女王の称号はかくも重い。

フィギュアスケートグランプリシリーズの最終戦NHK杯


女子SPで2位に付けていた安藤美姫選手が、フリーで3度の転倒、明らかに精彩を欠く滑りでこの日だけなら7位、総合でも4位に転落する、という大惨敗を喫した。


元々、グランプリファイナルを直前に控えたこの時期のNHK杯には、外国の有力どころが参加しないことも多く*1、今年も決して例外ではなかったから(有力どころは、カロリーナ・コストナーサラ・マイヤーくらい)、「昨季世界女王」の称号を持つ安藤美姫選手なら、優勝は逃しても表彰台は難なく確保しても不思議ではなかった。


だが、今季グランプリシリーズ開幕戦、スケートアメリカでの今一歩精彩を欠く演技が予感させたとおり、結局終わってみれば優勝どころか、表彰台もグランプリファイナル進出も逃す結果に。


新聞の記事等で安藤自身がコメントしているとおり、元々「気持ちが乗らないと滑れない」典型的なスケーターであるように思えるがゆえに*2、頂点を極めた次のシーズンに良い成績を残せ、と期待する方が酷だったのかもしれないが、それにしてもこのギャップは何なのだろう・・・というのが、多くの人が抱いた感想ではなかろうか。


今年の3月、世界選手権で、女子フリーのドラマチックな展開を眺めつつ、「逆襲のチャルダッシュ」なんていう遊びのエントリーを書いていたのであるが*3浅田真央選手について、

「ここで「奇跡」を起こして「世界チャンピオン」の重い称号に次の五輪まで苦しめられ続けるよりは、“日本の二番手”として、翌シーズン以降に期待をつないだほうが何かと得だし、本人にとってのモチベーションになるのは確かだと思う。」

と書いたことのまさに裏返しのような状況が、安藤美姫選手に生じているのかもしれない。


タイトルを取った者が故障や燃え尽き・・・で苦しんでいる間にライバルや3番手以降にいた選手が大きく延びる・・・というのは、どんなに世界にでもありうる話である。


そして、皮肉にも、ダイナミックな演技と、メディア受けしそうな爆発的な感情表現(実況が「ナナスマイル」と連呼していたそれ)がアピールポイントの武田奈也選手が、この日初の表彰台にあがり、ポスト・安藤の座を伺うことを予感させた*4


もちろん、安藤選手とてまだ19歳。


世界女王になって一度モチベーションが落ちた状態から、五輪に向けって一気に立て直した荒川静香選手の例もあるし、見切りをつけるには時期尚早なのは確かなのだが、果たしてこの先どうなっていくのか。


まずは12月の日本選手権が最大の注目の的になるであろう*5

*1:特に今年の男子のメンツなどは、「大輔、これで勝たなきゃアホやろう」と言いたくなるくらいのレベルであった。

*2:トリノ五輪の時の半ば“プッツン”的な滑りを見れば、そのことは明白かと。

*3:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20070324/1174792152#tb

*4:イメージ的には明らかに安藤とかぶる上に、トリノの時のような悪いイメージもなく、レイバックスピン→ビールマンスピンといった美しい武器も持つ武田選手。自分がスポンサーだったら速攻乗りかえても不思議ではない(笑)。

*5:個人的には今年の世界選手権代表は、浅田真央中野友加里の両選手が当確。最後の一枠を村主章枝武田奈也が争う展開、だと思っているのだが、筆者の予想は大概外れる(苦笑)。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html