新人騎手の快進撃が止まらない。

春の長いGⅠシリーズは一区切りつき、クラス再編成に新馬戦スタート、と、すっかり穏やかな”夏競馬”ムードになっている中央競馬

だが、GⅠの連戦は終わっても、依然として続いているのが新人ジョッキー・今村聖奈騎手の「週」の連勝記録である。

5月の新潟開催で勝ちまくって最多勝タイ*1の実績を残した後は、中京競馬場に、そして今週からは三場開催の真ん中、阪神競馬場に拠点を移し、土曜日こそ最高着順2着にとどまったものの、日曜日は川田、松山、岩田望来といったリーディング上位騎手たちが揃う中、6R、7Rを連勝で飾って世界新7週連続勝利

「女性騎手」として先輩たちと比較されていたのは、JRA新人女性騎手年間最多の10勝目を挙げた時くらいまでで、それ以降は勝ってもそこまで大きなニュースにはなっていないのだが、それがまた彼女の「騎手」としての価値の高さを証明しているような気がする。

新人騎手のリーディング争いでは鮮烈なデビューを飾った角田大河騎手をも大きく引き離す独走状態。

デビューから3カ月ちょっとで既に16勝、というのも相当に凄いペースなのだが、それ以上に光るのが「9.5%」という彼女の勝率。

この数字は、同じくらいの勝ち星で並ぶ先輩騎手と比べると断トツに高く、リーディングトップ10入りを伺う(37勝)の鮫島克駿騎手(9.0%)や、菅原明良騎手(34勝、8.3%)と比べても高い。

ローカル競馬場を拠点に勝ち星を稼ぐ若手騎手たちが、猛烈な騎乗回数をこなして勝ち星を伸ばしていることを考えると、デビューしてから日が浅く、しかも最初の頃はそこまで騎乗馬の数にも恵まれていなかった今村騎手がリーディング37位、というポジションで奮闘している状況は正に奇跡といっても良いくらいである。

ある程度人気のある先行馬に彼女が乗れば、かなりの確率で上位に食い込む。その結果、騎乗を重ねるごとに「彼女が乗るから人気が上がる」という”今村オッズ”状態まで生み出しているのだから、もはや一新人の域を超えているとさえ言えるのかもしれない。もちろん、大幅な減量特典の恩恵を受けているのは事実だとしても、あれだけ落ち着いて馬を先行させ、きっちり追い出すことができるのであれば、負担重量が多少重くなったところで優位性が失われることはないような気もする。

おそらく、彼女が「女性騎手」として再びスポットが当たる日が来るとしたら、それは当時は前人未到とさえ思われた藤田騎手の「43勝」に勝利数が迫った時、そしてそれを追い越す時くらいだろうが、よほどのアクシデントがない限り、それもそう遠くないうちに訪れるだろうと思ってしまうのは自分だけだろうか。

いずれにしても、中央競馬で「新人女性騎手トリオ」が話題になってから四半世紀、こんな日が来るとは・・・という感慨に浸るには格好のスター候補生を、今我々はリアルに目撃しているわけで、それを幸福と言わずに何といおう。

願わくば、「女性」の天井とラベリングは夏競馬のうちに取っ払い、秋には一新人、一若手騎手として、重賞、GⅠの大舞台で勝ち負けを争えるようなところまで成長を遂げて欲しいものだな、というのが今のストレートな願望だったりもするのだが、まずは目の前の一つ一つのレースで日々進化する姿を見せ、勝ち星を積み上げてくれることが第一。

そして、今年のシーズンが終わる頃、「その先」にどんな景色が見えたのか、本人の口から語られる機会があればよいな、と思う次第である。

*1:2着回数の差で開催リーディングこそ逃したものの堂々の8勝である。

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