羽生結弦選手の大逆転劇に湧いた今年の世界フィギュア@ヘルシンキ。
4種類の4回転ジャンプを全て完璧に成功させ、他の要素でもジャンプからスピン、ステップシークエンスまで減点される余地がない演技を見せた羽生選手にはもはや形容する言葉が見当たらないし、それに続いた宇野昌磨選手も、後半だけ見れば羽生選手以上の迫力を感じさせるような演技で、「世界で2番目」の称号に全く違和感を抱かせなかった。
五輪の一季前、という微妙なシーズンながら、2シーズン続けて世界の頂点を守ってきたハビエル・フェルナンデス選手を表彰台から蹴落とし、躍進著しいネイサン・チェン選手に一日の長を見せつけた日本勢の上位独占劇は、久々に見た美しい絵図だったと思う。
こうなると、悔しいのは女子の方。
ちょうど世代の端境期、宮原知子選手の無念の欠場が決まった時点で、苦戦は免れ得ないだろうな、という予感はあったのだけど、本来であれば表彰台に一番近かったはずの三原舞依選手がショートプログラムで出遅れた(首位のメドベージェワ選手に20点近い差を付けられて15位発進)のは、やはり痛恨事。
結果的に、三原選手はフリー4位、技術要素点だけならメドベージェワ選手に次ぐ2位、と、今シーズンの勢いを取り戻す演技を見せることができたのだが、SPの出遅れはやはり大きく、総合では5位に食い込むのがやっと。そして、ここぞの場面での爆発力に密かに期待していた樋口新葉選手は最後まで不発で11位と惨敗。代役・本郷理華選手も今季の不振そのままに16位に沈み、五輪シーズンを前にして「3」枠を失う、というまさかの結末となってしまった。
時々取りこぼす男子とは違って、女子は2002年に長野で行われた世界選手権で村主章枝選手(3位)と恩田美栄選手(5位)が「3」枠を奪い取って以来、ずっと「3」という最大の枠を守ってきた。その間、荒川静香選手、安藤美姫選手、浅田真央選手、という3名の世界女王を輩出し、鈴木明子選手、宮原知子選手という表彰台に食い込む選手も送り出した。
そんな15年続いてきた歴史が、突如として崩れてしまうことになるとは・・・
ちょっと前まで、銀盤を席巻してきたロシア勢も、今大会では絶対無敵のメドベージェワ選手が優勝したことを除けば決して芳しい成績ではない。
そんなふうに、一瞬で栄枯盛衰が変わってしまう世界だけに、誰が悪い何が悪い、と責めることはできないし、いざシーズンになれば、これまでになくハイレベルな「2」の枠を巡る争いが繰り広げられることだろうけど、できることなら「エイプリルフールの冗談」であってほしかった。そして、それくらい残念な終わり、の時だった。