4年前の輝きは失せたのか?

大学での最後のシーズンを迎えている斎藤佑樹投手が、開幕から悪戦苦闘していることは伝え聞いていたが、ついに、4試合目の登板となる対東大1回戦で、「7回5被安打3与四球で3失点」という(相手を考えれば)大乱調。黒星を喫する、という惨事に見舞われることになってしまった。


今季の東大は、急成長(?)した1年生エース・鈴木投手(時習館高校出身)が粘りのピッチングを見せているようで、この日も僅か2失点*1
打線の方も、高山選手*2が打撃ベストテン4位に付ける好調ぶりを見せるなど、過去何シーズンかに比べれば健闘しているようだから*3、斎藤投手が滅茶苦茶悪い・・・ということではないのかもしれない。


だが、今季、現時点で規定投球回数に達している選手の中で、ビリから2番目の防御率3.91という数字(10位)を見てしまうと、“プロ注目の選手”という看板も色あせてしまう。


おそらく、日曜日に勝って3回戦で再び先発に回ることになるのだろうが、これで続けて負けるようなことになると、“多田野の悪夢”すら思い浮かんできそうで、不吉なことこの上ない*4



斎藤投手が神宮に来てからの4年間は、自分がちょうど六大学をライブで見に行かなくなった時期とも重なっていて、それゆえ、残念ながら自分は、臙脂色の入ったユニフォームを着て投げる斎藤投手を一度もこの目で見たことはない。


なので、彼が今どのレベルで彷徨っているのかを、はっきりと断じることはできないのだが(ゆえに、評論家のコメントの受け売り的なコメントになってしまうのだが)、甲子園を同じ時期に騒がせた、楽天の田中投手と比べると、明らかに進化が遅れているのは間違いないだろうと思う*5


そして、それゆえに、当時、大学進学にこだわった彼の選択を、“無駄な回り道だった”と評価する声は、これから強まってくることだろう。


だが・・・


斎藤投手は、今季から主将のみが付けることを許される、背番号「10」を付けてマウンドに上っている。


伝統のある早大野球部の主将というポジションを与えられて、伝統あるチームを1年間率いる、そのことの重さは自分には想像もつかないが、そういう経験ができたことが、人間の成長にどれだけ寄与するか、ということを考えると、ピッチャーとしての成長どうこう、なんて話はどうでもよく思えてくるわけで・・・。


本人はあくまでプロで大成することを第一に目指してやっているのかもしれないし、それを前提にするなら、周りが思っているいるほど、本人自身は今のポジションの大切さに気付いていないのかもしれないけど、別の世界でアマチュアからプロの世界に足を踏み入れかけている自分としては、「プロに行くだけが人生じゃないよな・・・」とも言いたくなる。


そして、できることなら、春の悔しさを晴らせるように、“主将として”優勝を経験して欲しいなぁ・・・と思うのである*6

*1:9安打7四球、という数字だけ見れば、とてもこの失点には抑えられないと思うのだが、ツキにも恵まれたのだろうか・・・?

*2:この日斎藤から同点タイムリーを放った。

*3:この日の試合でも、斎藤投手だけでなく、リリーフエースの大石投手からもダメ押し点を奪っている。

*4:8年前の秋、当時、和田投手と並ぶ六大学屈指の投手だった立教大学の多田野投手(現・日本ハム)が、東大戦で2敗を喫して勝ち点を献上する、という大惨事があった。当時の東大野球部が強かったのは事実だとしても、その後の多田野投手の流浪の人生を予感させるような事件であったのは間違いない。

*5:純粋に実力だけで評価されるなら、今年のドラフトでの評価は、同期の大石投手や福井優也投手よりも低くなってしまっても不思議ではない。

*6:ゆえに、東大野球部には、ここは“頑張るな”と言いたい。もっと頑張って最終節で法政に土を付けるところまで行くなら、それはそれでいいのかもしれないけど・・・。

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