グーグルの検索サービスに関して、世界中でいろいろな訴訟が提起されている、というのは良く聞くところであるが、日本でもこんなニュースが報じられた。
「大手検索サイト「グーグル」で自分の名前を入力すると、犯罪を連想させる単語が連動して自動表示されるとして、男性がプライバシー侵害などを理由に米グーグルに表示差し止めを求めた仮処分申請で、東京地裁(作田寛之裁判官)は25日までに、差し止めを命じる決定をした。」(日本経済新聞2012年3月26日付け朝刊・第42面)
記事を読んだだけでは、良く分からないところも多い事件で、そもそもこの人が仮処分を申し立てた相手方は、海の向こうのグーグルそのものなのかそれとも日本法人なのか、とか、被保全権利は本当に「プライバシー権」なのか、とか・・・
昨年10月に申し立てた仮処分で、ようやく今になって決定が出た、ということは、それなりに主張の応酬もなされたのかな、と想像されるところだが、そんな経緯を見るまでもなく、本件が手続的にも、理論構成を含めた実態面からも、相当難しい事件であることは疑う余地がない。
記事によれば、
「男性の実名を検索しようとすると、関連単語を予測して自動表示する「サジェスト機能」が働き、犯罪を連想させる単語が候補の一つとして自動的に表示され、検索結果として出てくる複数のサイトに男性を中傷する内容が書かれている。」
ということで、申立人にとってはとんだ災難。
そして、一番悪いのが「中傷サイト」をWeb上にアップした者だというのは疑いないところだろう。
ただ、そのようなサイトがアップされた結果、男性の名誉を著しく傷つけるような検索ワードを表示してしまうことになった検索サービス事業者にまで、責任を追及することが直ちに可能なのか・・・といえば、いろいろと疑問を入れる余地は出てくる*1。
現に、人名と紐付けられるサイトがWeb上に存在している以上、それを拾ってきてしまう検索システムを責めても仕方ないように思われるし、仮に申立人側の請求が損害賠償だったなら、本案で棄却される可能性は高いように思うのだが、そこは、
「数年前から、突然会社を解雇されたり内定を取り消されたりし(た)」
という申立人の被った不利益の甚大さゆえ*2、裁判所は仮処分を認めた、ということなのだろうと理解している。
なお、記事によれば、Google側では、依然として表示停止には応じていないそうで、これが今後どのような展開を見せるのか、はちょっと気になるところ。
相手方にしてみれば、極東の島国で裁判起こされたからといって、全世界で共通しているルールを簡単に曲げるわけにはいかない、という強いポリシーがあるのだろうけど、かといって、こういう状況になった以上は、何もしなくてよいわけではあるまい・・・と思うのは自分だけだろうか?*3
いずれにせよ、今後の動向を注目してみていきたい、そんな事件である。