雌伏の時を経て。

全日本フィギュアの女子シングルは、予想通り、というか、テレビ局やスポンサーの思惑通り、というか・・・
鈴木明子選手の逆襲にかすかな期待を抱いていた一視聴者の期待空しく、至極穏当な結果に収まってしまった。

“波乱”と言えば、浅田真央選手が、見た目には綺麗な流れで*1、最後まで会場の空気を支配していたにもかかわらず、いつものような爆発的スコアを叩き出すことなく、2位にとどまったことくらいか*2

まぁ、今大会に関して言えば、安藤美姫選手のフリーの出来が一番よかったのは間違いないところで、モロゾフコーチの“チャリンチャリン”方式的プログラム*3に辟易している自分が見ても、浅田選手より低い点を付けるわけにはいかないな、という印象だったから、その結果にも大して驚きはしなかったのだけれど。


ちなみに、安藤選手の全日本フィギュア優勝は6年ぶり。

その間に、世界フィギュア優勝、という偉業も成し遂げているとはいえ、随分と長い歳月が流れたものだと思う*4

まだ順位点方式が採用されていた03年に続き、現在のスコア合計方式に変わった04年の全日本も安藤美姫選手が連覇した*5時は、この選手が、その先数年は、日本の女子フィギュア界の「看板」として牽引していくのだろう・・・と信じて疑わなかったものだ*6

だが、その翌シーズンに、彼女の競技人生は、まさかの暗転*7

世界女王の座に付いた06-07年シーズンも、地元の世界選手権で実質的に主役を張ったのは“逆襲のチャルダッシュ”伝説を作った浅田真央選手の方で、その後、浅田選手が世界女王、五輪銀メダル、2度目の世界女王、と階段を上って行くたびに、存在感が薄れていっていた・・・

そんな選手が、(04年当時の本人の言では)とっくに引退していたはずの、バンクーバー五輪の翌シーズンに再び輝きを放つのだから、人生とは何と面白いものだろう。

トリノ五輪のシーズンにひどく悪印象を抱いてしまったこともあって、安藤選手に肯定的な評価をすることは滅多にない自分であるが、今回ばかりは、素直に6年ぶりの戴冠を称賛してもいいんじゃないか、と思っているところである。


・・・ま、世界選手権には全く期待してないけど(笑)。

*1:ジャンプのミスはいくつかあったが、流れを途切れさせるような致命的なミスはなかった。

*2:技術要素点については、今シーズン序盤から不振続きだったことを考えると、ある程度理解できるところもあったのだが(元々無難な構成に収めていたところに、3回転ルッツのエラーエッジと、サルコウジャンプのダウングレードが響いた模様)、演技構成点でも2位にとどまってしまったあたりに、“風向き”の微妙な変化が感じられた。

*3:ジャンプを跳ぶたびに、スーパーマリオのコインを獲ったときの音が聞こえてきそうな(笑)プログラムで、そうでなくても無機的に見える安藤選手の滑りが余計に味気なく見えてしまう。

*4:ちなみに、2004年の男子シングルの優勝選手は本田武史選手。それだけでも、歳月の重さを感じる。

*5:SP首位の荒川静香選手が棄権する、というアクシデントの恩恵を受けたのも事実だが。

*6:当時は“4回転サルコウ”という必殺技も彼女の代名詞として頻繁に使われていた。

*7:浅田真央選手の大躍進、ベテラン荒川・村主選手のトリノ五輪での大活躍、といった華々しいニュースに加え、自身の大不振や代表選考をめぐるバッシング等の影響もあって、“看板選手”という肩書はすっかり色あせてしまった。

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