もう二度と彼女を「YAWARA」とは呼ぶな。

一部の(だが良識ある)人々から、“辞めろ辞めろ”の声が上がって久しかった谷亮子参議院議員が、ようやく柔道選手としての「第一線」を退くことを発表した。

これまで、五輪のたびに、あたかも腫れものに触るように(?)無抵抗な“賛美”の声を送ってきたメディアにも*1、彼女が政治家という“叩きやすい公人”になったこともあってか、今回はどちらかと言えば手厳しい論調が目立つ。

個人的には、講道館杯のエントリー締切日に「強化指定選手の辞退届」を出して引退表明するなんて、「売れなくなった大物演歌歌手の紅白歌合戦辞退」みたいじゃないか(ちょっとネタが古い・・・?)、という突っ込みでも入れたいところだが、これで48キロ級の不明瞭な選考に泣く選手もいなくなるし、彼女を「YAWARAちゃん」などと、猪熊柔にあまりに失礼な仇名で呼ぶメディアもなくなるだろうと思うと、安堵する気持ちはあるわけで・・・。


彼女を「YAWARA」と呼ぶことの滑稽さについては、既に多くの人々が語っているところだから、今さら自分が語る必要もないだろう。

ただ、自分の場合、良く巷で言われているような、柔道のスタイルとか、ルックスの話だけではなく、彼女の生き方そのものが、「YAWARA」のそれとはあまりに乖離しているところが、ずっと引っかかっていた。

15歳で出場した福岡国際女子柔道で鮮烈なデビューを飾って以降、世界選手権で銅メダル、バルセロナ五輪で惜しい銀メダル・・・と階段を駆け上っていったあたりまでは、「YAWARA」の称号もそれなりに似合うところはあったのだけど、その後の進学、就職、結婚、出産・・・といったエピソードのたびに、どんどん引いて行ってしまう、そんなスポーツ選手っていうのも、ある意味珍しい。

道を究めようとする選手特有の求道者精神を貫くでもなく、地位名声に汲々としない潔さを見せるわけでもなく、「柔道家としてのブランドをフル活用して築いた道であるのは見え見えなのに、あくまで“普通の人と同じような人生”を歩んでいるかのようにアピールしたがる」彼女の欲張りさは、ある意味「YAWARA」の主人公の対極に位置づけられてしまうわけで、その辺に、彼女が何度金メダルを取っても純粋に応援する気分にはなれなかった最大の原因があったように思う。

もちろん、ミーハーそうに見える仮面の裏で、人知れず努力を積み重ねていたからこそ、五輪での金2個、メダル5個、世界選手権6連覇(優勝7回)という偉業を成し遂げられたんだろう、ってことは認めざるを得ないとは思うのだけれど・・・。


ちなみに、「ロンドン五輪を目指す柔道家」という看板を失った彼女が、純粋な「議員」として活躍し、メディアに露出する機会が果たして今後どれだけあるのか、自分は大いに疑問を感じているところで*2、順当に行けば6年後、議席を失って“野に下る”ことになる可能性もかなり高いのではないかと思う。

その時、彼女がどう動くか。

メディアへの露出を絶って、地道に指導者として選手育成に励むか、あるいは、クルム伊達のような、40歳を超えての奇跡の復活を目指す・・・なんてことになれば、デビューの頃と同じような声援を送る気分になるかもしれないな、と何となく思っている*3

*1:選考過程等に重大な疑義があることが指摘されていたにもかかわらず、大会本番が近付くとそんなものはなかったかのように手放しで“ヤワラ・フィーバー”を演出しようとする有り様は、正直気持ちが悪いくらいだった。

*2:元々政治家としての資質には疑問を呈されている上に、小沢一郎色があまりに強すぎることを考えると、6年後民主党公認で出馬できるのかどうかも疑わしい・・・。

*3:もっとも、どちらも可能性は限りなく低いと思うけど。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html