2016年9月16日のメモ

パラリンピックもいよいよ終盤、ということで、連日メダルの報が日本にも届いてくる。
“金メダル確実”といった下馬評も流れていた選手たちが、銀、銅に留まっていたり、ゴールボール車椅子バスケのように上位進出が期待されていた団体競技で壁に阻まれたり、と、思惑どおりに行かないのは健常者スポーツの世界と何ら変わるところはないのだが、「東京」の4年前、というタイミングでプレーヤーも観る側も、“あと一歩”の悔しい経験をしたことが、様々な意味での「底上げ」につながることを期待して。

プラットフォーマー企業」の取引実態についての報告書

昨日から日経紙で報道され始めた「『プラットフォーマー企業』の取引実態についての報告書」。

経産省のサイトを見てもそれらしきものが見当たらないので、何でだろう?と思っていたのだが、よく見ると、「第四次産業革命に向けた横断的制度研究会 報告書」(http://www.meti.go.jp/press/2016/09/20160915001/20160915001-3.pdf)というのがそれらしい*1

非常に大きなボリュームを割いて書かれているのが、アプリ決済に関する問題について。

スマートフォン上でアプリストアを運営する事業者は、自らのアプリストアをアプリ提供事業者に利用させる条件として、自らが提供する決済方式以外の方式による決済を制限するとともに、自らが提供する決済方式を利用した場合には、収入の30%程度の手数料を徴収している場合がある。具体的には、アプリストア上でアプリを購入する場合や、アプリストアからダウンロードしたアプリの内部でデータ等を購入する場合には、アプリストア事業者の提供する決済方式を利用しなければならないこととしている。また、リアルの市場で販売している商品に記載されたシリアルナンバーをアプリ内で入力することでデータ等を入手する形式も禁じられている場合があり、この場合には、単なる決済手段の拘束にとどまらない販売促進活動(商品とアプリとのコラボレーション等)も事実上制限されている。」
「なお、研究会において、決済手段の拘束については、「電子商店街等の消費者向けeコマースにおける取引実態に関する調査報告書」(平成 18 年 公正取引委員会)における記載との類似性を指摘する意見があった。すなわち、同報告書では、合理的理由なく、電子商店街への出店事業者が直接クレジットカード会社との間で決済を行うことを禁止し、電子商店街の運営事業者がクレジットカード会社との決済を行う方法を義務付け、その結果、直接決済を行う際の手数料率を上回る手数料率を設定することにより出店事業者に不当な不利益を課す場合には、優越的地位の濫用として独占禁止法上の問題につながるおそれがある旨が指摘されているところ、決済手段を拘束することで事業者に不当な不利益を与えている点では同じではないかとの意見があった。他方で、アプリストア事業者が課す手数料率について合理的と考えている事業者も存在するなかで、当該手数料率が不当な不利益に該当するのかは検討を要するとの意見もあった。」(報告書9頁)

書かれていることは、だいぶ前から公に言われていることばかりで新鮮味はないし、現在の状況が「優越的地位の濫用」に該当するかどうかについても、ストレートに見解が示されているわけではない。
それは他の論点についても同様で、最終的な結論も、

これらの取引実態が独占禁止法等の法令違反に当たるかは、詳細かつ精緻な検討が必要であり、一概に結論付けることはできない。例えば、アプリストア事業者が設けている審査基準について、露骨な性的表現のあるコンテンツや、賭博等の法令に違反するコンテンツを禁止すること自体は、アプリストア事業者として当然の配慮であるし、この規定を運用して個別の事案に対して適切に対処していくためには、ある程度抽象的な規定としておかざるを得ないとも考えられる。他方、研究会での議論では、決済手段の拘束や、不透明な返金処理については、優越的な地位の濫用等にあたり得るという指摘があった。」(11〜12頁)

と、どっちつかずな感じになってしまっている。

いろんな立場の方々が入って議論して、玉虫色の報告書を作ろうとすればそうならざるを得ないのは分かるのだが、プラットフォームの寡占化が続いている現状では、どう見ても優越的地位の・・・だろう、という実態は既に存在しているわけで、コンテンツ産業を所管する役所が主催する研究会なら、それくらいのことは書いてほしかったな、と思うところ*2

なお、今日の日経のコラムでは、

公取委経産省守秘義務契約に阻まれ、プラットフォーマーの取引先から情報を引き出すのに四苦八苦した」(日本経済新聞2016年9月16日付朝刊・第2面)

として、独禁法40条調査の活用云々にも言及されているのだが、行政のオフィシャルな調査への対応で、「民・民の契約の守秘義務があるから回答(協力)したいけど回答できない」ということになってしまうカルチャーは少なくとも自分の周りにはない(笑)ので、眉唾だなぁ、と思いながら読んでいた*3

「相変わらず横暴だなぁ、できれば付き合いたくない会社だなぁ」と思っていても、取引することでそれなりのメリットを手に入れられるのであれば我慢して付き合う、というのは良くある話なわけで、産業育成的視点から切り込むにしても、競争政策の観点から切り込むにしても、そういったビジネスの世界の機微を汲み取っていかないと、ピント外れな方向に向かっていく懸念はあるような気がしている。

欧州委、著作権制度見直し提案

これも日経紙の記事からなのだが、これまでの欧州界隈での議論状況からすれば、

「新聞などの発行元に対し、ニュース記事を掲載したネット企業に使用料を請求できる権利を新たに認めるのが柱」日本経済新聞2016年9月16日付朝刊・第7面)

という記事はかなり胡散臭いので、ここはちょっと原文に当たってみることにしたい。

民進党代表選

結局、蓮舫氏の圧勝で決着、ということで何よりであった。
少なくともコアな旧民主党支持者の中に、ネトウヨに同調して「二重国籍」云々を問題視するような人々はいなかった、ということだと思うし、その判断は間違っていないと思う。

あとは、未だに耳慣れない「民進党」という名前を、良い意味でも悪い意味でも注目度の高い代表の言動で、世の中にどこまで浸透させられるか、だろう。
個人的には、さっさと“民主党”に戻してもらった方が分かりやすいと思うんだけど・・・。

*1:タイトルがあまりにバカバカしい感じだったので、スルーしてしまっていたのだが・・・。最近の経産省系のプロジェクトには、こういうネーミングが目立つ・・・。

*2:もっとも、永久に今の寡占状況が続くとも思えない中で、まさに今この瞬間だけを捉えてプラットフォーマーに制裁を課すことにどれだけの意味があるのか?という問題は別途考慮されなければならない。

*3:もちろん「守秘義務」を口実に面倒な調査への対応を断ることはよくある(笑)。

2016年9月13日のメモ

何となく余裕があった夏の時期に深く考えずに入れてしまった予定が、自分の首を絞める状況になっていたりもする今日この頃。
あれもしたい、これもしたい、と数え上げればきりがないが、何よりも一番はぐっすり寝たい。

民事執行実務を大きく変える可能性がある法改正の動き

ここのところ、毎年のように法制審議会で基本法の大きな改正が議論されている、という印象があるが、今年も法制審議会に民事執行法に関する部会が設置される見通しとなっている。
そして、今日の日経紙の1面トップに、今後の議論の方向の一つを示す記事が掲載された。

法務省は、プライバシーに配慮しつつ債務者が口座を持っている可能性のある大手銀行や地方銀行に対し、裁判所が情報開示を養成する制度を検討する。」(日本経済新聞2016年9月13日付朝刊・第1面)

最近の例に違わず、今回の民事執行法改正についても、既に学者、弁護士らによる「民事執行手続に関する研究会」で先行して議論されており、おそらく実質的にはそこでの議論が、法制審部会での議論の下敷きになるのではないかと予想される*1。そして、新聞記事となった「債務者の預金口座」の取扱いについては、

「以上のような状況の変化を指摘することによって,今般,第三者からの情報取得制度を創設する必要性を説明する考え方があり得る。」(22頁)

と、慎重な言い回しながらも、引き続き検討する可能性は否定されていない。

前記報告書では、情報取得制度を導入することに伴う問題点も多数指摘されており、果たして導入されるのか、導入されるとしてどこまで使い勝手の良い制度になるのか、という点については何とも言えない状況なのだが、もし、預金口座情報に関する情報を裁判所が容易に入手することができるような法改正がなされた場合、これまで特定の困難さゆえに「債務名義は取ったけど・・・」と躊躇しがちだった民事執行手続に足を踏み出す債権者も増えると思われるだけに、ここからの1年、2年の議論が注目されるところである*2

来年の「解禁日」も6月1日。

ここ数年、二転三転してきた経団連ルールの「採用面接解禁日」が6月1日、ということで正式に決まったのこと。

これで、真夏の就活を余儀なくされた昨年のような事態は避けられたものの、“学期のど真ん中”にスケジュールが入れられることに変わりはない。
そして、「6月」を解禁日にした時点で、“海外組は別枠”というポリシーがほぼ明確になっているにもかかわらず、なぜ、春休みを有効活用できるようなスケジュールに戻せないのか、今年の状況を見るに「遅くとも6月1日には内定」というテクニックに走る大企業は益々増加するのではないか、といった疑問は当然出てくる。

自分は、こういう時にルールを破って抜け駆けする会社は、入社後の社員に対しても「ルール破り」な扱いをする危険性を秘めていると思っているし、痩せ我慢でも6月1日までは動かない、というポリシーを貫く会社の方が、後々得をすることもある(社員も会社も)、と信じているクチではあるが、これから就職活動に入っていく方々は、そういった点も考慮の上、“さっさと終わらせて日常に戻る”精神で、長丁場の就職活動を乗り切ってほしい、と願うばかりである。

テスラ「自動運転」のターニングポイント

自動運転モード中に死亡事故発生、というニュースが報じられて以降、常に議論の遡上に挙げられてきたテスラモーターズが、とうとう「自動運転モード」のソフト刷新=「高速運転時の手放し運転の制限強化」に踏み切ることになった。

新しい技術には比較的寛容、と思われてきた米国の会社ですら、こういう状況に追い込まれることになってしまった、ということに事態の深刻さを感じるべきなのか、それとも、まだ「自動運転」という壮大な実験そのものが中止に追い込まれたわけではない、というところに光明を見出すべきなのか。

個人的には、「自動運転モードはもともと人間の運転より安全だ。」というイーロン・マスク氏のコメント*3に共感するところが多いのだけど、世界の先頭を切って走ってきた会社のこの足踏みが追い風になる日本企業もあると思われるだけに、なかなか複雑な気分である。

迫りくるテニス界地殻変動のとき

錦織圭選手が惜しくもベスト4で敗退したテニス全米オープン男子シングルスは、結局、錦織選手を破ったワウリンカ選手*4が無敵のジョコビッチ選手まで倒して四大大会3度目の優勝を遂げることになった。

準決勝の錦織対ワウリンカ戦を見た時は、「どっちが勝ってもジョコビッチ選手まで倒すのは難しいよな・・・」と思っていたし、それゆえ錦織選手が敗退してもそんなに惜しい感はなかったのだが、決勝がこの結果になると、やはりいろいろと考えさせられてしまう。

長年トップの地位をキープしてきた選手たちが、シーズン中ずっとは完全な力を発揮できなくなってきている、という状況もある中で、来年こそは錦織選手が悲願の四大大会のタイトルを取ることができるのか、それとも、そこまでたどり着くまでに後ろから追撃してきた若手選手に刺されてしまうのか。

この先のことを考えると何とも言えないところはあるが、今はちょうど脂の乗り切った感じの錦織選手が、日々満足いくような結果を残し続けてくれることを心の底から願っている。

*1:研究会報告書はhttp://www.kinzai.or.jp/uploads/civilexecution_20160617.pdf

*2:もっとも法制審議会が答申した法改正がなかなか成就していない、という現実もあるだけに、仮に議論がまとまっても、改正法案が提出され、可決成立するのはいつの日になることやら・・・という懸念も残っている。

*3:日本経済新聞2016年9月12日付夕刊・第3面。

*4:一部メディアではバブリンカ、とも言われているのだが、名前のスペルが“Wawrinka”なのだから、少なくとも日本人は「ワウリンカ」と呼べば良いのではないかと思う。

2016年9月10日のメモ

五輪の余韻も醒めかけた頃に、リオでパラリンピックが開幕した。

「4年後」を意識してのことか、今回は、これまでに比べて各メディアでのパラリンピックの取り上げ方がだいぶ変わってきているなぁ、というのは、随所に感じるところで、さすがにオリンピックのような「深夜の生中継」まで行う競技はほとんどないものの、NHKなどは各競技のダイジェストをかなりしっかり放映している*1

ここ数日見ている視覚障碍者クラスの柔道などは、技が決まった瞬間の切れ味がオリンピックのそれ、とほとんど遜色ないし、陸上に目を移せば、義足の存在を忘れさせるくらい体を目いっぱい使って走り、飛ぶ姿の迫力を感じる。そして、ゴールボールに至っては、頭脳と体力の双方が要求されるゲーム性の強さゆえ、純粋なテレビ向けのコンテンツとしても十分楽しめる。

今回、パラアスリートたちの闘う姿やその背景を、いつも以上にしっかりと目に焼き付けることができることで、「大会後も見てみたい」という種目等もいろいろ増えてきているのだが、あとは、日本の国内で「見に行く」環境が整うのかどうか、そこが一番考えないといけないところなのかもしれない。

これも新しい落とし前の付け方、か。

西松建設の巨額献金事件をめぐる株主代表訴訟が東京高裁で和解となった、というニュースが出ている。

取締役に対する責任追及の対象となっていたのは、例の陸山会事件の発端となった行為で、気が付けば最初に報じられてからもうずいぶんと日がたっているから、原告側がこの辺で打ち方やめ、としたくなる気持ちは何となく分かるところだし、被告側にしても、東京地裁判決の「約6億7200万円」という巨額の賠償金に比べれば、「和解金1億5000万円」での決着となったことで、かなり救われる思いはしたことだろう。

興味深いのは、一般的な取締役による和解金支払いに加え、会社が献金問題を反省するとして、政治資金収支報告書を公開する団体に1千万円を寄付する。」日本経済新聞2016年9月10日付朝刊・第39面)ことで解決を図った、という点で、“なぜ会社が払ったのか”ということも含めて、背景がいろいろと気になるところではある。

取締役が背負う賠償額に比べると「小さな対応」に過ぎない、というべきなのかもしれないが、これぞ“和解ならではの解決策”と言えるようなアプローチだけに、今後これが他の事件に波及するのかしないのか・・・というところも含めて興味深いところではある。

不可思議な結末

人気若手俳優が強姦致傷容疑で逮捕勾留され、ここしばらく格好の週刊誌ゴシップネタになっていた某事件。
意外にも「不起訴」という形で決着となり、弁護人サイドからはあたかも「被疑者は無罪」とでも言いたそうなペーパーが出てきて、広く公開されている。

もし、そこで書かれていたことが本当なのであれば、そもそも最初の時点で関係者があんなに頭を下げるような会見を行う必要はなかった、ということになりそうだし、事件そのものよりも、あの会見をきっかけに被疑者の日頃の素行についてああだこうだ、と語られたことの方がレピュテーションに与える影響が大きかった、ということになってしまいそうだが、その一方で、事務所側は、釈放後すぐに契約解除、という極刑を課していたりもする。

真相を知るのは当事者だけで、本件ではその当事者の記憶すら怪しい以上、落とし前の付け方としてはこれで仕方ない、というべきなのかもしれないが、迅速に過ぎる初動対応の功罪も含め、いろいろと考えさせられるエピソードだと思う。

予想はしていたことだけど

しばらく話題になっていた鹿児島県知事による「川内原発停止」に向けた九州電力への要請だが、結局、先日の回答→再要請という手続きを経た末に「再度停止要請拒否、その代わりに追加の安全対策を提示し、知事も受け入れて重ねての「即時停止」要請を見送る、という、予定調和的な展開に再び収まることになった。

外野の人間としては、「こういうことになるんだったら、最初から余計なパフォーマンスをしなければよかったのに」というセリフがどうしても出てきてしまうが、そこは“政治”が絡むことでやむに已まれぬ、というところもあったのだろう。

いずれにしても、原発に関して“次の一手”をどう打つか、ということが、知事の今後の行政運営の安定感を決定づけるような気もするだけに、お手並み拝見、といきたいところである。

「片側空け」は日本だけのルールではない

日経土曜版に掲載されていた「エスカレーター片側空け どうして?」という記事*2を見て思ったのは、「片側空け」が日本だけのローカルルールだと思っている人、って意外と多いのだな、ということ。

欧州に旅行すればわかるが、「片側空け」のルールは既に様々なところで(少なくとも事実上のルールとしては)定着している。
エスカレーターのステップ上に「立つべき位置」を記載してしまっているロンドンの地下鉄は極端な例かもしれないが、他にも、大空港からローカルな施設まで「混んでいる時は何となく片側に寄る(そして急ぐ人はもう片側を使って追いぬく)」というルールが自然に定着しているように思えるだけに、メーカーも「歩くことを想定して設計していない」というお決まりの文句だけではなく、2020までには何とかする、ということを考えた方が良い頃合いなのでは、と思わずにはいられない。

*1:オリンピックの時にあれだけ騒いでいた民放が競技中継をほとんど行っていないのは残念の一言だが。「24時間」を毎年やっている某局などは、こういう時にこそ、あの高邁な精神を発揮して(BSの電波を使っても良いから)24時間体制で放映すれば名を挙げることができるのに、というのは4年に一度思うことなのだが、そこはなかなか変わってくれないところである。

*2:日本経済新聞2016年9月10日土曜版・第3面。

2016年9月9日のメモ

週末が待ち遠しい、という感覚が昔っからなかったわけではないのだが、ここ最近、それが特に強く出るようになっていて、週初めまでに片付けないといけない仕事が残っていても、金曜日の夜になると“スイッチオフ”モードになってしまう。その繰り返しが何となく鬱陶しい。

あと何年かしたら、こんなふうに思っていた金曜日が懐かしくなる時が来るのかもしれないけれど・・・。

隣の国で核実験成功、のニュースが流れてもどこ吹く風の平和の国

昼間に突然流れた「北朝鮮で核実験成功」のニュース。しかも核弾頭搭載実験、と来れば穏やかな話ではない。
ここ数日の間に報じられた「日本海に飛来した弾道ミサイル」のニュースと合わせて考えれば、どんな軍事素人でも今が尋常な状況ではない、ということには気付く話である。

それでも、街角で話題になることもなく、テレビを付ければ普通にバラエティ番組が流れている、という平和の国で過ごせることに感謝すべきなのか、それとも、それを恨むべきなのか・・・

とにかく、今は日本の国土に何も飛来してこないことを祈ることしかできないのである。

フィンテック」を前面に出すことの功罪

最近、日経紙を開くと一日一回どこかに登場してくるバズワードとなっているのが「フィンテック」。
そして、そんなに流行に乗り遅れるな、とばかりに、一昨日の朝刊には、「国内大手の森・浜田松本法律事務所(東京・千代田)は、金融とIT(情報技術)が融合した『フィンテック』分野で、企業連携を支援する新事業を始める。」日本経済新聞2016年9月7日付朝刊・第5面)という記事まで登場した。

最近本屋で見かけた、↓の書籍が、よく見ると日経BP社から発行されているので、記事に見せかけた一種の宣伝広告なのかもしれないが、おもむろに「フィンテックの法的リスク対策を考えろ」という天の声を受けた気の毒な担当者が駆け込めるような看板を掲げた、ということであれば、全く世の中の役に立たない、ということでもないと思う。

FinTechの法律 (日経FinTech選書)

FinTechの法律 (日経FinTech選書)

もっとも、本をちょっと開いて読めば分かる通り、「フィンテック」というバズワードに隠された実態を紐解いていけば、ほとんどの話は10年、20年前から議論されているあれこれの延長、に過ぎないわけだし、そうではない“本当に新しい問題”についてビジネスの現場を経験していない弁護士が語る中身には、あまり多くを期待することはできない。

新しい“単語”を持ち出すことで儲かる人々がいるのは分かるし、それにすぐ飛びつきたくなる人々の心理も分かるのだが、こういう時こそ、実務の最前線にいる人間が、現実を静かに分析して、“火消し”に走るべき名のではないかな、と思わずにはいられないのである。

なお、法律家が書いた「フィンテック」の本、ということで言えば、先に紹介したものよりも、↓の方が現実のビジネススキームに寄せて解説しよう、という意図が明確に見える分、面白いし使い勝手も良いのではないかな、というのが自分の主観的な印象である。

FinTechビジネスと法 25講―黎明期の今とこれから―

FinTechビジネスと法 25講―黎明期の今とこれから―

「民泊」推しは、もういいんじゃなかろうか。

これも7日の日経朝刊のネタになってしまうが、中国の民泊サイト「途家網」の躍進を伝える記事(日本経済新聞2016年9月7日付朝刊・第9面)の片隅に、

「民泊利用 アジア急増 日本は出遅れ」

という、いかにも日経紙らしい記者のコメントが便乗気味に書かれていた。

規制改革系の方々の旗振り空しく、規制官庁や既得権益層の反発でなかなか規制緩和が進まない、という毎度の論調でそれ自体を全否定するつもりはないのだが、元々、本家本元の米国ですらインターネット仲介型の“民泊”ビジネスの課題はいろいろと指摘されているわけで、正面から“解禁”を議論すれば当局が慎重なスタンスになるのは決して不思議なことではない。

そして、何よりも、この議論が国内で始まった頃の「宿泊施設不足」という問題が、景気の伸び悩みや訪日観光客の宿泊先分散、そしてホテル各社の積極的な設備投資のおかげで、実感としてはほぼ解消されつつある現状であるにもかかわらず、相変わらず壊れたテープレコーダーのように同じ主張を乗せているのは、いかがなものか、という気がする。

いくら価格が安いとしても、三つ星以上のホテルと比べれば明らかに格が落ちる「民泊」を、異国の地で積極的に使う人々の層というのは元々限られているわけで*1規制緩和論者がいつも持ち出す兆円単位の“経済効果”は、所詮机上の空論に過ぎない。

そんな状況で、正面突破で「規制改革」を求めることが、そしてその背景事情として「訪日客の取り込み」を掲げること果たして合理的なのかどうか。
そろそろ考え直すべき時に来ているように思えてならないのである。

*1:この点、他の同種サービスと比べてもそん色ない、というか、新興国では明らかに質が高いサービスを提供できるタクシーの世界とは根本的に異なっている。

2016年9月8日のメモ

まだまだ外を歩けば夏の気配が残っているのに、オフィスに一歩足を踏み入れると降り注ぐ仕事の雨嵐でどうしても空転気味になってしまう。
こんな時は、“隙あらばサボる”の精神を徹底したいところだが、息抜きの昼飯の時間すらまともに確保できないのが切ないところ。

カープ遂にM1

自分は別に広島の球団のファンではないし、今さら“俄かファン”になるつもりもないのだが、四半世紀もの間、健全な球団経営を貫き、地道に選手を育ててきた球団がようやく頂点の座を取り戻そうとしている、となれば、やはり応援せずにはいられない。

相変わらず空気が読めず、というか、東京の権威に抵抗したくても今は抵抗する力がない某関西球団がズルズルと黒星を重ねたせいで、熱狂的なファンが待つ地元での胴上げをかなえられなかったのは申し訳ない限りだが、8月後半からの快進撃のせいで、当地では優勝セールの準備すらままならない、という声も聞くところなので*1、その瞬間が一日、二日延びた、というのもまた一興なのかもしれないが。

できることなら、相手の“自滅”で決まるより、直接対決で気持ちよく決めてくれる方が、嬉しかったりする今日この頃である。

主役になるはずだった“i”を食った錦織圭選手

全米オープンテニスで、錦織圭選手が宿敵アンディ・マリー選手を下して2年ぶりベスト4、というニュースが朝から飛び込んできて、個人的には非常に胸が騒いだ。
日本の朝のニュースを独占するはずだったサンフランシスコのイベントを、さらに東の方から塗り替えてしまう、という展開も実に痛快で(笑)。

ジョコビッチ選手とは決勝まで当たらない組み合わせで、しかも準決勝の相手が決して相性は悪くないバブリンカ選手、という絶好の展開になっているだけに、このまま勢いに乗って次に、と言いたいところだけど、果たしてどうなるか。週末が楽しみでならない。

今さら感が強すぎる“i”の新製品発表会

日本では錦織選手のニュースに食われてしまった感があった某A社の新製品発表会。

もっとも、それがなかったとしても、アピールする目玉が「防水」とか「イヤホン」といったところしかない今回の発表会が、異国の地で盛り上がったかと言えば正直疑わしいところはある。

見方を変えれば、7日の朝刊で日経新聞が1面で堂々と載せていた「フェリカ対応、来年から」というリーク記事が、一番肝心なところで外れていた、ということが分かっただけでも価値のある発表会だった、といえるのかもしれないけれど。

*1:しかも、今年はパ・リーグが最後の最後までもつれ込みそうな気配で、早く優勝を決めすぎてしまうとその分クライマックス以降の展開が厳しくなりそうなので・・・。

2016年9月6日のメモ

9月に入ってから、負荷のかかり方が一気に平時モードに戻ってしまい、加えて元々入れていた予定のせいで、なかなかオフィスに腰を落ち着けて仕事をすることもままならない状況に。
これ以上回転数を上げるのはちょっと怖いなぁ・・・ということで、早々と「週末までコンディションキープ」に目標を切り替えざるを得ないのが、何とも切ないところである。

1年後“笑い話”として読みたい記事。

そろそろ来るかな・・・と思っていた特集が、遂に日経紙の法務面に掲載された。

「企業『いきなり提訴』警戒」日本経済新聞2016年9月5日付朝刊・第17面)

という鮮烈な見出しで始まる記事の中身は、当然ながら「消費者裁判手続き特例法」である。

法案の可決成立から施行まで少し日が空いたことと、昨年、実体法(消費者契約法)の見直しの方に関心が集まりがちだったこともあって、法案ができた頃の緊迫感のある議論を忘れかけていたところもあったのだが、改めて過去のエントリー*1を読み返して、当時の生々しい感覚が蘇ってきた。

元々、新法の手続きに乗せられる損害の種類が限定されていることに加え、事業者側が懸念していた消費者契約法の改正が現時点では小幅なものにとどまっていること等から、すぐに特定適格消費者団体による大量の訴訟提起が著名企業に対してなされる、という事態にはならないだろうが、だからこそどこの会社の法務担当者にも「(実質)第1号」になるのは避けたい、という思いが強いわけで、しばらくは“一番乗り”を目指す適格消費者団体との間で神経戦が続くような気がしている。

「そういえばあの頃、『いきなり提訴されるかも』なんて記事が出てたなぁ(笑)」と一年後に振り返ることができるようなら御の字なのだけど・・・。

予定調和的展開の先にあるもの

九州電力は5日、川内原子力発電所(鹿児島県)の即時停止を求めていた鹿児島県の三反園訓知事に対し、要請には応じないと正式に回答した。」(日本経済新聞2016年9月6日付朝刊・第2面)

ということで、心配するまでもなく1週間ちょっとで知事の要請は蹴飛ばされる形になった。

「約束どおり要請をしたが、九電が言うことを聞いてくれなかった」というありふれた結果だけで、この先4年近い任期を残している知事が求心力を保ち続けられるのか、当地の事情を知らないだけに何とも言いようがないのだが、「止めない」という選択自体は間違っていないと思うだけに*2、再度こぶしを振り上げるにしても、落としどころはちゃんと考えておいてほしいなぁ、と思うところである。

規制改革に斬り込む公取委

公取委が「介護分野」の現状について調査、検討を行い、「競争政策上の考え方」を整理した報告書を公表した、というニュースを聞いて、“たまにはいい仕事するじゃん(笑)”と思ったのは、自分だけではないだろう。

意見交換会」を経て作成された報告書は、早々に公取委のHPにもアップされている*3

報告書の中身にまではまだきちんと目を通せていないし、この分野の専門家の視点で見れば、“何、門外漢が余計な口出してるんだよ”という突っ込みもあり得るのかもしれないが、「事業者が競争したくてもできない環境」を「官」が作ってしまっている、という話は、介護分野に限らず、それなりに多く存在すると思うだけに、そういうところで“議論の種”を作っていただく、というのは十分に価値のあることなのだ、と思った次第である。

タイ戦の快勝で日本代表は息を吹き返すか?

ホームで行われた初戦を落として、一気にざわつき始めたサッカー・ロシアW杯の最終予選。
これでタイにも苦戦するようなことになれば、本気で本戦出場をあきらめないといけないんじゃないか、と思っていたのだが、今度はハリルホジッチ監督の采配がズバリ的中し、抜擢した原口、浅野といった若い選手たちが見事に役割をはたして事なきを得た。

2試合終わって負けなしのサウジアラビアや宿敵・オーストラリアなど、難敵との対戦はこれからだけに、1つ勝ったくらいでぬか喜びするわけにもいかないのだが、岡崎選手をベンチに置いたまま勝つ、という最近では珍しいパターン(直近では昨年の二次予選のシンガポール戦(アウェー)まで遡るのではないかと思う)で勝利を掴んだことが、チームが新しい方向に成長する良いきっかけになることを願ってやまない。

2016年9月4日のメモ

週末にいろいろとやろうと思って溜め込んでいたことが結局できずに終わる、というのは今に始まったことではないのだが、予定の半分も進まないような状況になってしまうと、物理的にもメンタル的にも週明けに影響してくるわけで、何とかならないものかなぁ、と。

元々休みの日にまできっちり時間管理して物事を進めるようなストイックとは無縁の人間なので、できるなり、にやるしかないのだけれど。

女性企業内弁護士特集の今さら感

日経紙の土曜日女性面、毎回それぞれの分野で活躍する女性が取り上げられているのだけれど、今週は「女性企業内弁護士」にフォーカスした構成になっている。
30代〜50代でお一人ずつ3名を取りあげた記事で、こういう形でも企業内弁護士の存在にスポットライトが当たるのは悪いことではないと思うが、違和感があったのは、リード文の中で石田京子・早稲田大准教授のものとして紹介されている以下のコメント。

「女性弁護士は、男性ばかりの職場では見えにくかった視点を示してくれるはずだ」

いやいや、企業法務の世界は、10年以上前から、企業内弁護士がポピュラーになるずっと前から、女性多いですよ・・・

さすがに、企業内弁護士の4割強を女性が占める、という光景や、CLOのレベルにまで女性が進出するという光景を目にすることができるようになったのは最近のことかもしれないが、元々法務という部門が、“ダイバーシティ”という言葉が世の中で使われるようになるずっと前から、純粋能力勝負の部署として様々な属性の人々に門戸を開いてきた、ということは、もう少し知られていても良いのではないかと思った次第。

レジェンド達の節目

ローカル夏競馬の開催も最終週、秋のシーズンに向けた始動のニュースが飛び込んでくる一方で、勝ちあがれなかった3歳未勝利馬の引退の報も続々と入ってくる切ないシーズンなのであるが、そんな中、武豊騎手のJRA史上初・2万回騎乗、そして、横山典弘騎手の史上4人目のJRA全10場重賞制覇、というニュースが飛び込んできた。

かつて、東西で“どんなレースでも迷ったらとりあえず買っとけ”的な、ずば抜けた存在だった両騎手も今やすっかりベテラン。今シーズンの勝利数だけ見ると、いつの間にか世代交代が進んでいるのだなぁ、と感じざるを得ない状況になってはいるのだけど、それでも積み重ねられた数字、実績をこういうきっかけで振り返ると、やはり「別格」感が半端ない。

通算勝利数で言えば、目下、武豊騎手の独走状態になってしまっているのだが、横山典弘騎手も既に2600勝超え。
かつて“不滅”と言われた岡部幸雄騎手の2943勝にも十分挑めそうなレベルにまで近づいているだけに、まだまだ現役で一花、二花期待したいものである。

こち亀」連載40年で幕

メディアでいろいろと取り上げられていたが、個人的には「コミックスが100巻に達した」頃がこの漫画のピークだと思っていて、その後、連載期間の後半半分は、雑誌でもコミックスでもほとんど目にすることがなくなってしまったので、あまり感慨はない。

これだけ長く引っ張った作品を最後の1話でどう締めるのか、というのは非常に興味があるところだが*1、「ジャンプ」という雑誌の特性上、“終わりが(新作ではなく)新編の始まり”というのは良くある話なので、しばらく経って、若き日の両津勘吉(あるいは定年後の両津勘吉)的なものが出てくるのではないか、と生暖かい目で見守るのみである。

*1:これで夢落ち、で第1話にワープするという設定だったらwww

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