アラビアン・スプリンター

週末、ほぼ床に臥していた状況にもかかわらず、日曜日の午後3時くらいになると何か無理やりスイッチが入ってラジオをオンにし、メインレースの発走時刻を見計らってテレビの画面に目を移す・・・。

「一生に一度」の触れ込みのW杯は見逃すのに、「毎年毎週」のGⅠレースは決して見逃さない・・・。

昨日今日罹患した感染症など到底及ぶはずもない、これをリアルな「病気」といわずに何というか・・・と自分で突っ込みを入れたくなるような病理現象なのだが、そんなわけで、今日から始まった秋のGⅠシリーズ。第一弾・スプリンターズSも見届けた。

これで、朝、意識朦朧とする中、ネット投票で軸馬指名買いした鞍上・武豊騎手のファンタジストが先頭でゴール板を駆け抜けてくれていたら、まさに「ケガの功名」*1になるはずだったのだが、2番手追走、直線さぁこれから、というところからズルズルと沈んでいく姿・・・(結果は最下位16着)。

「運は週明けにとっておけ」という神様のお告げなのだと信じたい。


で、勝った馬は?といえば、青い勝負服、「世界のゴドルフィン」が所有するタワーオブロンドン

函館スプリントステークス(3着)からキーンランドカップ(2着)、さらに中1週でセントウルS(優勝)という、その前に重賞を3勝していた実力馬とは思えないようなローテーションでこの大一番に挑んできたこと(馬体重もここ数戦、レースのたびに減る傾向にあった)、そして、なんといっても、依然として「前が止まらない」中山高速馬場で追い込み脚質のこの馬が届くのか、という懸念もあって、人気ではダノンスマッシュの後塵を拝する状況。

だが、そこはさすが世界のルメール

予想通り、ハイペースで逃げ残りを図るモズスーパーフレアが作り出した流れの前に、レッツゴードンキをはじめとする「追い込み勝負」勢が軒並み足を余して討ち死にしたのをしり目に*2、器用にポジションを上げながら最後の切れ味はちゃんと残す、という絶妙な騎乗を見せ、この馬に初のGⅠタイトルをプレゼントした。

思えば、スプリントGⅠを完全制覇したのもゴドルフィン所有のファインニードル。

同馬の場合、父が日本人に馴染み深いアドマイヤムーンだったこともあってか、香港の国際レースでは今一つ結果を出せないまま引退の憂き目を見ることになってしまったが、タワーオブロンドンは、父がRaven's Passという英国馬、それもクイーンエリザベス2世SからBCクラシックまで制した世界の名馬、ということで、陣営もいろいろと先を見越しているのではなかろうか。

そして、オーナ―の意向等もあって、今は異常なまでにノーザンファーム生産馬の層が分厚くなっているマイル~中距離戦線ではなく、手薄になりがちなスプリント戦線に狙いを定めてきた、というところにアラブの人々の賢さ、したたかさを感じる、とまで言ってしまうと言い過ぎだろうか・・・?


ちなみに、これが人間の世界だと、どんなに才能ある選手を揃えても、スプリンターの世界は層が厚すぎてなかなか世界の頂点には届かない。

そうでなくても季節外れな時期に開催されている上に、「一生に一度」をはじめ、いろんなスポーツイベントが重なってしまっているために、開幕しても気の毒なくらい注目が集まっていないドーハの世界陸上*3で、日本から送り込んだ「9秒台」の選手3名が揃って準決勝に進出、という本当は凄い話も、決勝に進めずに敗退、となってしまった時点で関心は薄れ、凄さが理解されないまま終わってしまう。

一方で、決して層が薄い、とまではいわないものの、100m、200mに比べると、選手層が薄くなる中距離の方に目を移すと、活躍しているのがカタールとかバーレーン帰化選手だったりもするわけで・・・。

競技するのはあくまで選手なので、ここで「日本のスポーツ界ももっと戦略的になれ」などというつもりはないのだが、どれだけ壁にぶち当たっても「陸上の華・男子100m」に挑み続ける日本陸上界と、どれだけ跳ね返されても、決して適距離、適コースとは言えない凱旋門賞に挑み続ける日本競馬界の姿が瞬間的にラップしてしまったような気もして、いろいろ考えさせられるエピソードではあった。

*1:直前までいろんな情報を取り込みつつ迷って判断した時は大抵クリーンには当たらず、ある程度割り切って、前日か当日の朝くらいに、未発表の馬体重はもちろんオッズすらろくろく見ないで買った時の方が想定外に的中する、ということはままある。

*2:「前が止まらない」といっても、55秒台のペースで飛ばせば、ファンタジストはじめ普通の先行勢もまた皆崩れるわけで、3着以降は先行勢、追い込み勢の痛み分け、といった感になったのだが・・・。

*3:真夜中にマラソンとか競歩をさせられる選手はもっと気の毒なのだが・・・。開催できる時期にしても、ずらしてもこれか!と突っ込みを入れたくなる気候にしても、IOCカタールで五輪を開催したがらなかった理由はよく分かる気がする。

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