忘れてはいけなかった異次元の強さ。

まだ最後の山となる2カ月が残っているとはいえ、先週まででもうお腹いっぱい・・・といっても過言ではないくらい、何十年かに一度の出来事が満載だったのが今年の中央競馬界。

何といっても「無観客」で半年以上施行された、というのが、後にも先にもそうないだろう、という話なわけだし、そんな最中に、3歳戦では牝馬も牡馬も三冠馬が誕生。しかも無敗。

2週続けて淀で続いた歓喜の瞬間を、それも大差でも僅差でも記憶に残るハイレベルな勝利を眺めたことで、自分の頭の中からは「それまで」の競馬界の勢力図がすっかり抜け落ちていたのかもしれない。

それが、今日、「3週目」の天皇賞・秋、府中の最後の直線の映像を見た時に頭をよぎった思いだった。


前2週と同様に、1番人気は1倍台(1.4倍)の一本かぶりで、登録馬も優勝賞金1億5000万円の大レースにしては少なすぎる僅か12頭。

今週も、多くの人々の関心は、「どの馬が勝つか?」ではなく、過去2年、競馬界を圧倒し続けたアーモンドアイが史上初の「芝GⅠ8勝目」を達成できるかどうか? という一つの話題に集中していたことは明らかだったのだが、レースが近付けば近づくほど、先週、先々週の「無敗」馬たちの圧倒的な存在感に比べると、今年に入ってからも既に手痛い一敗を食らっている彼女にそこまでの期待を賭けるのが果たして合理的な予想といえるのかどうか、過去2週、期待通りのフィナーレになったからと言って、「3度目」があると考えるのはさすがに虫が良すぎないか・・・?というひねくれた思いばかりが頭をよぎるようになり、結果、自分の選択は、「アーモンドアイ外し」

特に、自分の中では、彼女が回避した今年の宝塚記念のレースのインパクトが非常に強く、今日はあの時ほど馬場が荒れていない、という状況を差し引いても既に力関係ではあのレースを制したクロノジェネシスの方が上 & 臨戦過程と鞍上の力量を考慮すればそれに続いて当時2着だったキセキが突っ込んできても不思議ではない、という予想がすっと浮かんできたし、人気は落としていたものの、上がりの競馬になればフィエールマンも侮れない、ということで、アーモンドアイを外しても1~3着に入ってくる馬はちゃんといるじゃないか、という思いもあった。

だから、ちょうどブエナビスタが人気を裏切って敗北(4着)した2011年のレース再び、というイメージで、”波乱”の見出しを思い浮かべながらレースを眺めていたのだが・・・。

後方に控えていたクロノジェネシスが最後の直線で追い出した時の脚は期待を裏切らない鮮やかなもので、見る見るうちにポジションを上げ先頭に迫った姿を見て、自分は一瞬予想が現実になる夢をみた。

だが、終始前に付けていたアーモンドアイは、さほど派手なアクションを起こすこともなく、クロノジェネシスよりはるかに有利なポジションからジワリと前に進出する。

元々、このレースを引っ張っていたのは、押し出されて先頭に立った形のダノンプレミアムだから、むやみに飛ばすこともなく、1000m通過も60秒5だからいつになくスロー。

そんな流れで3,4番手ですんなり先行できたのだから、アーモンドアイはどう見ても余力十分。後方から追い込んできたクロノジェネシスの必死の追い込みは届かず、さらにその後ろから突っ込んできたフィエールマンがいかに最速の上がりを繰り出したところで到底及ぶものではなかった。

最後は半馬身差まで詰め寄られたものの、当のアーモンドアイはヴィクトリアマイルの完勝劇を再現するような”余裕”のレース運びで、仮に距離が1ハロン、2ハロン延びてもおそらく追いつかれなかったんじゃないか、という雰囲気を醸し出したままあっさりとゴール。結果的には、「格が違う」の一言で片づけられてしまうようなレースとなってしまったのである。

おそらくこれが今年の年明けくらいに行われたレースだったら、いや、今年の安田記念を敗北した直後だったとしても、「アーモンドアイが絡む馬券を一切買わない」という愚かな選択はしなかっただろうけど、今日に限っては、1年前、2年前に感じた彼女の「異次元の強さ」への畏敬が頭の中からすっぽり抜け落ちていたような気がして、何とも悔いが残る結果だった。


なお、このレースで「記録更新」を果たしたことによって、陣営が次に目指すのはジャパンカップ一本、ということになりそうで、おそらくは日本馬同士の争いになるから、ここでもさらにタイトルを積み増す可能性は十分にあるように思われる。

問題は、ジャパンカップが最終出走レースになるのか、それとも有馬記念に登録して昨年の借りを返しに行くのか、といった「次の次」の話で、そこまで彼女が力と調子を維持し続けることができるのか?という不安と合わせてまだまだ様々なかく乱要素があり得るのも確かなのだけど、今日のレースを見てしまったら、この先は逆に「切るに切れない」状況になってしまうのだろうな、と。

ちなみに、今年の古馬GⅠだが、

フェブラリーステークス モズアスコット 牡6
高松宮記念 モズスーパーフレア 牝5
大阪杯 ラッキーライラック 牝5
天皇賞(春) フィエールマン 牡5
ヴィクトリアマイル アーモンドアイ 牝5
安田記念 グランアレグリア 牝4
宝塚記念  クロノジェネシス 牝4
スプリンターズステークス グランアレグリア 牝4
天皇賞(秋)  アーモンドアイ 牝5

ということで、全9戦中、2戦を除いて全て牝馬が勝つ、という極めて異例の展開になっている。

この先も、残された5戦のうち1つは牝馬限定戦だし、ジャパンカップ有馬記念はアーモンドアイ、クロノジェネシスが、マイルCSはグランアレグリアが、ということになれば、ダートのチャンピオンズカップくらいしか牡馬の付け入る隙はないのでは・・・?という気もしてくるのだが、3歳勢も合流してくることで流れが変わるのかどうか。

異例尽くしの1年の最後がどう締まるのか、という点も含めて、胸を高ぶらせつつもう少し眺めていくことにしたい。

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