贅沢な二重奏。

ここにきて、何でもかんでも「平成最後の」というフレーズが付くことに少々辟易している今日この頃ではあるのだが、やはり「天皇賞」となると、それを意識せずにはいられない。

オグリキャップが台頭し、大競馬ブームの幕が開いてから、紆余曲折を経て30年。
「平成」という時代は、自分自身の「競馬史」ともストレートに重なる時代だけに、実況を聞きながら、平成元年=イナリワンからの歴史を思い浮かべて振り返るだけでも、非常に感慨深かった。

で、肝心のレースの方といえば、最近すっかり定着してしまった有力馬の「長距離レース回避」傾向に今年も全く歯止めがかからず、出走馬はわずか13頭。
キタサンブラックのようなスターホースがいるわけではなく、年明けに復活してドラマを期待されていたシャケトラは無念の調教中骨折(安楽死)。
さらに追い打ちをかけるように、過去2年と同様、今年も香港の春の国際G1シリーズと日程がかち合ってしまったことで、時代を象徴する武豊騎手まで不参戦、という状況となり、戦前はどのメディアを見回してもネガティブなトーンの報道の方が目立っていた。

予想に関しても、ここ数年、阪神大賞典の上位組と大阪杯から転戦してきた有力馬を組み合わせておけば鉄板、という傾向だったのが、今年はシャケトラがいなくなり、阪神大賞典組は2着だった条件馬上がりのカフジプリンスを筆頭に、どうにも本命には推しづらい馬ばかり*1大阪杯組に至っては誰も参戦しない、という状況で、上位人気になっていたのがAJCCから直行したキャリア5戦のフィエールマンや、最近さっぱり馬券に絡めない日経賞組のエタリオウ、といったあたりだったから、データ党にとっては当惑するしかない状況。

ただ、こういう時には、まっさらな気持ちで予想を立て、まっさらな気持ちでレースを眺めると、意外と面白く、馬券の結果も含めておいしい思いも味わえる、というのが、競馬の不思議なところで、終わってみれば、苦し紛れに組み合わせた別路線組(AJCCから直行のフィエールマンと、日経新春杯から直行のグローリーヴェイズ)、かつ春の天皇賞には縁がなかったはずのディープインパクト産駒2頭が、ゴール前で長距離戦とは思えないような別次元の伸びを見せ、激しくたたき合う、という望外の結果になってくれた。

そして、最後にフィエールマンがクビ差の攻防を制した結果、父・ディープインパクトと、鞍上のルメール騎手が、平成の最後で、これまで手に入れていなかった旧八大競走のラスト1ピースを奪ってコンプリートする、というドラマが生まれたのである。

レースそのものの魅力も、勝利の価値も、その後に香港で行われたクイーンエリザベス2世カップの方が上だった、ということは認めざるを得ないし、そこで、今日日本で主役を張るはずだった「ステイゴールド産駒」*2のウインブライトが、松岡正海騎手を鞍上に乗せたままレコードタイムで快勝した、というのは何とも皮肉なのだが、決して評価が高いとは言えない日本のメインレースの勝ち馬も、今日のレースぶりを見れば、スタミナ&切れ味ともに相当の大物感を漂わせていることは間違いない*3

これで、「連対率100%」という底を見せていない戦績を保ったまま夏のステップレースをクリアできるようなら、今度こそ「凱旋門賞」も見えてくるし、万が一そんな事態になった時は、この、平成最後の2つのG1レースでのSS系古馬の〝共演”は、実に豪華な二重奏だった、と後から振り返られることになるだろう。

画面越しとはいえ、両方のレースをこの目で見た者としては、それがただの妄想ではなく、正夢となることを信じてやまないのである。

*1:それでも自分は意地でカフジプリンスを馬券に絡めようとしたものの、今思えば無駄なデータノイズだったかもしれない・・・。

*2:勝てないまでも軸には絡めると思っていた何といってもエタリオウが4着に敗れた、というのは、血統重視派の方には衝撃が大きかったはず。その代わりにパフォーマプロミスが3着に入ったのはさすが、であるが。

*3:あれだけ自在に動けて、かつ軽い馬場とはいえ3200mでも全くバテずに競りかけてきた馬を抑え込めるのだから、タフな欧州のレースでも十分通用しそうな気配は秘めている。

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