鞍上の執念が打ち破った有馬記念のジンクス

新怪物オルフェーヴル年度代表馬最有力のジェンティルドンナ、といった人気投票上位馬が軒並み出走を辞退し、何となく“二番手”メンバーが固まってしまった感がある今年の有馬記念

とはいえ、今年最後の大一番、となれば、どうしてもヒートアップするのがファンの常。

そして、蓋を開けてみれば、レース的にも、馬券的にも、記憶に残る興味深い一戦になったのではないかと思う。


古馬のG1戦線で実績を残した馬の多くが回避した*1こともあって、今年の皐月賞菊花賞の2冠を制覇したゴールドシップが1番人気に推されることは、大方予想はついていた。

確かに、騎手の腕に依ったところも大きいとはいえ、皐月賞の圧勝で中山コースへの適性は証明済み。
しかも、ステイゴールド産駒の中山2500mコースの適性も極めて高い*2

だが、ひとつだけ引っかかったのは、

芦毛の一番人気馬は有馬記念を勝てない」

というジンクス。

「まてまてオグリキャップがいるじゃないか」という突っ込みもありそうだが、あの馬が勝った時はいずれも1番人気ではなく、タマモクロス(88年)、ホワイトストーン(90年)という1番人気の芦毛馬を蹴落としての勝利だった。

さらにその後の歴史を辿れば、メジロマックイーン(91年)、ビワハヤヒデ(93年)と、大本命に挙げられながら、伏兵に足元をすくわれた馬の名前が次々と出てくる・・・。

もちろん、今年のメンバーでゴールドシップが3着以下に落ちるとは思えなかったから、連下で、という読みではあったのだが、単勝の予想からは外して、同じステイゴールド産駒でも中山芝コース連対率100%(【3200】)を誇る(しかも湿った馬場で抜群の強さを発揮する)ナカヤマナイトを頭で・・・というのが自分の“筋”だった。

そして、今年の有馬のゲートが開き、決して極端に“早い”とは思えないペース(1000mが60秒くらい)で進んでいく中で、相変わらずズブズブで、道中最後方を追走するゴールドシップの姿を見たときは、しめしめ、と思ったのだが・・・。


内田騎手の必死のおっつけで、3コーナー手前から一気にペースアップし*3、大方捲ったところでもう一度脚を貯め、最後の直線もう一伸びして大爆発・・・というゴールドシップの今回のレースぶりの鮮烈さは、言葉で説明するよりも、JRAアーカイブYouTubeあたりで素直に映像を見ていただく方が遥かに伝わるだろう。

「長く脚を使える」というゴールドシップの天性の能力があってこそ、とはいえ、鞍上が歴戦の勇者・内田博幸騎手でなければ、あんな大胆な騎乗はできない*4

・・・かくして、1番人気で堂々の勝利、「芦毛のジンクス」は破られることになった。

見事勝利騎手となった内田騎手のここ1〜2年の苦悩*5を考えれば、「ようやく掴んだ第一人者のポジションを譲らない」という執念が、今年手塩にかけて育てた愛馬に乗り移ったのかなぁ・・・とも思ったりする*6


個人的には、1着が順当な結果に収まってしまったおかげで、大勝負をかけた「連単」系の馬券が全て飛んだうえに、2着に入ったのが、同じステイゴールドでも、もっと人気薄のオーシャンブルーだった・・・というのが大誤算で*7、あまり嬉しいレースではなくなってしまったのだけれど、これも来年の凱旋門賞に向けてのご祝儀、ということで、今は前向きに考えている。

*1:一応、秋の天皇賞馬(かつ昨年の2着馬)のエイシンフラッシュが出ていたとはいえ、この馬はムラッ気があり過ぎて、「主役」に押し立てるには、どうにも役不足の感が否めない。

*2:http://news.netkeiba.com/?pid=column_view&wid=AJ01参照。ステイゴールド自身は、脚の使い方が難しい馬で、直線が短い中山コースでは思うように実力を発揮できなかった感が強かったのだが・・・。

*3:このペースアップのせいで、先行勢は息付く間もなく乱気流のようなペースの上下動に巻き込まれ、あえなく最後の直線で壊滅するに至った。

*4:最後の直線で脚を貯めきれずに飛び出して、後続勢の餌食となってしまったエイシンフラッシュ・三浦騎手の騎乗と比べれば、内田騎手の名手たるゆえんが良く分かる騎乗ぶりだったと思う。

*5:南関東から移籍後、2シーズン目で早くも全国リーディング首位の座を奪いながらも、相次ぐ落馬事故に遭遇し、ここ1〜2年は不本意なシーズンを送ることを余儀なくされてきた。

*6:これだけ道中でズブズブの姿を何度も見せつけられてしまうと、内田騎手が乗れなくなった時に、この馬は一体どんなレースをするのだろう・・・?という不安も生まれてしまうが、その辺の真価は来シーズンに試されることになるのだろう。

*7:ナカヤマナイトは、2007年のマツリダゴッホ以上に中山コースとの相性が良かったし、自分の経験則上、こういう馬は確実に複勝圏内には絡んでくるはずだったのだが・・・。

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