凱旋門賞などに比べると、随分と取りあげられ方が小さく、あたかも、ひっそりと行われていたかのようにすら思えてしまった今年のドバイ国際競走だが(とはいえ、相変わらず世界最高賞金額のレースを抱えるビッグイベントであることに変わりはない)、現地から週末の日本に送られてきた映像は、恐ろしいほどに衝撃的なものだった。
「競馬のドバイ国際競走は29日、日本馬計8頭が4レースに参戦してメイダン競馬場で行われ、ドバイ・シーマクラシック(2410メートル、芝、G1)は、昨年2着でライアン・ムーア騎乗のジェンティルドンナが、最後の直線で内側の馬群からうまく外に導かれて末脚を伸ばし、後続に1馬身差をつけて雪辱を果たした。」
「ドバイ・デューティフリー(1800メートル芝、G1)は福永祐一騎乗で昨年の天皇賞・秋を制したジャスタウェイが6馬身以上の差で圧勝した。」
(2014年3月31日付朝刊・第41面)
まず鮮烈だったのが、アドマイヤムーン以来、日本馬としては7年ぶりにデューティフリーを制したジャスタウェイ。
「6馬身差」といってもピンと来ない方が多いかもしれないが、映像で見ると、まさしく“影をも踏ませぬ”圧勝劇だった、ということが良く分かる。
タイム自体も従来の記録を2秒以上更新するレースレコード。
昨年の秋の天皇賞で、サプライズ的な快勝を見せた後に、距離が延びるビッグレースには見向きもせず、まっすぐこのレースに向けて照準を合わせてきた生粋の中距離馬だし、その天皇賞に、ステップレースだった中山記念、と国内でも続けて快走してきただけに、この結果も不思議ではないのかもしれないけれど、彼が走ったレースは、国内のG2、G3レースではなく、堂々の国際G1レースである、ということを考えると、胸を張って大威張りしたくなる、そんな結果だった。
また、ジェンティルドンナのレースも規格外だった。
国際レースらしくなかなかコースが空かない展開で、本来なら前が詰まって脚を余す・・・という典型的日本馬の負けパターンになっても不思議ではなかったこのレースで、ギリギリのところで外に持ち出し、きっちりと差し切り勝ち。
世界水準を知るライアン・ムーア騎手が鞍上だったことは幸運だったと思うのだけれど、激しい進路変更でも脚を弱めることなく、お手本通りの差し切りで押し切った、というあたりはさすが日本のエース、というにふさわしいものがある。
そして、ステイゴールド、ハーツクライといった歴代優勝日本馬と、この牝馬三冠&ジャパンカップ連覇中の馬が肩を並べることができた、というのは、実に素晴らしいことのように思うわけで・・・。
欲を言えば、どうせならドバイWCの方に出走してもらった方が、ジェンティルにスポットライトが当たる機会をもう少し増やせただろうし、レース自体の注目度ももう少し上がったのではないか、と思うが、他のレースも紛れもない国際G1レース。
秋以降の海外遠征(?)に向けて、一目置かれるだけの実績をこのドバイの場で残した、ということの重さをかみしめながら、次の機会に向けて、この2頭には、さらなるエールを送ることにしたい。