「100年」の節目に呼び起される記憶

例年なら、週末に何となくテレビのチャンネルを合わせてぼんやり眺めるくらいで、気が付くと優勝校が決まっている、という感じだったのだが、今年は清宮選手の大フィーバーが気になったこともあり、いつになく予選の頃から、「夏の高校野球」を注目して見ている。

今年は、京都二中が優勝を遂げた第1回大会からちょうど100年の節目で、主催者側もいろいろと宣伝に力が入っていたはずだが、大会が進むにつれ、そんな周囲の思惑さえちっぽけに見えてしまうほどの素晴らしい展開。

普通の年なら、「いい選手だったんだけど・・・」と惜しまれつつ、序盤で大会を去る役者も多いのだが、今年に関しては、

早実があれよあれよの快進撃でまさかのベスト4*1、しかも、清宮選手が期待に違わず、PL時代の桑田選手以来の「1年生でホームラン2本」という結果を残す(しかも試合の流れに大きく影響する場面で、いい当たりが出る)。
・超高校級の2枚看板(小笠原慎之介投手、吉田凌投手)を擁する東海大相模が、準々決勝で花咲徳栄高校に苦しめられながらもサヨナラ勝ちを収め、結果的には順当に勝ち上がる。
・同じく大会屈指の好投手、佐藤世那選手を擁する仙台育英が、東北勢同士のサバイバルマッチを潜り抜けベスト4入り。
・さらに初戦からオコエ瑠偉選手がド派手な活躍を見せていた関東一高も、そのオコエ選手の9回決勝2ラン、という荒業でベスト4に・・・。

と、マンガでもベタすぎて書けないような展開で、準決勝の舞台に注目を浴びていた役者たちがずらっと顔を揃えることになった。

もちろん、早期に敗退したチームの中にも、ベスト4の舞台にふさわしい選手はいたはずだし、勝ち残ったチームも注目されていたスター選手ばかりが活躍していた、というわけではない*2

だけど、「個」の力を「チーム力」「指揮官の采配力」が凌駕しがちな夏の大会*3で、これだけ脚光を浴びるにふさわしい「個」の才能が勝ち残った、というのは、やはり記憶に留められるべきだろうと思う。


準決勝が終わってみれば、残ったのは好投手を擁する仙台育英東海大相模の2校。

個人的には、仙台育英の決勝進出と聞くと、大越基投手が奮闘していた1989年の決勝戦を思い出すし、実際、決勝に行くのはそれ以来(26年ぶり)、ということなのだが、アイルトン・セナですら既に“歴史上の人物”になっていた時代に生まれてきた若きエースにしてみれば、そんな古い話は知ったことではないだろう。

あの時、あと一歩まで迫りながら白河の関を超えられなかった優勝旗は、いつの間にか上空を通過して、遥か北の地に既に運ばれてしまってもいる。

だけど、26年前と同様、決して有利ではない力関係*4の中で、悲願達成に向けて勝負を挑む、という形になるだけに、26年前の試合に(なぜか)涙したものとしては、いろいろなことを考えずにはいられない。

そして、だからこそ、決勝戦ワンサイドゲームにならず、大会屈指の“役者”たちが、晴れ舞台で最後まで全力を尽くせるように・・・と、願ってやまないのである。

*1:Number誌でも指摘されていたように、西東京大会で都立高相手に苦戦を強いられていたチームが、まさかここまで健闘するなんて・・・というのが正直なところである。

*2:特に早実に関しては、清宮選手以上に、“脇役”に回された3年生たちの活躍が素晴らしかった。4番を打つ加藤選手の打席での雰囲気は、“脇役”にしてしまうのが申し訳ないくらい立派なものに感じられたし、高い出塁率を誇った1,2番コンピ、準々決勝でホームランを2本放った富田選手、そして、“弱体”と言う前評判を覆すかのように、大会に入ってから好投を続けた松本皓投手などなど・・・。

*3:暑さの中を予選から長丁場で戦ってきているために、どんなに才能に秀でた選手でもベストパフォーマンスを発揮しづらい、という状況があることに加え、最後のシーズンで、注目されている選手であればあるほど研究されマークがきつくなる、ということもあって、「個」だけではなかなか・・・という傾向はあったと思っている。

*4:かたや、東海大相模高校は、ここ2試合、「2番手」の吉田投手が先発しており、エース・小笠原投手は余裕をもって決勝戦のマウンドに上がれるはず。これに対し、仙台育英は佐藤投手が準々決勝、準決勝の連続完投を含め、今大会で既に3試合完投しており、先発投手の体力面では相模の方が余裕はありそうである。

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