もう止まることのない世界の中で、試されるここからの1か月。

今週、半ばくらいから「緊急事態宣言解除」という話が一気に出始め、そして東京都も含めて解除、という話が決まった。

ここ数か月、新型コロナ関連の雑多な話題は、日々の感染者判明者数とエリアに関する情報を除いては、新聞に出てくる最低限の情報くらいしか見ていないし、最近ではそれを超えてわざわざ見に行くほどの興味もゆとりもない。

そもそも、新型コロナなんて、もうかれこれ一年以上も断続的に続いている話なわけだから、自分の日常も一連の制約に合わせて既に最適化されている。少なくとも日々自分が必要としている店が開いていて、必要なものが手に入る環境があれば、宣言が出ていようが何ら困ることはない。

だから、解除でも延長でもどっちでもいいじゃん、と思いながら日々の新聞紙面を眺めていたのだが・・・


政策的な判断として、今、対策を緩めるのが正しいか、と言えば、明らかに間違っているというほかないと自分は思っている。

他の先進国でワクチンの接種が進んで、「最後の波」が去ったんじゃないか、と思えるような今の状況を考えると、日本でも「次の波」を呼ばないことが何よりも大事なことになるわけで、解除して早々に再度の宣言が出された4月の時も、「これを最後の波にする」という覚悟は(少なくとも出した側には)あるんじゃないかと期待していた。

ゆっくりとしたペースながらも、GWを超えて宣言の効果は発揮され、足元の数字は落ち着きを見せ始めている。さらに平行して、欧米に比べたら遅れていたワクチン接種も開始され、かなりのスピードで追いつきつつある。

おそらく、あと1か月宣言を継続して、その間に希望者全員が少なくとも1回、高リスク者が2回筋肉注射を打ってしまえば、解除のタイミングで「次の波はもう来ない」と自信を持って言うこともできただろう。

だが、宣言はそれを待たずして解除される・・・。


この手の宣言が「期限」を決めて打たれるものである以上、終わりが近付けば延長するか、それとも予定どおり切り上げるか、の判断は必ずしなければいけないし、仮に為政者側でもう少し続けたい、と思っていたとしても、確か前回の宣言時も1年前の宣言時もそうだったように、この手の「制限」は期間が長くなればなるほど民はダレる。

今回もここ1,2週間は、身近なところで「あれ、もう宣言解除されたんだっけ?」って思うくらい堂々と「酒飲めます」と看板掲げて営業している店があちこちに出てくるようになっていて、道すがら”飲み会の後の人だかり”に遭遇することも多かったから、為政者側の「権威」を保とうとすれば、「解除」という体を取らざるを得なかったのだろう。

ただ、いかに「まん延防止」モードで継続する、と言ったところで、”制限が緩まった”という事実は人間の行動を決して合理的とはいえない方に動かしてしまうわけで、既に首都圏では、感染者数が「下げ止まり」というか「反転上昇」に近い状況になっている中で、宣言解除したらどうなるか、ということは火を見るよりも明らか。

今くらいの感染状況なら、東京で五輪を開催することに何ら支障はないし、ある程度人数を制限すれば有観客で行うことも決して不合理な話ではない。現に多くのスポーツイベントが有観客で行われていることとの比較でも、観客を入れない方がかえって違和感がある。

でも、このタイミングで宣言を解除してしまえば、7月の半ばくらいには再び赤信号が点灯する。そしてその先に待っているのは、「想定外の無観客」であり、急遽唱えられ始める「オリンピックはお家で見よう」キャンペーンであることは容易に想像がつく。

以前もコメントしたとおり、自分は「オリンピック」くらいの規模のイベントになると、媒体を通して見ないと楽しめないと思っているし*1、在宅スタイルが定着した今こそ「お家で・・・」が効を奏するとも思っているのだが*2、それを周到な準備の下で行うか、それとも行き当たりばったりな施策の末そうなっただけか、によっても話は随分違ってくるわけで、今の状況ではどうやっても後者にならざるを得ないだろうな、というのがちょっと残念なところ。

1年以上経っても変化がもたらした効用を直視せず、いつまでも「元に戻す」ことに固執している人々が世の中の大勢を占めているのだとすれば、五輪の迷走もそんな国の有様を如実に示すものとして正当化されるのかもしれないが、その一方で、変化に対応してポジティブに世の中を動かしている人々も日本にはたくさんいますよ、ということを世界にアピールできないのはいささかもどかしい気もして、試されるここからの1か月、随所で少しでも柔軟な対応力が示せることを今は願うばかりである。

*1:それは自分が以前実際に五輪会場に行ったときに感じたことでもある。

*2:観客を入れないと組織委員会の収入源が・・・という声もあるが、「中止」カードをちらつかせつつ、組織委が独自にインターネット上で会場の映像を有料配信する権利を奪い取るとか、それが無理ならYou Tubeでの在宅観戦者が増えて視聴率が上がったという理屈で国内メディア各社から追加でフィーを取り立てるとか、最後の手段として「チケットの払戻しをしないように懇請する」and /or 「クラウドファンディングで金集める」等々、本気で知恵を絞ればできることはあるんじゃないか、と思っている。

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