故郷から掴んだ五輪の切符

平昌五輪代表の座を賭けたカーリング女子日本代表決定戦は、昨年の世界選手権で事実上五輪切符を掴んだロコ・ソラーレ北見が、3勝1敗で夢の切符を掴む、という実に美しい結末となった。

カーリング女子の平昌五輪日本代表はLS北見に決まった。中部電力との代表決定戦第4戦に9―5と快勝、対戦成績を3勝1敗として、五輪切符を獲得した。2006年トリノ五輪、10年バンクーバー五輪に出場した本橋麻里が、地元の北海道北見市常呂町に戻って、このクラブチームを立ち上げたのは10年夏のこと。創設8シーズン目にして、ついに五輪の舞台に到達した。」(日本経済新聞Web 2017年9月10日)*1

今回の会場は、LS北見にとっては完全ホームのアドヴィックス常呂カーリングホールで、これまでの代表決定戦同様、相対的に実績のあるチームが絶対的に有利な仕掛け*2
とはいえ、今のLS北見のスキップは五輪に縁が薄い藤澤五月選手、しかも相手は古巣の中部電力、ということもあって、1勝1敗になったときはヒヤリ・・・。NHKサイトでの速報(http://www.nhk.or.jp/curling/)で、日曜朝の試合の勝利を知って、ようやく胸をなでおろすことができた。

ソルトレイクシティ五輪に、常呂町出身者で結成された「シムソンズ」が出場したのは、もう15年も前のこと。
それ以来、女子カーリング界の中心には、林(船山)弓枝、小野寺(小笠原)歩という2大カリスマ選手をはじめ、常に「常呂町出身」の肩書を持つ選手たちの姿があった。

ただ、所属チームとしては、「チーム青森」だったり、「北海道銀行フォルティウス」だったり・・・。
オホーツクに面する小さな町で「代表」レベルの競技活動を維持するのがいかに大変か、ということは、容易に想像がついたところではあったのだが、「中学生でも強い!」常呂町出身のプレイヤーたちが、故郷から離れた別々のチームで戦い続ける姿を見て、切なさを感じたこともある。

バンクーバー五輪後に、チーム青森の人気選手だった本橋麻里選手が、地元で「ロコ・ソラーレ」というチームを立ち上げる、というニュースを耳にしたときも、名を挙げたプロ野球選手が地元の独立リーグで細々と競技生活を続けるようなものかなぁ・・・という感想しか抱けなかった(もう7年も前の話だが)。

それが、とうとうここに来て五輪代表の座に就く、というのだから、この思いをなんと形容したらよいものか・・・。

本橋選手が牽引して、結成初年度から全日本3位に入り、その後もしぶとく優勝争いに絡み続ける存在感を示したのはさすがだったし、ソチ五輪後にフォルティウスから吉田知那美選手が加入、さらに2015年に藤澤五月選手が加入したことで、名実ともに日本のトップチームになっていたから決して意外な結果ではないのだが、「シムソンズ」以来の常呂町の夢が叶った、というところに言葉にできない何かを感じたのは、自分だけではないだろうと思っている。

そして、五輪そのものに逆風が吹き付けている状況に加え、微妙な開催地と、東京五輪の直前という時期が相まって、あまり関心を集められそうもない来年の冬季五輪でも、カーリングだけはビッグサプライズで日本を湧かせてくれる、と自分は信じてやまないのである。

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*1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO20963070Q7A910C1000000/?dg=1

*2:中電を応援する人から見れば、直近の全日本チャンピオン、かつ前回五輪代表決定時には全日本4連覇中(にもかかわらず、地の利で五輪を逃した)だったチームが、またしてもこんな形で・・・という思いはあるんじゃないかと思うけど。

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