志の違い。

今回の大震災後の各界の対応を見ていると、いろんなものが透けて見えてくる。
特にプロスポーツ界の動きは非常に極端だ。

例えば、NPB(日本野球機構)とJリーグ。

ホームページだけ見ると、一見似たようなスタンスを取っているように見えるが*1、早い時期から“被災地の状況に配慮”という地域密着リーグならではの明確なスタンスを打ち出して、開幕を大幅に順延した上で、代表戦が流れたのを逆手に取るかのような“豪華チャリティマッチ”を即興で組んでしまう企画力を見せつけたJリーグと、リーグ間で開幕時期の足並みを揃えることさえままならず、露骨な“球団エゴ”が前面に出過ぎて不評をかこっている野球機構とでは、雲泥の差がある。

もちろん、“プロ”としてチームを経営していく以上、営業上の理由にも配慮しなければならないのは当然のことで、冷静に考えると、世間が批判するほどセ・リーグの姿勢に問題があるわけではないような気もする。

Jリーグの場合、元々試合数やスケジュールの組み方にある程度余裕があるから、日程の調整も柔軟にできるし、そもそも被災地やそこへ向かう交通インフラがある程度復旧してからでないと、試合の開催もままならない、という状況もある。

そういった事情がない「セ・リーグ」が、節電への一応の配慮もした上でのたかだか一日2〜3時間の試合開催をなぜ早い時期にできないのか・・・? と突き詰めて考えれば、オーナーサイドの理屈をひっくり返すのは、実は結構難しいだろう*2

だが、

「開幕はお上が決めることじゃない」

という、本来であれば至極当然の某球団のオーナーの発言が*3、全国民からのブーイングの対象になってしまう理由はちゃんとあるわけで・・・。


世の中が混乱している真っただ中だからこそ、時代の“空気”を納得させることができる大義と、それに沿ってプランを実行する力が求められる。

もちろん、それを明確に打ち出せる「発信力」も必要。

震災の傷が癒える間もなく、停電に原発、と日常に怯えを感じている多くの群衆(ここには時に為政者の側にいる人々も含まれる。特に今はそう。)を前に、冷徹な思考の下導かれるような“正論”を押し通そうと思っても詮なき話なのであって、それが団体の総意か否か、真意か否か、を問わず、「空気にマッチした大義」を明確に発信できる者だけが、今の時期、支持を集めることができるのだろうと思う。

そして、そのためには、組織全体を統括するポジションにある者が、自分たちの立ち位置を見極めて、期待された役割を果たそう(&そうすることを通じて自分たちの存在感を高めよう)という強い志を持って自分の組織をリードしていかないといけない。

今のNPBとJリーグの最大の違いは、そこにあるのではないかと思うし、この“極限期”に人々に与えた印象の「差」は、数年後、数十年後、埋めがたい差となって跳ね返ってくるように思えてならない。


もしかすると、「セ・リーグ」の某球団は、自分たちを“社会のヒール”と位置付けた上で、“アンチ”ファンに元気と勇気を与えるために、今のような振る舞いをしているのかもしれないし(究極の善解)、そうだとすれば、「相当な策士だなぁ」と称賛せざるを得ないのだけれど・・・(苦笑)。

*1:Jリーグ:http://www.j-league.or.jp/、NPB:http://www.npb.or.jp/

*2:ついでに言えば、今でこそNPB(特にセ・リーグ)の方で、“選手会との軋轢”が際立ってしまっているが、今年に入ってから長らく選手会とのゴタゴタを元々抱えていたのは、むしろサッカー協会の方だった。今は、まともに代表戦すらできない状況だから表面化していないものの、真の意味で業界関係者が“一致団結”しているか、と言えば、そこはちょっとクエスチョンマークが付くところではある。

*3:自分は、実のところ、滝鼻オーナーの発言と同じくらい、蓮舫担当相の発言にも不快さと違和感を感じている。権限もないのにあたかも“規制権限者”のように振る舞うのは彼女の特技、とはいえ。

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