「牝馬こそ最強」時代の黄昏。

2年続けて阪神競馬場での開催となった第38回マイルチャンピオンシップ

それなりの豪華なメンバーが揃ってはいたが、主役がグランアレグリアただ1頭になる、ということは最初から分かっていた。

何といっても昨年はマイル、スプリント路線でGⅠ3勝を挙げ、文句なしに最優秀短距離馬のタイトルを獲得。
アーモンドアイ、クロノジェネシス、ラッキーライラックと並んで「牝馬こそ最強」時代の一角を支えた馬である。

今年も大阪杯天皇賞(秋)と距離の壁を越えた戦いに挑み、跳ね返されはしたものの、得意のマイル路線ではGⅠタイトルを1つ上乗せして、いよいよこれが現役ラストラン、とくれば、注目を浴びないはずがない。

個人的には、中距離路線にまで色気を出していた分、今年のグランアレグリアには”死角”もあるのではないかな、と思っていたところもあり、特に成長盛りの3歳牡馬・シュネルマイスターの今の充実ぶりを考えると、安田記念での半馬身差は(斤量が当時とは逆転していることを考慮しても)ひっくり返されても不思議ではないな、と思っていたところはある*1

さすがに”単”で順番をひっくり返す勇気はなかったし、三頭の組み合わせの中から完全に外す、という選択もしづらかったものの、先頭はシュネルマイスター、追い込んだグランアレグリアは一歩届かず、そしてその後に、このレースには滅法強い古豪・インディチャンプ、あるいはこの舞台でGⅠ勝ちのあるグレナディアガーズが残る。あわよくばアレグリアの一歩先へ・・・ リアリストに徹すれば、そういう予想が妥当なところではないかと思ったのだが・・・。

現実は、想像以上に「マイルの女王」に優しかった。

決して早くはないペースながら、前に行った馬は思いのほか踏ん張れず、外から回す”王道”ルートを走らせてきたルメール騎手が引き出したグランアレグリアの鬼脚になすすべもなく敗れ去っていった。

唯一追撃を試みたのは予想通りシュネルマイスターで、安田記念に続いて再びコンビを組んだ横山武史騎手も、前回以上の手ごたえを感じていたと思うが、追い出した時点での位置関係がアレグリアとほぼ変わらない、となると、さすがに勝ち目はない。

結果、上がり32秒7のグランアレグリアが優勝、32秒9のシュネルマイスターが2着、そして粘り込みを図った先行勢の中では切れ味が一枚上手だったダノンザキッドがインディチャンプをハナ差交わして3着、とGⅠタイトルホルダーたちが順当に上位を占める幕切れとなったのである・・・*2

勝ったグランアレグリアは、このレース連覇を飾り、これでGⅠ・6勝目。
獲得賞金額でもクロノジェネシスを逆転して、現役最高賞金獲得馬、となったところで引退を迎えることになる。

名伯楽・藤沢和雄調教師が育てた最後の大物が、こういう形できれいにターフの引き際を飾ることができた、ということは、予想の当たりはずれを超えてめでたいことだと思うし、後味の悪さを微塵も感じさせなかったレースぶりと合わせて、あっぱれというほかない。

ただ、去年とはうって変わって、「順当」な牡馬・牝馬のバランスになりつつある今年の競馬界で気を吐いてきたこの馬の引退は、(まもなく予定されているクロノジェネシスの引退と合わせて)ここ数年続いていた「牝馬の時代」の終幕も意味するわけで、そこにちょっとした寂しさはある。

フェブラリーステークス カフェファラオ 牡4
高松宮記念 ダノンスマッシュ 牡6
大阪杯 レイパパレ 牝4
天皇賞(春) ワールドプレミア 牡5
ヴィクトリアマイル グランアレグリア 牝5 ※牝馬限定
安田記念 ダノンキングリー 牡5
宝塚記念  クロノジェネシス 牝5
スプリンターズステークス ピクシーナイト 牡3
天皇賞(秋)  エフフォーリア 牡3
エリザベス女王杯 アカイイト 牝4 ※牝馬限定
マイルCS グランアレグリア 牝5
ジャパンC ?
チャンピオンズC ?
有馬記念 ?

まだレイパパレがいるじゃないか、とか、休養中のデアリングタクトが戻ってきたら、とか、はたまた新星に期待を・・・等々、新たなスターが時代を引き継ぐ可能性はゼロではないのだけれど、今はリアリストに徹して、終わりゆく時代をもう少しだけ堪能したいと思っている。

*1:ピクシーナイト、エフフォーリアと3歳牡馬陣が秋の古馬混合GⅠで思いのほか力強さを見せていることもその背景にはあった。

*2:馬券的には、最後のハナ差が逆の結果だったら・・・というところはあったのだが、それは言っても詮なきこと・・・。

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