苦難の末に破られた「10秒」の壁。

福井運動公園陸上競技場で行われた日本学生陸上競技対校選手権大会の男子100mで、桐生祥秀選手が、遂に、遂に10秒の壁を破った。
追い風1.8メートル、というコンディションの中、刻まれた「9秒98」という記録。

これまで日本を代表するスプリンターたちが何度となく挑んで、跳ね返されてきた壁。そして、桐生選手自身、洛南高校時代の4年前に出した10秒01、という記録ゆえ、大学に進学してからの4年間、向き合うことを余儀なくされた壁でもあった。

リオ五輪で予選落ちの憂き目にあい「僕はもう速い選手じゃない」というコメントを吐き出した1年前*1、そして、シーズン当初から注目を浴びながらも、日本選手権でまさかの4位となり、個人種目での世界陸上出場を逃した今年・・・*2

そんな蹉跌を経て、学生生活最後の大一番で大記録を叩き出した、というのが、あまりにドラマ過ぎて、何とも言えない気持ちになる。

「10秒の壁」については、心理的な影響もかなり大きい、と言われていたし、今回、歴史が塗り替えられたことで、東京五輪の頃までには、一気に9秒8くらいまで記録が縮まる可能性もある。

桐生選手の影に隠れてしまったものの、今回のインカレの決勝でも、2着に入った多田修平選手が、10秒07、という再びの好タイムを叩き出しているわけで(http://www.iuau.jp/ev2017/86ic/rel188.html)、国内の競技会でもこれだけ高いレベルで競り合えるような時代になってくれば、次々と9秒台スプリンターが出てくるのも時間の問題だと思うのだけれど、やはり、「最初の壁」を超えた者の名と、そこに至るまでのドラマは、長く語り続けられるべきだと思うのである。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html