跳べなくなったプリンセス

早いもので今年もフィギュアスケートの季節が来た。

グランプリシリーズの初戦がNHK杯、という見慣れないローテーションの上に、出だしから浅田真央選手、高橋大輔選手、という日本が誇る世界チャンピオン2人が登場する、というNHK的には出来すぎた展開で嫌な予感はしていたのだが、案の定・・・といった感じである。


浅田真央選手の女子シングルフリーを期待しないで見てみた。

・・・実に酷かった。

2度のアクセルを含む最初の4つのジャンプで取った点数が僅かに3.22。
跳んでも跳んでもタメ息が出るような状況で、ジャンプだけで見ると、要素点は「15.71点」にとどまってしまう大惨事だった。

2度の世界女王に輝き、五輪でも銀メダルを取った、という実績ゆえに演技構成点で全体の2位に付け、トータルでも“何とか”8位にとどまったものの、浅田選手見たさに高額チケットを買って駆け付けた名古屋のファンにとっても、テレビ桟敷で見ていた一般視聴者にとっても、目を覆いたくなるような状況であったのは間違いない。

元々シーズンの出だしが良い選手ではなく、過去のグランプリシリーズでも初戦で優勝したのは、世界女王になった2007-08年シーズンだけ。
昨年の開幕戦のフランス杯でも、ジャンプが跳べずに躓き、多くのファンに不安を抱かせたのは記憶に新しいところ。

だが、今年の不調は、単なる「出足の悪さ」では片付けられない、これまでとは別次元の、深刻な何かを感じさせるものなわけで・・・


ここ数年、外国人コーチの下で表現力を磨く過程で失われていった「ジャンプ」の技術を磨き直す、というのが、今季の浅田選手が掲げているテーマだ、というのは、様々なところで報じられていることだし、コーチが変わって、今まさに立て直している過程だと考えれば、多少の成績不振もどうってことない、ということになるのかもしれないけれど、果たしてそんなにきれいな復活ストーリーが書けるものなのかどうか。

GPシリーズが終わって、日本選手権を迎えることになっても、完全に立て直せない状況のままだったとしたら・・・?
そして、地元で迎える世界選手権の切符を逃す、or 辛うじて出場できても大惨敗を喫するようなことになったとしたら・・・?

どんなにスランプに陥っても、不死鳥のように這い上がって現役を続けている村主章枝のような選手もいる。

しかし、そこまでのストイックさを求めるには、浅田選手はいろいろなものを既に手に入れ過ぎてしまっているわけで、4年も先の「五輪での金メダル」という目標だけで、彼女が今の苦境を乗り切れるのか、不安は残る*1


今年のシーズンが終わったときに、まったくもって杞憂だった、ということになるのかもしれないし、そうなってほしい、と自分は心から願っているのだけれど・・・。

まずは2ヶ月後の健闘を祈りたい。

*1:長年背負ってきた“日本のエース”の看板ゆえ、今大会では浅田真央選手をフォローする報道も多かったが、次もその次も、今回のように若い選手の後塵を拝するようなことになれば、いずれメディアの論調も変わってくるだろう。今大会の村上佳菜子選手の、フリーの出だしのコンビネーションジャンプ(あそこまで綺麗なジャンプは、ここ数年は浅田選手ですら跳んでいない)を見てしまうと、時代の風の移ろいは案外早いんじゃないか・・・という気にすらなってくる。