主役不在でも、そこに熱狂があればいいのか、それとも・・・。

今年で第35回を迎えたジャパンカップ

伝統の国際レース、ということで、JRAのCMでも、テレビの競馬メディアでも、「日本対海外」という構図で一生懸命盛り上げようとしていたものの、2005年のアルカセット(&デットーリ)以来、10年にわたって日本馬の独壇場が続いており*1、今年の外国馬のメンツを見ても、・・・という状況だっただけに、個人的には「いつもの東京競馬場のG1」でしかなかった*2

そして、主役となるはずの日本馬勢を見回しても、どうもピリッとしないメンバー。
先の天皇賞の時にも感じたことだが、今の古馬陣には「主役」を張れるだけの格のある馬がどうも見当たらない。

メディアでは、こういう時の常套句である“G1ホルダーがたくさん・・・”みたいな前振りをしていたが、G1タイトルを持っている馬がたくさんいる、ということは、それだけ傑出した馬がいない、ということの裏返しでもある。

本来であれば堂々の主役を張れるはずのゴールドシップが、宝塚記念大敗後の休み明け、しかも苦手の東京*3ということで、「無事ゲートを出てくれること」以外には見どころがない状況だったし、それ以外には、今年絶好調(G1・2勝)のラブリーデイと、3歳牝馬2冠のミッキークイーン、牡馬に混じって善戦を続けているショウナンパンドラの戦績が目立つくらい。

後の馬は、果たしてこの舞台が釣り合っているのか? と疑いの目を向けられても不思議ではないような、何ともいえないような状況だった。

まぁ、レースが始まってしまえば、どんな面子でも競馬というのは面白いわけで、特に、過去の経験*4から、「こういう時は牝馬から買いに行く」と決めていて、そこで買うなら、ミッキークイーンよりも、実績のあるショウナンパンドラだろう*5と決め打ちで勝負していた自分にとっては、まさに“会心”ともいえる決着になったので*6、“結果オーライ”なのかもしれないけれど、ここ数戦での力関係を考えればあっさり勝っても不思議ではなかったラブリーデイが3着惜敗、という結果に終わったことで、この結果で“今年の競馬界の顔”がますます見えづらくなってしまったのは間違いない*7


今年の売り上げの数字が見事に表しているように、ここ数年で、競馬ファンの裾野は着実に回復してきているし、特に今年に入ってから、競馬場のみならず、WINSにも自分より若い世代の人々の姿がかなり目立つようになってきている。

数々の名勝負を見届けてきたファンから見れば、ドラマの筋としては決して面白くないレースでも、それ自体に迫力があり、ついでに馬券的な妙味も付いて来れば*8、興行的には成功、と言えるのかもしれない。

ただ、個人的には、やっぱり、「またこいつ(ら)か」と悪態をつきながらも、主役と目された馬の強さと、それに挑んで蹴散らされる馬たちの儚さに、ある種の物語を感じられるような時代が再びめぐってきてほしい、という思いが強いわけで・・・。


ゲートこそちゃんと出たものの、その後、“牛歩”(?)戦術で最後方待機という、チグハグな競馬にこの日も終始していたゴールドシップが、有馬記念でドカンと一発かましてくれるようなことがあれば、今日のレースも、その前のレースも、フィナーレの伏線だった、という美しいストーリーに収めることができるのであるが、果たしてそんな展開になるのかどうか。

最後の直線手前、4コーナーのまくりの迫力には、一瞬復調の兆しも見えたように思えただけに、年末に新しい歴史が刻まれることに、ちょっとだけ期待を寄せてみたいと思っている。

*1:しかも2007年以降は、外国馬が馬券にすら絡んでいない。

*2:唯一違いを感じたのは、着順表示板に見慣れないスイスの時計メーカーのロゴが入っていることに気付いた時くらいか。

*3:通算で【1002】。3歳時の共同通信杯勝ちはあるものの、ダービーでは完敗、2年前のJCでは惨敗、と大舞台での良いインパクトはほとんど与えられていない。

*4:特に2005年の天皇賞(秋)ヘヴンリーロマンスに美味しい思いをさせてもらってから・・・。

*5:ミッキークイーンの前評判は高かったが、先日のエリザベス女王杯の結果を見ても、今年の3歳牝馬のレベルは決して高くなかったことがうかがわれるし、それでいて当日、馬体重を6キロも減らしてしまっていたから、もはや買いに行く線はなかった。

*6:パドックであれだけ気配が良く、スタートもきっちり決めて好位に付けたまま直線に向かえば、これくらいの走りになるのは当然の馬なのだが、それでも、直線の追い比べでラブリーデイを見事に差し切り、内側の一番芝の良いコースを巧みに抑えて追い込んできたラストインパクトをクビ差一つで押さえきった瞬間には、思わず池添騎手の名を連呼してしまった。ラストインパクトのムーア騎手は、前のレースでも、その前のレースでも、同じようなコース取りで馬を操り、実力以上の脚を引き出して差し切り勝ちを飾っていたから、このレースでも同じことになれば、日本人騎手のお人よしさがクローズアップされることになってしまったかもしれないが、それをクビの皮一枚のところで許さなかった池添騎手とパンドラの執念は称賛に値する。

*7:個人的には、2歳戦で好調なスタートを切りながら、肝心の3歳クラシックで散々な結果に終わっていたラブリーデイ、という馬の強さを測りかねているところがあり、この馬が勝てば勝つほど、キズナエピファネイアといった同世代のクラシックホースがいたらここまでできただろうか?、という懐疑的な気持ちをどうしても抱いてしまう。

*8:確固たる軸が決まっている時代のレースよりも、「どの馬が勝つか分からない」という主役不在時代のレースの方が、当然配当は付く。あとは、レースとそれぞれの馬のバックグラウンドの質にどこまでこだわるか、という問題だと思う。

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