんな展開になるとは・・・という結末で終わった、今年のセ・リーグクライマックスシリーズ

打の2枚看板、マートン、ゴメスに、投のメッセンジャー、呉昇恒、と優良外国人が揃い、“日本人代表”たる鳥谷選手も例年以上の好調ぶりでチームを牽引して、「今年はもしかして」と思わせる瞬間もあった我らがタイガースだが、例年同様、ペナントレースの長丁場を乗り切れるだけの底力はなく、9月の声を聞き始めた頃から急速に勢いを失っていた*1

巨人と広島の間の激しい優勝争いからは完全に蚊帳の外に置かれ、背後には猛追したDeNAベイスターズも迫ってくる、という状況の中で、今年のペナントレースも終わったなぁ、という思いに一瞬ならず駆られたものだった。

ところが、退任確実と思われていた和田監督が“続投”する、という報道が流れたあたりから、徐々にペースを取り戻し、最後の最後で、力尽きたカープを捉えて2位に滑り込む。

そして、地元甲子園で迎えたクライマックスシリーズ第1ステージでは、この2年の間、ほとんど仕事らしい仕事をしていなかった*2元メジャーリーガーの一発で、広島のエース・マエケンを葬り去り、第2戦でも、「1点もやらなければ勝ち上がれる」という上位チームのアドバンテージをフルに生かす形で、能見‐呉‐福原のパーフェクトリレーが炸裂*3

さらに、続く第2ステージでは、勢いに乗った投手陣に、復調した打線ががっちりと噛み合い、エース離脱の穴を埋められず打線も湿りっ放しだった巨人を4連勝で蹴散らしてしまった*4

「タイガースが9年ぶりの日本シリーズ進出」という結末がもたらした多くのため息。
四半世紀以上も虎党を貫いている身からしても、シーズン中、巨人をあと一歩まで追いつめていたカープのファンや、“史上最弱”と言われながら堂々のリーグ3連覇を果たし、多くの人が日本シリーズで応援できることを信じて疑っていなかったはずのジャイアンツのファンのことを考えると、実に気の毒なことだと思わざるを得ない。


最大の贔屓チームがこのシステムとあまりに相性が悪かったせいでもあるが*5、自分は、ペナントレースの長丁場が終わった後に、その結果を事実上リセットして日本シリーズ出場チームを決める、今のプロ野球のシステムが嫌いで仕方なかった。

今回、新システム導入後初めて、贔屓チームがその恩恵を受けたわけだが、それでも、やっぱり、「これはいいシステムだ」とは到底言えないし、一度ペナントレースが終わった状況から“ゾンビ”のように這い上がってきた縦縞のユニフォームを、全力で応援するのは気が引ける、という心情である*6

自分が一番熱狂していた時代のプロ野球、というのは、シーズン開幕から半年以上かけて一試合一試合白星を積み重ね、最後の最後1ゲーム分あるかどうか、というところで勝ち残ったチームが日本一をかけて争う・・・そんな世界だった。

もちろん、シーズンによっては、夏場くらいから早々と決着がついて、長い消化試合の日々を眺めるようなこともあったのだが、「最後に勝率で上回ったチームがリーグ優勝、かつ、日本シリーズ出場決定」という舞台設定でなかったら、「10・19」があんなに美しく哀しいドラマになることはなかっただろうし、涙の幕切れだった「92・10・10」の印象も、だいぶ違ったものになったはず。

そんな古き良き時代のプロ野球は、つい最近まで残っていたはずなのに・・・。


野球だってプロである以上“ビジネス”だから、興行面を考慮して、あえて最後にどんでん返しが起こりうる仕掛けを設けておく方がよい、という発想は、頭では理解できるのだけれど、「9年ぶり」と聞いても全くときめかない、このしらけきった気分をいざ味わってみると、何とも言えない感情が湧いてくる。

いずれ、日本シリーズが始まってしまえば、それまでのことは全部忘れて、一戦一戦の勝ち負けに一喜一憂する感情が戻ってくるのかもしれないけど、今は、そんな瞬間が一週間後に訪れることを信じられない自分がいるのである。

*1:甲子園で巨人相手に3連敗し、前のカードから泥沼の6連敗・・・なんてこともあった。

*2:むしろ、今季の序盤で西岡選手を病院送りにして大幅な戦力ダウンをもたらすなど、ロクなもんではなかった

*3:特に、今季イニング限定で使われてきたオ・スンファン選手が3イニングをがっちり押さえきったことには、脱帽せざるをえなかった。

*4:終戦では、今季不振をかこっていた元・日本人メジャーリーガーコンビが揃って一発を放つなど、出来過ぎ、と言っても差し支えないような試合になってしまった・・・。

*5:3位で出場すると、あっさりと2位チームに打ち砕かれ、逆に2位で出場しても、3位チームの“下剋上”でひっくり返される、といった状況が続いていた・・・。

*6:いろいろとバタバタしていたせいもあるが、このような心情もあって、今年のCSシリーズは一試合も中継をまともに見ていない。

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